病棟業務に必要な胃薬のお話

胃薬は大きくわけると以下の3つに分類されます
1.消化性潰瘍治療薬
2.消化管運動改善薬
3.健胃消化薬(今回は触れません)

胃病変の発症因子と胃薬の関係
1.消化性潰瘍治療薬の分類
 ①攻撃因子抑制薬
 ②防御因子増強薬

①攻撃因子抑制薬
 治療の中心は胃酸分泌抑制薬
 A:プロトンポンプ阻害薬(PPI)
   例:タケプロン、ネキシウム、パリエット、オメプラゾール・・・
  作用:胃酸分泌の最終過程を阻害する
  特徴:消化性潰瘍の第一選択薬
     胃酸分泌抑制効果が高い
     持続性があり、1日1回でよい(例外もある)
     腎機能障害のかる患者にも減量は不要
     タケプロン、ネキシウムは簡易懸濁が可能

 B:H2受容体拮抗薬(H2RA)
   例:ガスター、ザンタック、プロテカジン、アシノン・・・
  作用:胃粘膜壁細胞のヒスタミンH2受容体に拮抗して、胃酸分泌を抑  制する
  特徴:急激な中止は再発しやすい
     PPIと比較し、胃酸分泌作用は弱い
     腎機能障害では減量を必要とするものが多い

 C:その他
   抗ガストリン薬、制酸剤、選択的ムスカリン受容体拮抗薬など・・・     

*ポイント
 ・PPI使用時にはH2RAは原則不要(例外あり)
 ・持参薬と院内処方薬が重複していないかチェック
  (内服でガスターがあるのに、禁食だからって点滴でオメプラゾール)

2.防御因子増強薬
  粘膜血流、粘液分泌、内因性プロスタグランジンなどを増加させる薬剤
  単剤での治療効果は低い。
  酸分泌抑制薬との併用で潰瘍治癒の質を高める。

 A:胃粘膜修復薬
   ムコスタ、サイトテック、セルベックス、ドグマチール・・・

 B:胃粘膜保護薬
   アルサルミン、アルロイドG,ガストローム、プロマックD、マーズレ   ンS,ガスロンN・・・

 ・アルサルミン(スクラルファート)
  作用:胃の粘膜と結合して膜を作り、胃酸・ペプシンから防護する
  特徴:胃酸中和作用
     空腹時の方が効果大
     アルミニウム含有のため透析患者には禁忌
     キレートを形成する(マグミット、クラビットなど)

 ・アルロイドG(アルギン酸Na)
  作用:びらん、出血部を胃の酸性で凝固・被覆し止血する
  特徴:ほぼ吸収されない
     空腹時に服用する

 ・プロマックD(ポラプレジンク)
  特徴:亜鉛欠乏による味覚障害に使用できる(適応条件は要確認)
     キレート形成に注意

 ・ドグマチール(スルピリド)
  特徴:消化器症状を前景としたうつ病に使用
     (インターフェロン前の副作用・・・)

 ・マーズレンS(アズレンスルホン酸Na・L-グルタミン)
  特徴:抗がん剤による筋肉痛、末梢神経障害、口内炎などに効果(適応条件は要確認)

 ・サイトテック(ミソプロストール)
  特徴:NSAIDによる胃潰瘍に効果がある
     妊婦には禁忌(子宮収縮作用がある)

2.消化管運動改善薬
 弱った胃の運動を活発にする作用があり、食べ物を胃から腸へ送り出すのを助ける

①ドパミンD2受容体遮断薬
 (プリンペラン、ナウゼリン、ガナトン・・・)
 特徴:制吐作用がある
    錐体外路症状に注意(特にプリンペラン)
    (ふるえ、こわばり、つっぱり・・・)
    プリンペランは腎機能障害時には使用に注意が必要

②セロトニン5HT4受容体作動薬(ガスモチン)
 特徴:D2遮断薬に加えて副作用が少ない

③その他
 六君子湯、セレキノンなど
 *消化管運動を抑制するブスコパンやブチルスコポラミンは作用が相殺される


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