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勝ち取った声で唄ったぼくら、星に向かって手を伸ばした “SAI” 2022

主催であるACIDMAN結成25周年・メジャーデビュー20周年というアニバーサリーフェス、SAITAMA ROCK FESTIVAL “SAI” 2022
ライブ中の声出しをずっと禁止されていたこの二年半。
先日赴いた競馬場ではゴール間際でみんな大声を出していて、どうしてライブだと屋外でも駄目なんだと憤っていた。
とうとう人と話す程度ならOKとなったガイドラインのもと、夫婦で2 days参戦し、余韻の海からまだ上がってこれない私が私のために書く記録。

[11月26日(土)出演アーティスト]


ACIDMAN / 氣志團 / SiM / ストレイテナー / 東京スカパラダイスオーケストラ / DOPING PANDA / Dragon Ash / back number / MAN WITH A MISSION / LOW IQ 01 & THE RHYTHM MAKERS

東京スカパラダイスオーケストラ

幸せの音を爆音で鳴らし、初日朝イチのステージを盛り上げるスカパラ大先輩。
パフォーマンスからMCまでいい人感と貫禄がにじみ出ている。こんなに楽器が弾けておもろくて唄えるイケオジ集団がほかにいるだろうか。

DOPING PANDA

十年の解散を経て再結成したドーパン。SAIへの参加で寄せたコメントからもうかがえるとおり、ボーカルのフルカワユタカの言葉には飾り気がない。
「やっぱりバンドは最高だよ。でもバンドを続けるのって本当に難しいし、本当に大変。俺が言うんだから説得力あるでしょ? だからずっと続けてきてこんな景色を作ることができるあの3人を心から尊敬してます」
今回とても好きになった。

SiM

仲いいんだ、と意外に思ったバンド。でも好きだからキャスティングはとてもうれしかった。
ほかの出演者たちを「おっさん」呼ばわりし、観客を「暇人」扱いし、「The Rumbling」で全米ビルボード一位だとエラソーにする様もかっこいい。巨人の映像とともに生で聴くこの曲の迫力と厚みったらない。
以前のようなウォールもモッシュもできないけど、座り込みからのジャンプはやっぱ体丸ごと揺れるし上がった。

氣志團

日の丸白ラン姿で現れた氣志團。彼らと大木氏と仲がいいと知ったのはコロナ渦中プレモルの配信ライブの時だ。歌は正直メジャーなものしか知らない。けど、MCで本当に心を打たれた。
「人生ではじめてめげたし、しょげた。みんなもそうだったと思う。毎日毎日しんどくて。それを乗り越えるために、たまの休みに自分の好きに触れて、また明日から頑張ろうかなって、そうやってみんな生きてきたのに、それも全部取り上げられて」
「氣志團のギグにきたら誰もが俺らの2こ下だ。お前らみんな俺のかわいい後輩よ。俺らは永遠の16歳、つまりお前らは14ちゃいだ、思春期真っ只中だ。よその国は知らないけど、後輩が困ってたらこの国は先輩が助けるって決まってるんだよ!」
しんみり涙から一気に笑いへ昇華し、会場があたたかくなる。
そこからの “One Night Carnival 2022 〜造花が踊る〜” が最高すぎた。演奏もたまげるくらい上手い。至高のエンターテイナーたちだった。今度見るときはフリ覚えていくよ。

MAN WITH A MISSION

開幕 “Emotions” でみんなで「ウォーー、オー」と唄い、テンション爆上がった。
ペット枠での参加だと言うが、ライブで聴く彼らの歌は、音源とは厚みが全然違ってコーラスが本当に美しくてやっべえかっこいい。 “FLY AGAIN” はアリーナ・スタンドともに完璧なフリ。マンウィズのライブはこれが最高に楽しいんだ。
「人間の皆様、かかってきなさい!」と煽られたラスト、 “GET OFF OF MY WAY” で、観客がみんな踊る。
これ。これなんだよ。全身全霊でライブを躰に浴びる感覚ってやつ。めちゃくちゃ気持ちよかった。

