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ヨーロッパ文化教養講座(「ダウントン・アビー」S4 E3)

2022/09/12
ダウントンアビーのシーズン4の第3話は、上の階(貴族達が暮らす場所)に、ナイトの称号をもらった、デイム・ネリー・メルバ(キリ・テ・カナウ)が素晴らしい歌声を聞かせている間に、下の階(使用人の仕事部屋、台所もある)で、悲惨な出来事が起こる。

被害者が、この物語で唯一黒いところが無い、人間離れした表も裏も清廉潔白のメイド、アンナなので、特に、この第3話は、見返すのが辛くなる。
キリ・テ・カナウの歌唱シーンにだけ注目すると、断片ではあるが、3曲の歌唱シーンがある。
1曲目は、大変美しい英語の歌曲 ->調べるとドヴォルザークの「我が母の教えたまいし歌」(ドヴォルザークのジプシー歌曲集作品55の第4曲に誰かが歌詞をつけた。)
2曲目は、プッチーニの「ラ・ボエーム」のミミが、「私の名前はミミ Mi chiamano MIMI」と歌う有名な部分。
3曲目は、キリ・テ・カナウ自身が台詞で紹介したように、プッチーニ「ジャンニスキッキ」の中の「私のお父さん Il mio babbino caro」

ネリー・メルバがちょうどダウントンアビーの時代に活躍した、オーストラリア出身の実在の歌姫であることを始めて知った。だから、ニュージーランド マオリ族の血をひく、キリ・テ・カナウを持ってきたのかと納得。

キリ・テ・カナウは、このシーンを見るまで何故か、メゾ・ソプラノだと思い込んでいた。その立派な体格からメゾ・ソプラノの歌手だと思い込んだのかも知れない。残念ながら、実演を見ることなく、数年前に引退したようだ。

執事のカーソン(どうもオペラに興味がなさそうな、伯爵から任せられて)は、たかが歌手だからということで、雑な扱いをして、伯爵夫人に怒られた。大英帝国勲章をもらったので、氏名の前にデイムとつけるらしい。とすると、クローリー伯爵は、デイムを認識できなかったのか、それとも、単に、ネリー・メルバと聞いたから、芸人扱いしたのかは、もう一度、見直さないとわからない。

そう言えば、「グリーン・ブック」で成功した黒人のジャズピアニストが、アメリカ南部のツアーで、観客からは喝采を浴びるが、レストランなどでは、厳しい差別を受ける話を思い出した。

いつの時代も、絶対的価値などはないものなのかと思う。

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