今期オオカミくんメモ

 オオカミくん今期(2020/8~)、メンバー個々で相手を指名して映像作品を撮るというのがミッションになっていて、『ドラ恋』のショートドラマ製作みたいな効果を加えている。オオカミくんシリーズはこれまで、複数のリアリティレベルに属する人物がひとつの世界に混在するという特性を用いて、複数レイヤーのフィクション/ドキュメンタリーを重ね合わせている、というのが個人的な見立てとしてあった。例えば

a) オオカミくんのルールとして、恋愛してはいけなかった。
b) けれど本当の自分の気持ちは……。

とか、

a) オオカミくん投票で脱落したため、この恋は実らず終わった。
b) シンデレラタイムで(番組が用意したものではない)風船が渡される。

みたいな。
 「ショートムービー製作」ということは、番組内で発生する感情や記憶とは別に、「記録」が残されるという意味になる。つまりある関係性をとらえる/思い返す時に、参照対象としてもう一つのレイヤーが加わる。『ドラ恋』もそもそも、「ドラマの中で演じる感情」と「本当の気持ち」の重なり/ずれを主題にしていたのだけれど、この二つのシリーズをミックスすることで、さらに多層的なレイヤードフィクション/レイヤードリアリティを目指しているように思える。
 ちょうど先週分で、映像作品が残らないまま退場する者もありうる、という展開になっている。恋リアは「不在」が主である、というのをオオカミくんシリーズは特に扱っていたけれど、特に脱落投票における不在で、記録がよすがとなるのか、記録を超えた記憶があるのか、みたいな話になるのかもしれない。

 匂いが映像に残らないように、オオカミくんであること(恋愛を禁止されていること)も、ムービーとして記録されたものには残らない。「リアル」では決して成立しえない(こととされている)関係も、映像でピン止めすれば有ったことになるのかもしれない(この辺つきつめればラブストーリーの大きなテーマになる)。「真冬」以降のシンデレラタイムを全メンバーに機会として持たせる意図でもある。
 そもそも大枠のリアリティショー自体が、長尺の「映像作品」でしかない、というもう一つ外側の観点ももちろんある。

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