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Optilogic社年次イベント:OptiCon2024レポート<後編>



日本市場におけるBigM株式会社とOptilogic社のパートナーシップ

 Optilogic社は2018年にLLamasoftの創業者・元CEOであったDon Hicks氏によって創設され、財務・サービス・リスク・サステナビリティのバランス化を実現するサプライチェーンデザインテクノロジーの提供によるサプライチェーンデザインに携わる人々や組織の成功に注力をしている企業です。
 Optilogicが提供する100%クラウドネイティブ・サプライチェーンデザインソリューションCosmic Frogを世界に展開し、米国・英国・クロアチアにオフィスを構え、日本市場においては、BigM株式会社と2022年よりパートナーシップを締結しテクノロジーとサービスの提供を行っています。

OptiCon2024 レポート後編

前編では、Optilogic創業者 Don Hicks氏によるオープニングセッション・テクノロジーロードマップについてレポートさせていただきました。後編では、Cosmic Frogユーザによる最先端取組み事例につきお届けいたします。

Sensata Technologies社 - グローバルネットワークプロジェクト

Sensata Technologies社は米マサチューセッツ州に本社を置く、自動車・航空宇宙分野等で使用されるセンサー・制御部品の製造・販売会社です。この度、同社は初の試みとして、グローバルスケールでのネットワークモデリングプロジェクトに取り組むことで、生産拠点の移管シナリオを検証しました。

ビジネス課題

同社が推進したネットワークプロジェクトでは、下記ビジネス課題に対してアプローチしたとのことです:

  • 製造拠点を中国から欧州に移管することでコスト低減に繋げられるか?

  • もし可能であれば、どの製品を移管するか?どれくらいのコストになるか?新たにキャパシティを設ける必要があるか?

取組み内容

Sensata Technologies社では以下の5つの側面からアプローチを行ったとのことです:

  • ネットワーク戦略 (Network Strategy)

  • プロダクトフロー (Product Flow)

  • 需給バランス (Supply Demand Balancing)

  • リスクとレジリエンシー (Risk & Resiliency)

  • 調達の最適化 (Optimize Sourcing)

成果

ネットワーク最適化分析の結果、以下のことが明らかになったとの紹介がありました:

  • 一部の製品をヨーロッパに移管することで、約9%のコスト削減余地があること

  • 原材料の調達先を変更することで(生産拠点に最も近いサプライヤを選定)、11%のコスト削減が可能であること

今後、Sensata Technologies社では生産移管後の生産シミュレーション・在庫シミュレーションを実行する予定であると共有されました。

Whirlpool社: Optilogicへの移行を通じたサプライチェーンデザイン価値増大

イントロダクション

Whirlpool社のプレゼンテーションでは、冒頭に”Bonini’s Paradox”が紹介されました。これは「シンプルであれば常に誤りであり、シンプルでなければ使い物にならない」というパラドックスで、サプライチェーンデザインにも当てはまるという内容でした。同社では、シンプルに表現しつつも、十分な価値と精度を提供することが重要であると強調されていました。
また、サプライチェーンデザインの目的として、最小の時間で最大の数の質問に対して解を導出するモデルを作ることが挙げられました。この目的を達成するためには、以下の要素が不可欠です:

  • スピード(タイムリーさ)

  • 精度(十分な詳細情報)

  • バリュー(提供機能)

同社では、10年前には財務部門や輸送部門から生データを取得し、SQLサーバで加工していました。当時は80%の時間をデータ加工に費やし、20%をモデリングに使っていたとのことですが、現在ではその割合が逆転し、数週間かかっていたモデル作成が数時間で完了するようになったと共有されました。

Optilogicとの出会い

Whirlpool社は、3ヶ月の検証期間を設け、従来のサプライチェーンデザインツールとCosmic Frogの比較を行ったと説明されました。その結果、Cosmic Frogがより高い費用対効果を提供していると確信し、移行を決定したとのことです。
しかし、ETL(Extract, Transform, Load:データの複製・加工・連携)ツールの選定が課題として残りました。従来のテクノロジーではデータの複製・加工・連携テクノロジーが固定的であったのに対し、Cosmic Frogでは柔軟なETLツールの活用が可能なアーキテクチャとなったことが背景にあります。同社では、複数ETLツールを検証の末、Alteryxを採用したとの共有がありました。

Alteryxの活用

Whirlpool社では、従来構築してきた100を超えるデータ加工フローをAlteryxにて数ヶ月かけて再構築したと報告されました。基幹システムなどからデータを取得し、モデルに投入できる状態にするプロセスを全面的に移行することに成功したとのことです。

