2020年8月1日 アフリカのネコ被害

今週ずっと読みたかった論文をやっと読みました。南アフリカで、ネコにカメラをつけて、野生生物への捕食影響について検証した研究です。とりあえず、リンク先で最初に出てくる図がとても分かりやすいです。概要は以下の通り。続 #ネコ問題
https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S2351989420307393

①なお、研究班に敬意を表して記載しておくと、アフリカでネコの捕食を調べた研究は「初めて」とのこと。結果としては、年間90頭(95%信頼区間で59~123)の野生生物を捕食。調査地のケープタウンには約30万頭の飼いネコがいるとの仮定の下、年間2750万匹くらいが犠牲と推計しています。 続 #ネコ問題

②家に持って帰ってきた獲物の構成(n=142)だと、哺乳類が54%、爬虫類17%、無脊椎動物(虫など)12%、鳥3%、両生類1%、ただ、ネコは狩った獲物の18%しか家には持って帰ってこないそうで、カメラで捉えた野外での捕食対象は次の通り。 続 #ネコ問題
https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S2351989420307393-gr3_lrg.jpg

③爬虫類50%、哺乳類24%、無脊椎動物21%、鳥と両生類が1%程度。こちらはn=62。持ち帰りの比率は、狩った比率を反映しているわけではないということです。また狩った獲物の68%は食べましたが、14%は放置。18%を持ち帰り(先述)ということでした。 続 #ネコ問題

④他にも季節的な変化や、狩った後食べる(食べない)のはどの分類群かなど、いろいろデータがあって面白いです。なお、ケープタウンに隣接する、世界自然遺産にもなっているテーブルマウンテンでの捕食被害についても年間約20万匹と推計しています。 続 #ネコ問題

⑤本文では「ネコは弱った獲物しか襲わず、生態系に影響はない」という主張に対して「我々の調査結果からはありえそうにない」と考察しています。また、TNRについても触れ、飢餓、寄生虫、病気、喧嘩などから「倫理的な手法ではない」との総説を紹介しています。https://mdpi.com/2076-2615/9/4/171
#ネコ問題

⑥とりあえず、この最初の図だけでも見てみて下さい。続 #ネコ問題
https://ars.els-cdn.com/content/image/1-s2.0-S2351989420307393-fx1_lrg.jpg

⑦その上で、この論文はイントロや考察でいろいろよい文献が出て来て、外ネコ問題について学びたい私のような人にはすごく参考になるので、ついでにいくつか載せておきます(すでに知っている人も多いと思います)。
・ネコは多くの生物の絶滅の要因
https://pnas.org/content/113/40/11261
#ネコ問題

⑧参考文献
・低密度やアクセスが低頻度のネコでも、生態系には脅威
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1365-2664.12323
・エサを食べても活発に狩り
https://sciencedirect.com/science/article/pii/S0091677376921660
(1976年の論文。随分前からの「常識」なのでしょう)
・ネコはいるだけで怖い存在
https://besjournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/full/10.1111/1365-2664.12025
https://zslpublications.onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1469-1795.2007.00115.x
#ネコ問題

⑨参考文献
・米国だと狩った獲物の約23%を持ち帰る
https://sciencedirect.com/science/article/abs/pii/S0006320713000189
(この研究では49%は放置、28%は食べた)
・豪州では、無脊椎動物が食事に現れる頻度は39%
https://publish.csiro.au/wr/WR19197
・ネコからネコ白血病がフロリダパンサーに伝染した可能性
https://wwwnc.cdc.gov/eid/article/14/2/07-0981_article
#ネコ問題


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