ACIDMAN

待っていた。心の底から待っていた。なんならチケットを獲った5月から待っていた。
一発目、 “to live” をぶつけられて「そうだ、わたしたちは彼らの魂に、美学に哲学に触れたくて来たんだ」と胸が熱くなった。
ファンを喜ばせるのはセトリの選曲だけじゃない。 “世界が終わる夜” で、降ってきたのは、星。 歌詞の書かれた星形のカードだ。気づいた者が不規則に舞うそれに向かって思い思いに手を伸ばしていた。取れなかったけど、みんなが幸せそうだったのがうれしかった。
スカパラの二人をゲストに呼び寄せた “ある証明” では、アルバムツアーでもThis is のツアーでも出せなかった声を出した。声を出せることが、こんなにうれしいものだと思わなかった。
不要不急と言われて我慢して、我慢し続けた二年以上。これは、ライブの場を耐えたものたち全員で勝ち取った声だ。
たった一音で世界は変わる。かつてビッグバンが宇宙で起こったのと同じように、一瞬で変える力がある。宇宙に音はないけれど、世界のはじまりの音はきっとこんな音色だったのではないか、と思わせてくれるような音を、彼らは奏でてくれた。
“Your Song” のさなか降ってきたその日の出演者のグループ名が書かれた金テープは、最高の贈り物だ。
最後出演者みんなとの記念撮影に至るまで、楽しさと愛とリスペクトがあふれていた。
にしても「ガウガウ」言う伸夫かわいいな、なんのご褒美だこれは。

ところで私の夫は、楽曲の魅力を音源ではなかなか理解してくれない。音のファーストインプレッションで好き認定をするチョロい私と違い、音楽性と世界観で総合的な判断を下す人なのでめんどくs、わかってもらうためにはリアルライブに連れて行くのが手っ取り早い。

[11月27日(日)出演アーティスト]

ACIDMAN / ASIAN KUNG-FU GENERATION / ELLEGARDEN / THE BACK HORN / the band apart / sumika / 10-FEET / BRAHMAN / マキシマム ザ ホルモン / Mr.Children

the band apart

そんな夫に聴いてもらいたかったのがこのバンアパ。絶対好きだと思った。
声が渋くおしゃれでストイックで、なによりかっこいい。それは四曲も行われたリハからも伝わってくる。はじめてわたしが聴いたのはCDJ17/18で、「ベースがやったらかっけえバンドがいるな」と思って音源を集めた。
知名度に頼らないわたしの耳はやっぱ優秀だ。 “Eric.W” から観客も夫も乗り始め、 “夜の向こうへ” が流れるころにはみんな手を振り上げていた。
「よかったでしょ」とドヤるわたしに、「こんないいバンドなのになんでもっと出てこないんだろう」と首を傾げる夫。なんだ、最高の賛辞じゃないか。

BRAHMAN

骨太ロックに圧倒されていたら、MCでうっかり大笑いした。
「一度きりの、たった一度きりの、一度きりしかない人生の中で、三度だけ観た。……大木の帽子の中。……けっこう生えてた」
「人気者をただ集めてフェスをつくったわけじゃない。普段はバラバラ。そのバラバラの何かを結びつける。夜空の星はバラバラにあるけど、誰かが星座を作ったんだよ。そこにストーリーを付けた。バラバラの俺達を結び付けてくれる、そんな力がある。俺は、ACIDMANをそう思ってる」
上手く言えないけど、わたしたちの存在意義を、どう生きるかを問う、そんな言葉で幕は閉じた。確固たる世界観を持ったすごいバンドだ。

ASIAN KUNG-FU GENERATION

曲は知ってるのに見たことはなかったアジカン。青臭い音源のイメージばっかりだった彼らのアクトは、思った以上に渋かった。
それでいて “リライト” の疾走感、かっこよさが半端じゃない。長年唄われ愛されて、どんどんブラッシュアップしていくのがありありとわかる。
MCの途中子どもの泣き声が響き、「子どももいるね、子どもは泣くのが仕事だからね」とあたたかく言い、多様性が許されたこの場の包容力の高さをたたえていたのが印象的だった。

