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【証券外務員一種試験受験生必見】オプション取引入門②


1.第1回の復習

この記事は、証券外務員一種試験の受験生を対象に、オプション取引が何を目的に行われているのか、損益図は何を意味しているのか、どのようにして導き出されるのか等といった疑問に丁寧に答えること、そして、読者の方がオプション取引の問題を、暗記ではなく、できるだけ理解して解けるようになることを目標に作成しています。

「【証券外務員一種試験受験生必見】オプション取引入門①」では、八百屋さんとリンゴ農家さんの例を使って、オプション取引の概要や、「コール・オプション」や「プット・オプション」の意味、そして、「買う権利を買う」・「買う権利を売る」・「売る権利を買う」・「売る権利を売る」の意味について解説しました。
未だお読みいただいていない方は、以下から是非ご確認ください。

今回は、第1回と同様に以下の具体例と登場人物を使って、損益図について解説します。

✓ 具体例
「リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で買う(売る)権利」を、10円で売買する取引

✓ 登場人物
・ 八百屋さん:来年、リンゴは値上がりすると考えている。
・ リンゴ農家さん:来年、リンゴは値下がりすると考えている。

2.損益図

オプション取引には、四つのグラフが登場します。
参考書や問題集には、ひらがなの「く」の字をぐるっと一周させたようなグラフが四つ記載されていると思いますが、このグラフのことを損益図といいます。

損益図は、権利(買う権利・売る権利)を買ったり売ったりした場合において、「原資産の価格がどのように変化すれば儲けが出るのか」ということを表しています。縦軸に損益(儲けと損)を、横軸に原資産価格を取っています。

参考書や問題集で初めてオプション取引を学んだ方の中には、このグラフの形も丸暗記をしてしまおうと考えられた方も多いと思います。
もちろん、最終的には暗記していただくことがよいと思いますが、これら四つのグラフは何を意味しているのか、どのようにして導き出されるのかを一度理解しておくと、万が一忘れてしまったときも自分で導き出すことができますし、何より、今自分が解いている問題の意味が分かりますので、オプション取引を勉強するのが楽しくなると思います。

さっそく、四つのパターンを確認していきましょう。

(1)「コール・オプション(買う権利)」を「買う」

コール・オプション(買う権利)の買いのイメージは、「先に買っておいてよかった!」でした。

「来年、リンゴは値上がりして、1個200円になるはずだ」と予想していた八百屋さんは、今のうちに、「リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で買う権利」を買っておけば、リンゴが1個200円になってしまっていても、1個100円で買える!と考えていました。

このことをグラフ化すると、上記のような損益図になります。

来年、リンゴが本当に値上がりして、1個200円になった場合、儲けが生じているのが読み取れますでしょうか。
また、反対に、来年、リンゴが値下がりしてしまっても、権利料10円の損だけで済むということにも注目してください。

この損益図から、コール・オプション(買う権利)の買いの場合、利益は無限定で、損失は限定となっていることも分かります。

(2)「コール・オプション(買う権利)」を「売る」

コール・オプション(買う権利)の売りのイメージは、「しめしめ…」でした。

「来年、リンゴは値下がりして、1個50円になるはずだ」と予想していたリンゴ農家さんは、(1)で八百屋さんが言うようにリンゴは値上がりするわけはないのだから、八百屋さんが買う権利を買っても、どうせ権利が行使されることはなく、権利料10円を丸々いただくことができる!と考えていました。

このことをグラフ化すると、上記のような損益図になります。

来年、リンゴが値下がりした場合には、リンゴ農家さんは権利料10円を丸々いただくことができるということが読み取れますでしょうか。
また、反対に、来年、リンゴが値上がりしてしまった場合には、損が生じてしまうことにも注目してください。

この損益図から、コール・オプション(買う権利)の売りの場合、利益は限定で、損失は無限定となっていることも分かります。

(3)「プット・オプション(売る権利)」を「買う」

プット・オプション(売る権利)の買いのイメージは、「先に売っておいてよかった!」でした。

「来年、リンゴは値下がりして、1個50円になるはずだ」と予想していたリンゴ農家さんは、今のうちに、「リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で売る権利」を買っておけば、リンゴが1個50円になってしまっていても、1個100円で売れる!と考えていました。

このことをグラフ化すると、上記のような損益図になります。

来年、リンゴが本当に値下がりして、1個50円になった場合、儲けが生じているのが読み取れますでしょうか。
また、反対に、来年、リンゴが値上がりしてしまっても、権利料10円の損だけで済むということにも注目してください。

この損益図から、プット・オプション(売る権利)の買いの場合、利益は無限定で、損失は限定となっていることも分かります。

(4)「プット・オプション(売る権利)」を「売る」

プット・オプション(売る権利)の売りのイメージは、「しめしめ…」でした。

「来年、リンゴは値上がりして、1個200円になるはずだ」と予想していた八百屋さんは、(3)でリンゴ農家さんの言うようにリンゴは値下がりするわけはないのだから、リンゴ農家さんが売る権利を買っても、どうせ権利が行使されることはなく、権利料10円を丸々いただくことができる!と考えていました。

このことをグラフ化すると、上記のような損益図になります。

来年、リンゴが値上がりした場合には、八百屋さんは権利料10円を丸々いただくことができるということが読み取れますでしょうか。
また、反対に、来年、リンゴが値下がりしてしまった場合には、損が生じてしまうことにも注目してください。

この損益図から、プット・オプション(売る権利)の売りの場合、利益は限定で、損失は無限定となっていることも分かります。

3.第2回のまとめ

いかがでしたでしょうか。第2回は、損益図について解説しました。

①損益図は、権利(買う権利・売る権利)を買ったり売ったりした場合において、「原資産の価格がどのように変化すれば儲けが出るのか」ということを表しているということ、②権利(買う権利・売る権利)を買ったり売ったりした場合、その場合に応じて、利益や損失が限定的になったり無限定になったりするということを理解できたのではないかと思います。

次回以降は、プレミアムやオプション取引の投資戦略(ストラテジー)について解説します。
ご質問やご意見等がございましたら、コメント欄にてご記入いただけますと幸いです。

4.参考文献

(1)フィナンシャル バンク インスティチュート 株式会社「うかる!証券外務員一種 必修テキスト 2022-2023年版」(2022年)
(2)野崎浩成「トップアナリストがナビする 金融の「しくみ」と「理論」」(2015年)


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