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キミが男の娘だから好きなんだ! 第2話

第2話 プロット

 心兎が男の娘となり「メリー★ベリー」で働き始めてから、あの智夏から毎日のように「会いに行ってもいい?」と連絡が来るようになった。
 だが、心兎は全く喜べない。何故なら彼女の目的は、自分ではなく篤丸だからだ。
 フリフリのスカートのなびかせ、可愛くあざとくニャンニャンとアイドルソングを歌う篤丸に、
「篤丸くん! 可愛い! 男には見えない! まるで天使のようだ!!」と、人が変わったように怒涛の勢いでペンライトを振って応援する智夏。
 それを見て心兎は…。
 
「なんで、俺じゃないんだ!」と、今日もバックヤードで愚痴るのだった。
「そりゃ、テメェが篤丸よりかわいくねぇからだろ」
 そう心兎にズバッと言い放ったのは、同僚の伏葉陽翔(ふせば ひなと)。ガリガリでスラっとした明らかに無骨ものの見た目どおり、口も悪い男の娘のため、心兎が親近感を抱いていた相手なのだが。
「はぁ? 俺がテメェと同じだぁ? バーカ。俺は俺の可愛さで勝負してんだよ」と、否定される。
 確かに陽翔はファンが出来ずにチェキ使命もされたことのない心兎とは違い、何故かお客からも「ヒナ様」と呼ばれ可愛がられ、あの篤丸からも一目を置かれている存在。
「陽翔と俺はそっくりなのに、何でこんなに対応が違うんだ?」と心兎は不思議がるが、「男の娘を誇りに思ってないからだよ」と恋敵の篤丸に笑ってアドバイスをされてしまう。
 案の定、イラッときた心兎は「うるせぇ、俺はただ智夏のために男の娘になっただけで。可愛くなりたいわけじゃねーよ!」と、店を飛び出してしまうのだが。
 
 実際、「篤丸には勝ちたい。同僚に馬鹿にされてたまるか!」と思いながらも、心兎には篤丸のようになりたくない理由があった。
 実は心兎、男の娘の修行で篤丸にさんざんしごかれ、スキンケアや脱毛・メイクなどを心がけた結果、男友達にも「なんかお前……可愛くなった?」と意識されるようになってしまったのだ。
 どれだけ漢らしく柔道で汗をかいても、ふざけてシャツを脱ぎ腹を見せただけで、「や、やめろよ!」とまるで女子の着替えを見るように赤面する友人たち。
 男の娘になりたかったが、女になりたかったわけではない心兎はその反応を見て、ショックをうけていたのだった。
 
「俺、何か間違えちゃったのかな……」と落ちこみながら、帰路につく心兎。
 そんな彼の前に、今一番会いたくない相手が現れる。それは、別校の制服を着た女子たちにキャッキャッと囲まれた……当たり前のようにセーラー服を着た篤丸だった。
 お互い顔を見て「ゲッ!」と声をあげる2人。
 オフでも変わらず女装をしている篤丸を見て、明らかにドン引きの顔をする心兎。
 篤丸も知らんふりをして、さっさと女友達とその場を去っていこうとするが。
 ふと、心兎の思いつめた顔に気が付いてしまい。女友達に一言謝ると、心兎の手を引き「ちょっとついてきて」と告げるのだった。


 そう篤丸に言われ連れてこられたのは、篤丸行きつけのいわゆるギャル町。女子ばっかりが集うピンクで可愛い町並み、インスタ映えのデザートたちにたじたじの心兎とは違い、「キャー!この洋服かわいい~。このコスメすっごい保湿なんだけど~」とハイテンションの篤丸。
 さらに、彼はこの町でちょっとした有名人らしく、「アンタ、今日も可愛いね~サービスしてあげちゃう」とおまけをしてくれたパフェ屋に、「ありがと♡」と当たり前のように可愛くファンサービスを返すのだった。
 どこに行っても可愛い子ぶる篤丸に、「外でもソレなんて、疲れないのか?」と尋ねる心兎。
 しかし、「当たり前じゃん。だってこれが僕が好きな僕だもん」と篤丸は答えるのだった。
 それを聞き、「それって、やっぱり男の人が好きだから?」と遠慮がちに突っ込む心兎。
 だが、篤丸の性自認は男。好きなのも女性だという。驚いた心兎は「じゃあ、どうしてそんな恰好を? 普通……変だし、恥ずかしいだろ」と言ってしまうが。
「僕ね、服ってその人の考え方とか人生が表れてると思うんだ。綺麗に見られたい人は、自分の形を一番美しくみせる服を着るでしょ。逆に誰かと一緒じゃないと不安な人は、皆と同じ服を着る。……僕も同じだよ。僕は僕を可愛くみせたいからこの服を着てる。それって、そんなに変なこと?」と逆に聞かれてしまい、「もしかして、普通のことなのかもしれない」と、心を動かされる心兎。
「僕は可愛いをアイデンティティだと思ってるけど、それに性的趣向は関係ない。心兎君は、どうして男の娘になったの?」
 そう尋ねられ、ハッと気が付く心兎。
「そうだ、俺は智夏のために男の娘になったんだ」
 あのメイド服は智夏への強い想いの表れ、もう二度と彼女を傷つけないという決意の服なのだ。なら、恥ずかしがることはない。周りの反応なんて気にせず、「ずっと会いたかった」と言ってくれた智夏のことを信じていればいい。そう決意した心兎の目には、もう迷いはなかった。
 
 それから、「メリー★ベリー」で働く態度もガラリと変わり、投げやりな対応からハキハキとした元気な男の娘になった心兎。いちもいがみ合っていた篤丸にも、自ら「ありがとう」「お疲れ様です」と言うようになり、その変わりようにバイトリーダーの巽怜は驚くが。
「皆、色んな格好をして自分を探していくものでしょ?」と篤丸にいたずらっぽく言われ、どこか寂しそうに笑うのだった。
 それはともかく、2人の確執もなくなってグッと雰囲気の明るくなった店内に、巽も喜んでいたのだが……。

 その時、突然嵐のように智夏が店内に駆け込んでくる。
 驚く心兎たちだったが、「篤丸くん。頼む、今度の日曜日。私とデートしてくれ!」と、智夏はもっとぶっ飛んだ頼みをしてきて―!?
                               【終】


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