071構図のはなし12(いい写真とは18)
卒業アルバムと学校写真のエキスパート 一級写真技能士の田賀谷浩です。今回もお目通しいただきありがとうございます。
撮りたいと思う主体だけを画面に収めるのは、そのものズバリのとても強い表現が出来ます。特徴のある主体で強いインパクトがあればそれはそれでいいのですが、ややもすると周りの情景との繋がりや関連性が欠けてしまって描写の物語性が乏しいものになってしまうきらいがあります。その場合手前に引き立てる素材を写し込んだり背景の描写を意識したりすることで、物語性を増していく手法とすることが出来ます。
「近景」「中景」「遠景」
手前にある景色、中間の景色、遠くの景色の3つをひとつの画面に入れ込んで作画する手法です。画面全体にピントを合わせるパンフォーカスで撮る事も出来ますし、近景や遠景をぼかして中景の主体をより際立たせて撮る事も出来ます。
大概の場合は中景を主体とする場合が多いですが、中にはぼかした近景や遠景が多くのものを語る場合もあります。
作例1は近景で「マザー牧場(Where)」で「カウボーイ(Who)」が、中景でイベントの主体である「羊たち(What)」を「移動させる(How)」イベントの様子を写したものです。遠景の山々は「遠くまで見通せる良い天気の日だった」程度の引き立て役ですが、広々とした感じを醸し出す効果を現わすと共に、近景や中景の文字や植え込み、羊の隊列で構成されるジグザグに、更に稜線のそれが加わる形でリズム感や遠近感の強調が為されています。
作例2は近景となる「只見駅のホーム(Where)」の駅名標はあくまで状況説明として読める程度にぼかして、主体の一つである中景の「降り立った人たち(Who)」が「出口へと移動している(How)」場面を引き立つようにし、もう一つの主体である遠景の残雪の残る山々を通して「初夏の日(When)」に降りたって「爽やかな気分であろう(How)」と想像させる描写です。
作例3は遠景の山々を主体として作画しようとした際に目に入った、近景の菜の花で距離感や季節感を演出し、中景の民家や立木を通じて牧歌的な長閑さを感じさせるようにした事で、山だけを撮った場合よりも雰囲気を増すことが出来た事例です。
このように主体を直球でそのものズバリと捉えるよりも、手前や奥に状況を物語るアイテムを加える事で、絵に拡がりや意味を持たせる事が出来るようになりました。
学校写真の校外活動で徒歩で移動している場面を撮る際には、意識して近景や遠景に花壇の花や紅葉した木々の葉などを写し込んで、季節感などを演出するように心がけています。
といったところで今回はこの辺りで。なるほどと思われたり参考になったと感じられたりした際には是非「スキ」をいただけると励みになります。
最後までお読みいただきありがとうございました。