父親に全財産取られた話

「なおと、金を出せ。有り金全部だ。」

高校生だったと思う。

父にカツアゲされた。

元々父親の働いたお金をお小遣いにもらっているのだから、びっくりはしたけど文句はない。

僕は全財産の5000円を差し出した。

「よし、じいちゃんの家にいくぞ。
 もう仕事から帰ってるはずだ。」

当時じいさんは70に入っていた気がするが
働いていた。

父親は会社の経営者で
お金を稼ぐのがうまかったが

父のお兄さんはその逆で
借金を作るのがうまかった。

保証人だったじいちゃんには
500万近い負債があり
じいちゃんは定年退職ができなかった。

そんなじいちゃんが家に帰る頃
父親は僕と姉を連れて
じいちゃんの家にいった。


姉も全財産を取られていた。

「おお、どうした」

じいちゃんがスーツを脱いで
白いランニングシャツを着ているところだった。


「酒でも飲むか」

じいちゃんが日本酒をテーブルに置くと

父は現金で500万円と少しをテーブルに置いた。

「とうさん、もう働かなくていいよ」

おとんはじいちゃんのことを
「とうさん」と呼ぶのか。

僕はお金の塊をみながら
そんなことを思っていた。

じいちゃんは震えていた。

人は嬉しくても震えるものかと思った。

「子供達も、有り金全部、じいちゃんのために出してくれたんだよ。」


じいちゃんの震える目が僕たちを見た。

「ほうか。お前達も。
 ほうか。ありがとう。ありがとう。」

おじいちゃんが泣き出した。

お父さんはこの一言の為に
僕たちのお小遣いを回収したのだろう。

そんな事もあって
僕はいまでも

お金で好意を表現するのが好きだ。

高額ならより大きな好意とは限らない。

高額なら大きな好意とは限らないが、
僕も500万あげれる人に育ちたい。

という思い出話。


しんろくでした。

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