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祭のあと。

毎年、祭の山車を
引っ張りに来てくれる男の子がいる。
小学四年生。

近所に住んでる子なので、
神社で作業をしてるとよく会う。

去年までは、わんぱくな感じで
大はしゃぎしながら綱を引っ張ってたけども、
今年は何か違ってた。

"久しぶり。
何か今年は余裕な感じだね。
暑くないの?"

"陸上部に入ってるから、
部活のが暑くて大変だから
全然大丈夫"

1年でこんなに変わるもんだ。
大人びたような落ち着いてるような。
子供の成長は不思議だ。

もちろん夜店も見に行くんだろうけど、
神輿が宮入りして、御霊を戻し
閉会の言葉を聞いて
山車を祭典事務所まで戻す。

その時でも彼は綱を引いてる。

今回もそうだ。

"先頭持つ?''

"いいんですかぁ"

なんか嬉しそうだ。

神社から祭典事務所戻る時は
どのお囃子も物悲しい曲を打つ。
いつもこれを聞くと
吉田拓郎の「祭のあと」を思い出す。

''大人の神輿担ぎたい?''

''はい!挑戦してみたいです''

''3年後だね''

''ちょうど神輿当番の時になるだよ''

''お!それはイイタイミングだ!''

嬉しそうに頷く。

''じゃ、また来年よろしくね''

普段、握手なんか求めないのに
とっさに手を差し出してしまったww
彼は少しビックリしたようだったけど
手を差し出して握手をした。

''おつかれさま。
また来年ね''

コクリと頷いて笑った。

私には甥っ子と姪っ子がいる。
可愛くないわけではないけど
近所の子供と大差ない。
みんな同じくらいな可愛さとか面白さを感じる。

その話を友達にすると
大抵は変わってる、と言われるんだけど、
唯一「それでいいと思うよ」と言う人がいる。

''自分が子供の頃は
近所にそんな人がたくさんいた。
今は学校まで車で送ることも多い。
子供が近所にどんな大人が居るかを知らない。
だから、子供にとって
馴染みやすい大人が近所にいることが大事だよ。
だから、俺はそれくらいで良いと思うよ''

昨日、男の子と話をしていて
何となくそう思えた。

もう30年も祭に関わってるけど
意味があるんだなぁ。
初めてそんな風に感じた。

3年後が楽しみだよ。

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