#失敗談 あの時グループラインとかなかった

その時僕はいわゆる
アダルトサイトを見てたんですよ。

16年くらい前ですね。

当時のインターネット回線は今よりも
ずっと重たくて
1秒間に1メガ通るか通らないかだったんですね。

だから、動画もサイトを開けば見れる
みたいな便利なものではなく
メールアドレスを登録して
そのアドレスに動画が送られてきて
ダウンロードするような形でした。

さて問題は、どのメールアドレスで登録するか。

僕が終わったばかりの
苦い演劇を思い出さないように。

僕は初めてにして最大の失敗から逃げるように
自分の持っているいらないアドレスを
ぼんやりと探していました。

上京して初めて集まった仲間達と作った
はじめての演劇はうまくいきませんでした。

僕は今よりも
はちゃめちゃに尖った演劇青年だったので
ダメ出しの仕方とかもとんでもなく鋭いというか
まぁひどい言葉遣いでして。

座組の空気はあっという間に悪くなって
みんな仲悪くなってしまったんですね。

当時グループLINEとかディスコードと言うような便利なアプリっていうかアプリそのものがなくて

僕たちはメーリングリストと呼ばれるサービスで連絡を取り合っていました。

メーリングリストにアドレスを登録しておくと

親アドレスにメールを投げれば
登録されている全員に
そのメールが送られる
いわゆる一斉送信のサービスがあったんです。

そのメールには
「しんろくさんをもう信じられません」
「とにかく公演を最後までやりぬきましょう」
というような、悲しい言葉が並んでいました。

13人ぐらいのはじめての仲間たちとは
もう二度と連絡を取り合う事は無いのでしょう。

両親が離婚して上京してきて
初めて入った事務所が怖い人たちの事務所で

そこからようやく抜け出すことができたばかりの僕には、人としてのゆとりなどはなく

女性中心だった出演者たちに
思いやりのある言葉を選ぶことができなかったのです。

一生懸命だった事は確かですが
それ以前に必要な人間の付き合いと言うものが出来ませんでした。

しかも若かった僕は
自分の何が悪かったのかすらわからなかったのです。

残ったのは苦い思いばかり。

そんなことを思いながら
眺めていたメールアドレスの中に
親アドレスがあったので思わずクリックしました。

エロサイトに登録するためのアドレスを選択していることをすっかり忘れて…

…

……ぴっ（メールの来る音）

はーいッッッツ！！！

ありがとうございますエロ大臣！

本日のスケベさまは〇〇さま！（しかも本名）

はいスケベさま！こちらです！

助平一丁ご来店！

この度はこちらの

エロエロドスケベサイトに

ご登録いただき誠にありがとうございます！とりあえずおっぱいの画像あげますね！！

あんたも好きね！ヨッこの変態！！

みたいな内容のメールが

当時の僕が最も気まずくなっている

苦しい思いだけを残した人間関係の

10数名の女優たちに一斉に送信されました。

僕は「ウィルスに乗っ取られた」

と、意味不明な嘘をつきましたが、

誰からも返事は来ませんでした。

…

……

ということが21歳の頃の僕の
とても恥ずかしい失敗談。

今の僕が関わる人たちは
21歳から24歳やら
30歳から40歳やら、
一番下は13歳までいます。

ただ、あの時の思い出があるので
誰がどのような失敗をしたとしても
「あるよねー、でも俺ほどじゃないねー」

と思えると思います。

人間として残念な方向に深みが増しました。

明日ははじめての無観客の生配信です。
何が起こるかわかりません。
たくさんの人が手伝ってくれます。
どんな失敗が起きるかもわかりませんし、
どんな成功が起きるかもわかりません。

成功しても失敗しても
大きく口を開けて笑えますように。

あとエロ動画の登録にアドレスを使う時は本当に気をつけますように。

しんろくでした。