口腔内悪性疾患の治療

◇口腔内悪性腫瘍の手術

口腔悪性腫瘍は組織学的にはがん腫が約90%(扁平上皮がん:80%、唾液腺がん20%)、肉腫が約10%未満、悪性黒色腫が約1%、口腔への転移性腫瘍が約1%。
扁平上皮がんでは舌が最も多く(約50%)、ついで上下顎の歯肉、口底の順に多い。
舌がんの手術はがんの進行度によって方法が異なる
①    原発巣だけの手術(舌部分切除)
②    頸部郭清術のみ
③    舌切除と頸部郭清術の併用

1.舌部分切除
原発巣の大きさが3㎝以下程度でリンパ節転移を認めないものが適応
*病変部周囲にヨード染色を行い、がん周囲の前がん病変部を不染域として描出。不染域を参考にがん病変の周囲1㎝の部分を含めて切除し、そのまま縫合、もしくは皮膚移植、人口真皮による被覆を行う。手術侵襲は少なく術後の変形や機能障害も少ない。

2.頸部郭清術(単独)
原発巣治療後に、頸部へのリンパ節転移が明らかになった症例が適応。
郭清範囲により、全頸部郭清術や肩甲舌骨筋上郭清術がある。

3.舌切除と頸部郭清術
頸部リンパ節転移のある症例が適応。転移が認められなくても、原発巣の切除を確実に行うために頸部からのアプローチが必要な場合や、原発巣治療後に頸部リンパ節転移が生じる可能性の高い場合も適応となる。
頸部郭清組織と原発巣を一塊として切除する。口腔内欠損部を充填するための再建術も同時に行うことが多い。

4.舌再建術
舌・口底の欠損が大きい症例が再建の対象。
微小血管吻合による遊離皮弁を用いた再建が多い。
舌半側以下の切除では前腕皮弁、舌半側以上で切除では腹直筋皮弁や前外側大腿皮弁が用いられる

◇悪性腫瘍に対する放射線療法
①単独で根治をねらう根治照射
② 術前に腫瘍の縮小をはかる術前照射
③ 術後に腫瘍の再発を防ぐための術後照射
④ 根治治療が困難な場合に症状の緩和やQOLの向上のために行う緩和的・姑息的照射

手段による方法
① 病変部に小線源を直接刺入する組織内照射(小線源療法)
一般的に頸部リンパ節転移を認めない比較的早期の口腔がんが適応。入院下で隔離管理を要する

② 口腔外から原発巣や頸部に照射する外部照射
プラチナ製剤(CDDP)を併用した術後放射線療法が多く行われるようになってきている。

◇悪性腫瘍に対する化学療法
 進行例に対しては放射線療法と併用し、治癒や再発予防、臓器温存を目的として行っている。再発・遠隔転移症例に対しては、延命、症状緩和を目的に行っている。
シスプラチン、5-FU、TS-1が多く使用されている。

(1)導入PCE療法

  • 内容:1サイクル7日間で初日にパクリタキセル、カルボプラチン、セツキシマブを点滴で投与する。効果に応じて投与回数を決定(最大8サイクル)

  • 効果:病気が縮小、もしくは消滅した患者の割合が8~9割、根治術後治療移行割合(手術or放射線治療などの病気を治しきる治療に移行する割合)が8~9割、12か月生存率9割

  • 主な副作用

  1. パクリタキセル/カルボプラチン:骨髄抑制、口内炎、味覚障害、末梢神経障害、脱毛、消化器症状(悪心嘔吐、下痢、便秘、食欲不振)腎機能障害

  2. セツキシマブ:皮膚障害(発疹、爪囲炎)、間質性肺疾患、電解質異常(低Mg血症、低Na血症)、肝機能障害

  3. その他:IR、B型肝炎活性化、薬剤血管外漏出に伴う皮膚壊死、血栓塞栓症、腫瘍崩壊症候群、消化管穿孔

(2)キイトルーダ+FP療法

  • 内容:キイトルーダ(初日のみ)、シスプラチン(初日のみ)、フルオロウラシル(1~4日目)を投与します。3週間隔を開けて最大6回投与。再発・転移頭頚部癌の第一選択の標準治療とされている

  • 効果:免疫細胞の活性化とがん細胞に対する細胞障害活性を増強し、腫瘍効果を期待する(約4割の患者に腫瘍抑制効果が報告されている)

  • 主な副作用

  1. 免疫の活性化に伴う自己免疫異常の報告がある。

  2. キイトルーダ:間質性肺疾患、大腸炎、重度の下痢、甲状腺機能障害、肝障害

  3. シスプラチン/フルオロウラシル:骨髄抑制、消化器症状、腎機能障害、口内炎、聴覚障害

  4. その他:IR、腎障害(尿細管間質性腎炎etc)、神経障害(ギランバレー症候群etc)、下垂体機能障害、副腎機能障害、筋炎、横紋筋融解症、ブドウ膜炎、1型糖尿病、重度の皮膚障害、膵炎、脱毛、脳炎、脊髄炎

(3)キイトルーダ+CBDCA+5FU療法

  • 内容:キイトルーダ(初日のみ)、カルボプラチン(初日のみ)、フルオロウラシル(1~4日目)を投与します。3週間隔を開けて最大6回投与。再発・転移頭頚部癌の第一選択の標準治療とされている

  • 効果:免疫細胞の活性化とがん細胞に対する細胞障害活性を増強し、腫瘍効果を期待する(約4割の患者に腫瘍抑制効果が報告されている)

  • 主な副作用

  1. 免疫の活性化に伴う自己免疫異常の報告がある。

  2. キイトルーダ:間質性肺疾患、大腸炎、重度の下痢、甲状腺機能障害、肝障害

  3. カルボプラチン/フルオロウラシル:骨髄抑制、消化器症状、腎機能障害、口内炎

  4. その他:IR、腎障害(尿細管間質性腎炎etc)、神経障害(ギランバレー症候群etc)、下垂体機能障害、副腎機能障害、筋炎、横紋筋融解症、ブドウ膜炎、1型糖尿病、重度の皮膚障害、膵炎、脱毛、脳炎、脊髄炎

(4)CDDP+RT療法

  • 内容:放射線照射を5~7週間施行。3週に1度シスプラチンを投与。平日のみ放射線照射を行うとすると、放射線照射治療期間中に計3回のシスプラチン投与となる。治療中の状態によって、薬剤や放射線の減量、照射回数の変更を検討することがある

  • 効果:1次治療後の病理検査にて再発リスクが高いと判断された場合、化学療法・放射線療法を併用することで、放射線療法のみを行った場合と比較して生存率が約10%上昇すると報告されている。

  • 主な副作用

  1. 骨髄抑制、電解質異常(低Na血症、低K血症)、消化器症状(食思不振、嘔気、下痢)、倦怠感、口腔粘膜炎、放射線性皮膚炎、嚥下障害

  2. その他:IR、FN、肝機能障害、腎機能障害、聴力障害、末梢神経障害(味覚障害、手指のしびれ)、放射線性骨髄炎(難治性)、抗がん薬の血管外漏出に伴う皮膚炎、皮膚壊死

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