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毒を持つイモガイ、幼魚狩り進化の秘密を解明

海の暗殺者として知られるイモガイ。その毒は強力な神経毒で、獲物を一瞬で仕留めるために進化を遂げてきました。しかし、その進化の過程、特に幼貝期の生態や毒の変化については謎が多く残されていました。

オーストラリアのクイーンズランド大学の研究チームは、イモガイ(Conus magus) を卵から飼育し、幼貝から成貝に至るまでの発達過程を詳細に観察。その結果、驚くべき生態と毒の変化が明らかになりました。

これまで、C. magus は成長に伴いワームから魚へと食性が変化すると考えられてきましたが、決定的な証拠は得られていませんでした。彼らの研究では、実験室での飼育により幼貝はゴカイの仲間のみを捕食し、成貝になると魚のみを捕食することが確認されました。

さらに興味深いのは、幼貝と成貝では狩りの方法も毒の組成も全く異なるということです。

幼貝は「刺して追跡」

幼貝は短く棘のない歯舌(しぜつ:歯の役割を果たす器官)を用いてワームを刺し、毒を注入します。この毒はワームの動きを鈍らせる効果があり、幼貝は動きが鈍くなったワームを追跡し最終的に丸呑みにしてしまいます。

一方、成貝は「釣り針」戦法を用います。

成貝は釣り針のような形をしたより長く鋭い歯舌を使って魚を刺し、強力な神経毒を注入します。この毒は魚の筋肉を麻痺させ、瞬時に硬直状態に陥れます。成貝はこの硬直した魚を歯舌でしっかりと捕らえ、ゆっくりと体内に引きずり込んで食べてしまいます。

毒の組成も劇的に変化!

研究チームは幼貝と成貝の毒腺に含まれる毒の組成の比較も行いました。

その結果、幼貝の毒は主に小型のペプチドで構成されていて、その多くはワームに特異的な神経毒であることが示唆されました。一方、成貝の毒はより大きく複雑なペプチドで構成されており、魚類の神経系を標的とする強力な神経毒が多く含まれていました。

これらの結果は、イモガイが成長に伴い食性と狩猟方法の変化に合わせて、毒の組成を劇的に変化させていることを示しています。

引用元

Rogalski, A., Himaya, S.W.A. & Lewis, R.J. Coordinated adaptations define the ontogenetic shift from worm- to fish-hunting in a venomous cone snail. Nat Commun 14, 3287 (2023). https://doi.org/10.1038/s41467-023-38924-5
URL
 : https://www.nature.com/articles/s41467-023-38924-5

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