女子サッカーと中学受験

 私の住んでいる地域ではほとんどと言っていいほど中学受験する子はいない。学年に1〜2人だろうか。この周辺でももうちょっと駅の近くや埼玉でもさいたま市に近づけば近づくほど、東京ほどではないものの、その割合は大きくなるようではある。最近twitterのTLを眺めていると、小学校高学年母達のつぶやきに塾や模試などのワードが増えてきて、あぁ始まったんだなぁと実感する。

 そんな中学受験と、女子サッカーの中学生における進路には非常に類似性があると思う。(男子サッカーの中学への進路も是非はともかく昨今中学受験化していると言われている。)それも中学受験で言う所の「落ちたら公立」を封じられた形の、である。女子サッカーを続けようと思うと、ほとんどの場合セレクション(中学受験で言えば入試である)を受けなければならない。それがすべてダメだった場合、セレクションが無いチームに入るか、自分の通う中学のサッカー部に入るしかない。それも自分が通う中学のサッカー部が女子を受け入れていない場合もあるし、受け入れていても公式戦には出さない(出れない)とか、充分なサッカー環境が得られない可能性も多々ある。なので、サッカーを続けようと思う女子小学生は往々にして「サッカー界の中学受験」に巻き込まれることになる。もしくは「サッカーを続けるか、辞めるか」の2択を迫られることになる。

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女子サッカーの4つの進路

 そもそも、女子サッカーの中学生の進路には大きく分けて4つの道がある。ひとつはJFAがエリート養成のために作ったJFAアカデミーという中高6年かけてサッカーエリートを養成する機関である。もうひとつはなでしこリーグ(男子はJリーグ)の下部組織のジュニアユース、3つ目がJ下部ではないクラブチーム、で最後が中体連所属の中学校のサッカー部である。

最高峰エリート養成機関JFAアカデミー

 では中学受験で例えてみよう。(最近の中学受験事情には疎いから厳密に言ったら間違ってるかもしれないけどね)ひとつめのJFAアカデミー。全国に4箇所あり、そのうち女子が所属出来るのはJFAアカデミー福島(男女)、今治、堺(こちらは女子のみ)の3校で、その中でもJFAアカデミー福島は全寮の寄宿制でチーム登録をし長期休暇時のみ帰省するが、他2校は地元のクラブチームに所属しながら平日のみアカデミーで過ごし週末は帰省して地元のクラブチームで活動する。今治と堺は毎週末帰省が無理なく行える範囲に居住する者とあるので、埼玉県に住む次女は物理的に検討出来るのはJFAアカデミー福島のみである。例えると言った初っ端から、ここはちょっと中学受験で例えづらい。このJFAアカデミー福島、全国すべてを対象とした中で、昨年の合格者は6名。例年倍率は20倍〜25倍と言われている。中1で親元を離れてでもサッカーがしたい、本気でプロを目指したい、という猛者達の中の20倍である。中学受験で言えば、筑駒(偏差値72)が倍率5倍程度。芦田愛菜ちゃんのいる慶應義塾中等部の女子(偏差値70)が定員50人に対し420人の受験者で6.2倍。なので、最難関中学の受験で合格、さらに受験者の上位20位以内に入るようなイメージだろうか。