ELLEGARDEN

アジカンから引き継がれたアツい空気が、ここでさらに盛り上がる。観客の熱量がすごい。
SAIに行くことを決めてから予習したバンドだったのだけど、サウンドが好きすぎてすんごく楽しみにしていた。 “Fire Cracker” で幕を開けたアクトは期待を大きく上回った。予習していてよかった。思い切り手が振れる。
「これからもフェスとかでお目にかかる機会があると思いますが、そのたびにかっこよくなっていく俺たちを楽しみにしていてください」
かっこよすぎかよ。みんな笑顔か泣き顔だよ。幸せシャワーいっぱい浴びて気持ちよすぎた。

Mr.Children

誰が思っただろうか。フェスにあのミスチルが出るなど。発表があったとき変な声上げた人もいっぱいいたはずだ。
会場総立ちのなか始まった “終わりなき旅” 、力強く深く澄み切った伸びやかな声に涙が出た。スケールが違う。技術が、精密さが、貫禄が、何もかも違う。圧倒的で圧巻。派手なパフォーマンスなんてなにもないのに、声だけで泣かす。
覇気か。覇王色の持ち主なのか。
そんな桜井さんでさえ、歓声が返ってくるライブを喜んでいるようで、「声が聞こえるライブ、フェスはすっごい久しぶりです。これだよな!  これだ!  最高です!」と本当にうれしそうに顔を綻ばせていた。
“HANABI” で観客みんなで応えた「もう一回、もう一回」は、ものすごく気持ちよかった。
そうだそうだ、これがライブだ。ポップなバンドだと思っていたけど、この人たちロックじゃん。めっちゃめちゃかっこいいじゃん。なのにものっすごい謙虚そうなの。メンバー全員からいい人オーラが出まくってる。え、こんなすごい人たち呼んだの? すごくない??

ACIDMAN

大トリはやはりこの人たち。待っていたけど、始まったら終わってしまう。楽しみでうれしくてさみしい。
そんな思いを観客も噛みしめているのか、 “最後の国” のSEが流れると、アリーナは昨夜よりもずっとしめやかにひそやかに沈黙した。
コロナ禍になって以来、フェスやライブで聴くこの曲が、わたしにとってすごく大切なものになった。クラップで三人を迎えることができるこの曲を、心から尊く思った。変則的で気難しい、彼ららしいリズム。
一発目 “world symphony” でミスチルであたたまっていた会場の空気をACIDMANの世界に染め上げる。
TSUTAYAのレンタルコーナーで面陳されていたCDの一曲。この曲をはじめて聴いた瞬間、わたしの世界もまた変わった。好きでいつづけたからここにこれた。
“FREE STAR” この時点でだいぶ腰とか足とか痛かったけど、全部飛ばして跳んだ。
“夜のために” 「この命で生き抜くんだ」って歌詞を裏打ちするような強靱なサウンドが内蔵と頭をがつがつ揺らしてくる。
「僕らの大事な、大好きなバンドに声をかけました。八方美人でよかったなと思います。もちろんほかにも呼びたいバンドがいっぱいいたけど、今回出てくれた全員、彼らの音楽が大好きで、もう感動するんです」
MCで語る大木氏からあふれるリスペクトに、こちらこそありがとうだった。感動したし、感謝してるよ。奇跡のような軌跡を感じてる。
“Rebirth” で踊り、 “赤燈” で揺れ、 “廻る、巡る、その核へ” に飲まれてゆく。
そして “ALMA”。「世界の夜に 降り注ぐ星 全ての哀しみ洗う様に さあ降り注げ 今、降り注げ 心が消えてしまう前に」
星空を背負い高らかに唄われる歌に乗り、この夜も頭上から星が降ってきた。
舞い降る星に向かって手を伸ばす人たちの姿の、なんと美しいことか。
夫と合わせて三枚も取れて、なんだか感極まって、曲が終わり隣で高く突き上げられた夫の手を握ってしまった。彼も握り返してくれた。それがとてもうれしかった。
“ある証明” この曲も本当にかっこいいな。「一つの証明」で人差し指を立てる瞬間がとても好きだ。やがて皆、自らの生を示すように、手のひらを力強い拳に変えていく。その瞬間もとても好き。
ラストは “Your Song” 。この日も金のテープが放たれ、みんなが笑顔になった。

幸せいっぱいの二日間だった。
本当にありがとう。追いかけ続けるからこれからもよろしくね。

ところで二日間とも音に浸かってしまった副作用だろうか。ロックが流れてくると、ビートに乗って体が動くイタい人になっている。


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