人生が大きいなにかに支配されている

1年間労働、7ヶ月間休職、4ヶ月間働いて、異動になった。睡眠障害になって1年3ヶ月が経った。

いつの間にか私の人生には影が落ち、大人に押し潰され、自分を責めていた。自分が悲劇のなかにいることをどこか心の慰めにして、他人の幸せを憎み、人からの優しさすら素直に受け取れなくなった。

今では理由をうまく思い出せないが、しにたいしにたいと口癖のように唱えてきた人生だった。お守りのような言葉だ、どうせ怖くて死ねやしない自分をほんの少し世界から離脱させてくれるやさしい言葉。真っ先に心配して来てくれた優しい後輩に、「もうしぬしかないですね」と咄嗟に口が言っていた。どこまでがお守りになっているのか分からなかった。

結局、人の後ろばかりを辿った2年間だった。自分の人生が他人の人生に思えてしょうがないなりに、かろうじてやりたい、と思えてたことは何にもできやしなかった。私は無力だった。私が知り得る2年間弱の間だけでも夥しい数の人間がここを離れたので、正社員枠の補充として異動させられるとのことだった。私を散々苦しめ、慰みの一つも与えたことのない部長は「今よりちょっと忙しいかもね」と異動先のことを説明していた。そこがとんでもなく忙しいことを知らないほど私は無知ではないし、お前がそう言うということは死ぬほど忙しいということも知っている。結局、部長にとって私は休んでばかり、歯向かってばかりのただの正社員枠でしかなかった。そんな私がかろうじて在籍していた課では、そんな私を大切に育ててくれた先輩一人だけが広報担当として残る。私がいてもいなくても頭数以外のことは変わらないのだろうが、そんな浅はかな判断を平気でする上に怒り、呆れ果て、トイレで涙が止まらなかった。

復職して4ヶ月しか経っていない人間に訳のわからない異動をさせるのか、と腑が煮える。わかっている。復職した時点で私はただの会社員だ。服薬してようが、治るどころか悪化していようが、社会で働いている限り他の人間には「ふつう」に扱われる。それを全て配慮してくれるなどとは思っていない、けど、それにしても、私を普通の人間として扱いすぎている。それに、つい2時間前まで来年度の話をしていた人間に平然とした顔で異動を突きつけられれば、そりゃあもう筆舌に尽くし難い怒りと困惑に頭をかき乱される。私はお前のことがずっと嫌いだ、これから先もずっと。

誰にも慰められたくなんかない。私の感情は私のものでもないからだ。私の怒りの苦しみが腹で、喉元で、涙腺で勝手に爆ぜるからだ。私にもわからないものを他人に推し量られるのは苦痛だ。もう放っておいてほしい。勝手に泣きながら居座るか、勝手にいなくなるか、それはまた私の知らない私が決めたり、決めなかったりすることだ。放っておいてくれ。

もうどうしようもない。決まってしまったから、私は弱いから、あいつらが無知で浅はかだから、ここは普通の感覚の人間が働き続ける場所ではないから、私が会社員になるしかない凡人だから、私は私の人生以外歩めないから、道を踏み外して落ちる勇気がないから、電車にさえ飛び乗れば私の心とは関係なしに職場につけるから、手が勝手に受話器を取るから、勝手に笑顔を浮かべられるから、生まれたからには生きるしかないから、お金がないこともつらいことだから、行くあてがなくて家にいることも苦しいことだから、他の人と違うことをするのも苦しいから。どうしようもない。どうしようもない。どうしようもない、どうしようもない。どうしようもない。どうしようもない。

職場で泣いて泣いて泣いて泣いて、どうしようもないなと思わせるしかないのかもしれない。

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