メモ

 地下アイドルに対する揶揄として「誰でも名乗ればアイドルになれる」というものがある。かつて選ばれた者しかなれなかった時代から、粗製乱造の時代となったことを憂うような意味だろう。
 2011年、BiSのインストアイベントを初めて見た時、プー・ルイさんが自己紹介でまず「アイドルだからかわいいです」と言ったことをずっと憶えている。「かわいいからアイドル」だった時代、つまり誰かの(主に外見への)ランク付け的な評価を経て初めてアイドルと名乗ることが許されていた時代から、まず誰でもアイドルを自発的に名乗ることができて、そして「アイドルだからかわいい」という当然の公理を筋道として、誰でも自身の「かわいい」を他の誰の評価も経ることがなく宣言することができる時代にやっと足を踏み入れたのだ、という実感。(しかしその後は「偏差値」という語を絡めてアイドルを評価する時代にまた戻りそうになっている……)

 「未熟を愛でる」という批判も少しもやもやとしていて、権威的な基準に則った技量の成長(とその評価)を一度疑うことが「オルタナティブ」という言葉が導いたとても重要なものの一つだったんじゃないかと思うのだけれど、しかしプロデュースと本人の向上心の間の齟齬を補うべきはいつでも前者なので、というところまではまず議論の前提にしたい感じがある。

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