みんなの憧れなでしこリーグ下部組織

 そして次に、サッカー少女の憧れといえばなんと言ってもなでしこリーグ(男子でいうところのJリーグ、男子はJ1〜J3まであるが、女子は2部まで)の下部組織(ジュニアユース)である。まず埼玉県で言えば、なでしこリーグの下部組織は2チームのみ。1部は浦和レッズレディース、2部にちふれASエルフェン埼玉マリ、である。それらに入ることは、中学受験でいう御三家であろうか。いや御三家より難しいかもしれない。女子御三家の偏差値トップ、桜蔭は定員235名に対し527名が出願しており、出願倍率は2.24倍である。対して浦和レッズレディースは定員は2017年度で言えば9名。それに対してセレクションを受けに来る人数は毎年100名を軽く超える。しかも、9名全員がセレクションで選ばれるわけではない、半数以上はすでに県代表などからスカウトされていて内定している。なので4〜5名の枠を100名以上で競うので、倍率は20倍以上!!それでも、前述のJFAアカデミー福島よりは居住地が限定されるため(練習場から1時間半以内で通えること、という条件付き)少しは受かりやすい…かな。でもまずここに入るには県トレセン(埼玉県選抜)に選ばれていなければ厳しい、というのが定説である。例えば5年生の終わり頃にあるSAPIXとか四谷大塚?とかの模試で上位を取った子に既に半分以上の枠が埋められている感じである。浦和レッズレディースに関しては残りの4〜5名枠は埼玉県選抜にはあがってこない都内在住の子を掬うためと言われている。埼玉県トレセンに選ばれるためには、実際5年生の2月から始まるブロックトレセン選考会からのしあがっていかなければいけない。セレクションは9月〜10月だが、県トレセンのメンバーは6月には決まっている。なので実質なでしこリーグ下部を狙うなら受験は5年生の終わりには始まると言っても過言ではない。

玉石混交、十チーム十色クラブチーム

 そして3つ目のクラブチーム。Jリーグ(なでしこ)チームの下部組織を除いたいわゆる街クラブというやつである。これは玉石混交である。とは言っても埼玉でいえば、女子のクラブチームは前にnoteに書いた通り(中学生女子の受け皿無い問題)県内には18チーム。中には全国大会でなでしこリーグ下部組織と戦うようなチームもある。セレクションを課しているところもあれば、セレクション無しで選手を受け入れているところもある。中学受験で言えばいわゆる私立上位校〜中堅という感じであろうか。これはレベルもチームの方針も雰囲気も様々で一口に語るのは難しい。そのあたりも私立中学同様である。そして月々1万円〜2万円程度の月会費、入会金に、遠征費や合宿費がかかる。

入部できればラッキー公立中サッカー部

 4つ目の部活。男子サッカーで言えば、「セレクションに受からなければ、中学校の部活で」や「部活の仲間というのを大切にしたい」という理由で選ぶことの出来るもので中学受験で言えば公立中学なのであるが、女子サッカーにおいては前述したように「女子の所属を認めない」「部活に所属は出来るが公式戦には出場できない」などの学校ごとのルールがありサッカー環境が整えられていないことも多々ある。ただ中体連自体は女子の所属も公式戦出場も認めているので、全く不可能なわけではない。女子サッカー部も無くはないが、埼玉県内では2校のみ、である。例え男子サッカー部に入部を認められても、男子の中に女子ひとり、という環境は小学生年代では良くあることだが(小学生年代でも心折れる女子は少なくないだろう)、中学生になり合宿や遠征などで難しいことも出てくる。これが「落ちたら公立という手を封じられた中学受験」と書いた所以である。

番外編:男子チームに所属する

あとは男子メインのクラブチームに所属する、ということも出来なくはない。男子のクラブチームでまれに女子を受け入れている所もある。男子チームの高いレベルで揉まれる良い面もあるが、公式戦などに出れない可能性もある。なんなら男子のクラブチームでスタメンになれるレベルの子ならなでしこ下部や街クラブの強豪のセレクションにも受かってしまうのだろうが…

うちの次女

かくいううちの次女さんは今5年生。これからが勝負なのである。本人は上ふたつ(JFAかなでしこ下部)しか行きたくない(!)と言ってるのだけど…、前述の通りものすごく、ものすごく狭き門なのだ。しかも模試で偏差値が出たり、合格確率の判定が出たりする訳では無いから判断も難しい。現実路線も1チームくらい考えておかねば…などという想いはひとまず親の心の中にしまっておこうかと思っている。本人の気持ちが第一だと思うから、本人が上を向いて頑張ると言っている以上応援しようと思う次第。全く中学受験には関係ない我が家だが、中学受験に関する親御さんのツイートに勝手にシンパシーを感じている今日この頃なのである。

 

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