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耳の短いうさぎ

これは比喩でもなんでもなくて。
わたしは、耳の短いうさぎが大好きだ。

それは、飼っていたうさぎの耳が短かったことに起因する。

そのうさぎの名は、ユキチャンという。
「ユキチャン」までが名前なので、飼い主の我儘としては、正式には「ユキチャンさん」と呼んでいただければと思う。
が、友人知人はみな「ユキチャン」と呼んで可愛がってくれていた。
名前なんてただの記号とも思うので、好きなように呼んでいただけると嬉しい。

ユキチャンはミニウサギという種類のうさぎで、いわゆる雑種である。
雑種のうさぎのことをミニウサギと呼ぶらしい。

そういうわけでミニウサギには、色々な特徴を持ったうさぎがいる。
つまり、ミニウサギは成長してもミニサイズというわけではない。
ペットショップでミニウサギとして売られていたうさぎを迎え入れたが、どでかく成長してしまった、なんていうのはよくある話である。

しかし、我が家のユキチャンはミニウサギの名の通り、小さいうさぎだった。
生まれつき耳が短かったことが、その理由かもしれない。

うさぎの耳の長さはその体の大きさと比例する、という話を聞いたことがある。
確かに、耳の長いうさぎは体も大きいイメージがある。
だが、わたしはそんな噂など知らず、ユキチャンを家族に迎え入れた。
それが、2011年3月1日。
東日本大震災の10日前の出来事である。

そして月日は流れ、2017年4月28日。
ユキチャンとの突然の別れがやってきた。
それは普段と何も変わらない休日、のはずだった。

何の前触れもなく、いきなり「キュウ!」と鳴いたかと思うと、ばたりと倒れるユキチャン。
普通、うさぎは鳴かない。
その時聞いたのが、最初で最後のユキチャンの鳴き声だった。

ペットとして飼われているうさぎの平均寿命は5~10年だという。
まだまだ元気でいてくれると思っていたので、当時はかなりのショックを受けた。
それでもそこまで落ち込まなかったのは、夫がいたからだろう。
一番ユキチャンを可愛がっていた夫の憔悴っぷりは、痛々しいほどだった。
わたしは彼を励ますため、努めて明るく振る舞った。

当時のFacebookを見返すと「我が家のもふもふナンバーワンは永遠にユキチャンです」と綴っていた。
今、我が家には猫もいるけれど、やっぱりうさぎのもふもふが恋しくなるときがある。

そういうときは、友人でアーティストであるさつかわゆんさんのお宅のうさぎ、「おこめちゃん」のInstagramを見ている。
「おこめちゃん」もおそらく「おこめちゃんさん」が正式な呼び方なのだと思う。
白と黒のパンダのような模様のおこめちゃんさん。
おこめちゃんさんも、ユキチャンに負けず劣らず耳の短いうさぎである。

ユキチャンやおこめちゃんさんをはじめ、耳の短いうさぎは本当に可愛い。
ただただそのことだけを伝えたくて、この記事を書いた。
こんなに可愛いのだから、わたしは、耳の短いうさぎをこれからも愛していく。
でも、そう、もしかしたら。
耳の短いうさぎに、ユキチャンの面影をどこか探しているのかもしれない、ということに最後になって気づいた。
やっぱりわたしの一番大好きな耳の短いうさぎは、今までもこれからもユキチャンだ。

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