ヨーロッパ文化教養講座(2023年アメリカ映画「アシスタント」鑑賞記)
2024/02/01
ハリウッドの大物プロデューサーによるセクハラ事件を綿密に取材した上で、ドキュメンタリーでなく、フィクションとして作り上げた映画。
淡々とした進行だが、目が離せない映画だった。
コメントと感想:
1.大物プロデューサー(ボス)の新人アシスタントのジェーン(演 ジュリア・ガーナー)の長い1日を描くことによって、姿を見せないボスの数々のセクハラの状況証拠のみを観客に提示する。
ジェーンは、ボスの好みではないらしく、ジェーンには魔の手は及ばない。
観客は、映像に移されないセクハラの様子を想像して憤ったり絶望したり、という仕掛けになっている。
2.ボスの部下たちは、全てこの事実を知っているが、忖度する、というよりあまりにも日常的で慣習的なので本当に気にしていないように見える。
犠牲者の女性たちに対しては、「彼を上手く利用して、のし上がるだろう」という達観した考え方を持っている部下もいる。
ジェーンは、そのことに堪えかねて人事部長?に直訴するが、逆に脅されて黙ってしまう。両親もジェーンが有名な会社で働くことを誇りに思っているようで、とてもジェーンはボスには逆らえないことを悟り、長い1日が終わる。
2.ジェーンの生真面目さと事務処理能力の高さが、BGMなしの淡々としたシーンの積み重ねで描かれ、ドラマチックなシーンが全くない。
そのことがかえって、映画の訴えたいことを観客に考えされる。
関係者に取っては、血なまぐさくないホラー映画に思えたかもしれない。
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