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コモドドラゴンの意外な狩猟方法: 弱い咬合力を補う驚異的な引っ張り力

インドネシアの孤島に生息するコモドドラゴンは世界最大のトカゲとして知られ、その巨大さと獰猛さが特徴です。鋭い歯と強靭な体を持つコモドドラゴンはどのようにして自分よりも大きな獲物を仕留めているのか?その狩りの秘密は、多くの研究者の関心の的となっていました。これまで、その強力な顎の構造から驚異的な咬合力を持つと考えられてきましたが、近年の研究により、コモドドラゴンは驚異的な「引っ張り力」を持つことが判明しました。

従来、肉食動物の捕食行動における力の解析は「咬合力」に焦点が当てられてきました。咬合力とは顎の筋肉を使って獲物に噛み付く際に生じる力のことで、獲物の大きさや硬さに対応する重要な要素と考えられています。コモドドラゴンも例外ではなく、その頭骨の構造や鋭く鋸状の歯を持つことから、強力な咬合力を持つと推測されてきました。過去の研究では、コンピューターモデルを用いてコモドドラゴンの咬合力が推定され、その数値は大型の獲物を仕留めるのに十分な大きさだと考えられていました。

しかし、生きたコモドドラゴンを用いて、咬合力と引っ張り力を実際に測定する実験が行われました。その結果、コモドドラゴンの咬合力は体重や体長と相関関係にあるものの、他の同程度の大きさの脊椎動物と比較して、驚くほど弱いことが明らかになりました。例えば、同じ体重のライオンやトラと比べると、コモドドラゴンの咬合力は桁違いに低い数値を示しました。

一方、引っ張り力は予想をはるかに上回るものでした。引っ張り力とは、獲物に噛み付いた後に、首や体全体を使って後方へ引っ張る際に生じる力のことを指します。研究チームは、飼育下のコモドドラゴンに肉を固定した測定器を噛ませ、その際に生じる力を様々な角度から測定しました。その結果、コモドドラゴンは特に後方下方向への引っ張り力が非常に強く、その力は最大で300ニュートンを超えることが判明しました。これは、自分の体重の2倍以上の重さに相当する力を引っ張りだけで発生させていることを意味します。

さらに、コモドドラゴンの頭骨の構造を詳しく分析した結果、後方への引っ張り力に耐えられるような特殊な形状をしていることが明らかになりました。これは、彼らが長年の進化の過程で、引っ張り力を最大限に活用する狩猟方法を獲得してきたことを示しています。

今回の研究成果は、絶滅した大型爬虫類である恐竜など、他の動物の捕食行動の解明にも繋がる可能性を秘めています。例えば、ティラノサウルスなどの肉食恐竜もコモドドラゴンと似たような歯を持つことから、引っ張り力を活用して狩りをしていた可能性が考えられます。

引用元

タイトル:The Effects of Biting and Pulling on the Forces Generated during Feeding in the Komodo Dragon (Varanus komodoensis)
URL:https://journals.plos.org/plosone/article?id=10.1371/journal.pone.0026226
著者:Domenic C. D'Amore , Karen Moreno, Colin R. McHenry, Stephen Wroe

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