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分岐点〜12球団合同トライアウトに思うこと〜

今年もこの季節がやってきた

11月12日。この日33歳の誕生日を迎えた私は舞洲に12球団合同トライアウトを見に行っていた。

12球団合同トライアウトは2016年の甲子園での開催時に行って以来だった。あの日は8時過ぎに着くなりかなり長い行列に並ばされたが、今回は事前に出場選手が全て公開されていなかったこともあり、そこまで行列は長くなかった。

なお、ロッテの現役選手が受けないと知って愕然としたのは列に並んで数十分してからのことだった。
おかしいな、習志野ナンバーの車が結構入っていっていたと思うんだが。

人間ドラマは開門前から

オフの目玉の行事としてすっかり定着しているせいか、色々なユニフォームの人を見かける。今回はヤクルトや中日のユニフォームを着ている人が多いと感じた。

「戸田が・・・」「北海道から飛行機で・・・」「夜行バスを・・・」など、遠征組の会話がよく聞こえてくる。

関係者入口に選手が入るたびに悲鳴に近い声が聞こえてくる。選手の車を見つけると、猛ダッシュで差し入れを渡そうとする人もいた。すでに泣いている人もいた。三者三様の開門待ち。そりゃあそうだ。10月の頭に戦力外通告を受けた自分の推しが形はどうあれ、ひと月ぶりに「公の場」に出てきて目の前で動いているんだから。嬉しさも泣きそうになるぐらい不安になる気持ちも、ものすごく良くわかる。

これが最後になるかもしれないーそう考えたらいてもたってもいられなくなるのが真理というもの。多分私の推しがこのトライアウトに出るってなっていたら・・・多分見るだけで周りが引くぐらい泣いちゃうんだろうなと、すぐ隣で大泣きしていた方を見て考えていた。

普段とは違う光景

よく12球団合同トライアウトは「引退試合」と例えられる。毎年45人ほどが受験して、トライアウト経由でNPBチームに移籍する選手は多くても3〜5人ほど。それ以外の進路・・・独立リーグや社会人チームに進む人もいれば、まったく別の道に行く人もいる。

思い思いに始まったアップもそこそこに、1ストライク1ボールから始まる淡々とたシート打撃。ほんの少しの時間でその選手という個性や実力を十二分に発揮して見せつけないといけない。

中日・亀澤恭平が何度も出塁し、盗塁を決める。ヤクルト・山川晃司は投手として野手として捕手としてグラウンドを走り回っていた。西武・小石博孝は「よろしくお願いします!」と一礼してからマウンドに立った。

亀澤は元チームメイトだったソフトバンク・岡本健がマウンドに上がると一緒にマウンドに行き励ました。栃木・西岡剛も同じく栃木の若松健太がマウンドに上がるとセカンドの守備位置から何度も声を出していた。オリックス・宮崎祐樹はセンターの守備位置から青山大紀、岩本輝にエールを送っていた。石川・長谷川潤は投げるたびに「よいしょ!」と声を出していた。

鳴り物もない球場。受験者は野球少年のように戦っていた。

宮﨑

一人の選手をずっと見ていた。宮崎祐樹。私と同い年だ。2012年にオリックスの試合を見に行ったときにものすごく印象深い活躍をし、それ以来注目していた。

この月末で33歳になる宮﨑。どうなんだろう。もし今自分が仕事をクビだって言われて、どうするか決めないといけなかったら・・・もちろんこの年になると自分だけのことでは動けない。色々悩んだんだろうなぁなんてスタンドから勝手に思っていた。

打撃では結果が出なかったが、上述のように後輩たちを声で盛り立てていた。彼に良い縁がありますように。

運命はどうなる

NPBからの誘いは5日以内にあると言う。しかし、どうだろうか。受験すると見られていたオリックス高城俊人は横浜が獲得を決め、楽天の西巻賢二は13日からのロッテの秋季キャンプに参加することが決まった。本当に欲しいと思われている選手はこのように受ける前に決まってしまう。

もちろん可能性はゼロではない。今回のトライアウト、選手たちが「出し切って」終われたのであれば、幸いだ。


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