今後のロードマップ

今後の計画として、Whirlpool社はプロジェクト単位でのモデリングから、モデリングツールを他部門に提供する方針へとシフトすると発表されました。ただし、従来のソフトを提供するだけでは利用できる人が限定されてしまうため、実現的ではなく、スプレッドシートとCosmic Frogの連携を通じて、モデリングに関する知識・手法を持ち合わせていない人でもモデリングできる状態を目指していると説明がありました。同社では、Google Sheetsとの連携を実現しました。これにより、輸送部門メンバーが輸送入札を実施する際、スプレッドシートにレーン発着地や最新のコストを入力すると、既存ネットワークモデルにおけるパラメータが更新され、これに基づいて最適化が実行される仕組みを構築したとの紹介がありました。これまで、データ加工とモデリングにかかる時間と輸送入札の時間軸が合わず、対応が難しかった状況を改善し、ユーザに業務Appを提供することで、スピード、精度、バリューを最大化することができるようになったとのことです。

Coca-Cola社(Commercial Product Supply):デザインロードマップ

Commercial Product Supplyについて

Coca-Cola社のCommercial Product Supply (CPS)部門の取り組みについての共有がありました。CPSは、コカ・コーラ製品の製造工場(Coca-Cola Bottlers)に向けて原材料キットを提供する部門です。原材料キットは17カ国に位置する18の工場で製造され、4,000以上のレシピが使用されています。CPSは利益の最上流に位置しており、コカ・コーラ社にとって重要な機能を果たしていますが、これまでCPSでは生産性やリーン生産に対する意識が低かったとのことです。しかし、複数の出来事を通じて、これらの意識が同社内で徐々に高まったと報告されました。

  • 2017年のハリケーン・マリア

    1. プエルトリコ工場がダメージを受けた際、倉庫は無事であったため、他の工場に原料を移送。この時はエクセルで対応しながら、どこに何を供給すべきかを割り当てて出荷対応を行いました。

  • COVID-19パンデミック

    1. 需要傾向や輸送方法がこれまでとは全く異なるものになり、これに適応する必要がありました。

ビジョンと目標

CPSのビジョンとしては、遅延なくグローバルスケールでコカ・コーラ製品を顧客に提供することが挙げられました。これを実現するために、ネットワークプランニング能力の強化、システムの透明性の向上(強靭なサプライチェーン実現のため)、そしてサプライチェーンの最適化が求められています。プロジェクトベースのアプローチからの脱却も重要な目標とされています。

過去の取り組み

  • 2020年

    • ネットワーク最適化ツールの活用を開始

  • 2021年

    • 8ヶ月をかけてグローバルレベルでの生産キャパシティモデルを構築。エクセルを多用し、最適化実行には50分を要した

  • 2023年

    • Cosmic Frogに移行し、データレイクを活用して基幹系システムデータをCosmic Frogに投入することを実現。エクセルでの加工は限定的となり、同じモデルを2分で実行できるように

活用モデル

CPSの取り組みでは、以下の用途にてモデルを活用しているとの共有がありました:

  • BCP(事業継続計画)

    • 各BCPのキャパシティ・能力評価

  • プロダクションプランニング

    • 年次単位のラインキャパシティのプランニング

    • シフト構成を変更することのベネフィット評価

  • エンジニアリングデザイン

    • 新設ラインのデザイン評価

データはデータレイクからSQL Queryを通じて抽出され、PowerBIを活用して可視化・共有されています。権限に応じて共有範囲を設定し、データのダウンロードを行わずに連携ができる仕組みが紹介されました。

ロードマップ

今後の計画としては、OEE(Overall Equipment Effectivenes : 総合設備効率))データの取得と自動連携が挙げられました。2024年から2025年にかけてIoTを通じたライン生産性の取得を行い、これをモデルに投入する予定とのことです。また、MSPowerAppを活用したユーザインプットやシナリオ構築の取り組みも進められる予定です。

OptiCon2024レポート後半まとめ

本年のカンファレンスでは、従来型のサプライチェーンモデリング事例に加え、AI・アシスタントによるモデリング/シナリオ構築支援、Excel・Google Sheetsとの連携を通じて業務アプリをユーザーに開放するなど、従来サプライチェーンモデリング手法では困難とされていた形でサプライチェーンデザインの民主化の流れが加速していることを身をもって感じることができました。また、様々なユースケースでの活用事例が広がり、包括的なサプライチェーンデザインプラットフォームへの飛躍的な進化を裏付ける事例が次々と現れていることに、改めて、感銘を受けると共に、一昨年や昨年の同イベント参加時からは考えられなかったほどの大きな進歩に率直に驚きました。取組み事例の詳細やその他用途に応じたモデリングアプローチについてご興味あれば、是非info@bigm.oneまでご連絡いただければ幸いです。


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