白虹劇団ミュージカル『花酔の月 暁の風』みてきたレポ

日暮里サニーホールにて。みてきました。
こどもミュージカルの界隈と言えるのかな?
全然接点のない業界なので空気感を知れる良い機会で、沢山楽しませて頂きました...!!
本当に普段触れないので、まるで異国の芸術を鑑賞するような、そんな気さえしました...いや、新鮮だった...

メインでドカン!と出されていたのはフランキーとホラーマンの声でお馴染みの矢尾一樹さんと座長?のような感じだったのかな、白井公介さん。
矢尾さん宛の祝いのお花もしっかり...!
尾田っちもお花送るんだなーとつい立ち止まって見惚れちゃいました。めちゃくちゃレアな体験。

矢尾一樹さんへの舞台花


あらすじと劇団ホームページ(画像をタップ!)

小中学校くらいの子供たちが多く出てるので客層もファミリー層が多かったかな?和気あいあいとしたホールの雰囲気で居心地も良かったです。高校演劇の大会を思い出すような感じ。普段の小劇場等の観劇体験ではあまり味わえない空気感でいいなあと。観客目線で演劇を考えるとやっぱりこうあるべきだよなぁ...とか考えちゃいました。ほっこり。

しかし客層がファミリー層向けと言っても以外にも物語の内容はかなりディープめ。。。と言っていいものかなんというか...
里見八犬伝をフォーマットに敷いた未来SF時代劇のようなお話で、良いプロットだなぁと思いました。現代と地続きのお話なので只のファンタジーとして貫徹せず、リアルな問題を絡めてお話を集結させる。
いやー、面白かったです。ただの面白かったではない...かなり性格の悪い面白かったです。ぶっちゃけ問題作。かも...(笑)やってる事がとにかく凄かった。僕の考えすぎかもしれませんが、凄く皮肉めいた事をよくバレないようにこの客層に向けてやっているなあと感服しました。詳しく書きます。

先程良いプロットと上述しましたが、とても構成が独特なんですよね...終盤、物語8割程まではこの現実のリアルな問題というのは全然物語に関わってこず、それまではよくあるようなイメージ通りのこどもミュージカルなんです。
運命に導かれた子供達が打倒権力に燃え武力で立ち向かっていく王道の二項対立。ミュージカルシーン、ダンス。分かりやすい感動や笑い。殺陣。

しかしですよ、クライマックス。主役陣八犬士の子供達が自由を求めついに敵のボスで朝廷の帝である夜叉王と対面するわけですが、ここで急ハンドルをきゅぃぃぃぃぃぃぃぃんとかける訳ですよ。
敵ボス夜叉王陣がなんと八犬士を完全制圧...!明らかにこのシーンで敵倒してハッピーエンドだろ!!って所で完全制圧!敗退!終わり!シンプルに子供達が大人の力を言わしめられる展開......
プロット的に大まかに書くと本当にここからどんでん返しなどなく負けて終わりです。

いや、途中から分かってたんですよ。永遠と抑圧にはもう耐えられない!娯楽の規制も階級制度もちゃんちゃらおかしい!革命だ!打倒夜叉王!で戦い続けた八犬士達。彼らの目的はあくまで打倒でそこから先の事は全く示唆されず、彼らの頭の中にもそれは無いよう。いやそれでいいんですよ、普通ならそれでいいんです。
ただ、敵陣の描写が八犬士達の王道ファンタジーなノリとちょっと外れてリアルな事をちょくちょく挟んでくるんですね、ゴリゴリの民主主義批判を。それに夜叉王役の矢尾さんの個性が相まってか、敵陣がどうも単なるヴィランではないコミカルで愛されるような演出をしてくる...みんなでフランキーの決めポーズなんかやっちゃったりして、まるでポケモンのロケット団。明らかに主人公サイドの血なまぐさい殺意とノリが違う。
「これ普通に八犬士が夜叉王倒しても物語成立しなくないか...?マジ...?」
明らかに主人公陣を子供、敵陣を大人として描いていて、正直こんな不安が浮かんでいました。
敵陣の独裁政治について掘ることで、主人公陣の一極集中的な最終目的と物語のスケールの拡大とでバランスが合わなくなってしまうんですね。
このまま押し通しちゃうのか...マジか...と思っていたつかの間の大裏切りで面食らっちゃいました。笑っちゃいました。凄い。

武力行使で敵陣に仕掛けに来た主人公陣を、敵ボスが武力で政治がままなるかあ!と正面から正論で叩き直し、最後には政治を勉強して大人になって出直してこいと宥められ素直に退散する主人公陣......そしてエンディングみんなで大団円ダンス...
こんなのありかよ...いやそらそうだけどさ...こんなの面白すぎるよ...あんなに殺陣ちゃんちゃかやって魅せてたのに最後の最後でやらんのかい!!_(┐「ε:)_ズコー
そして本当にこれで終わりなんかい!!
_(┐「ε:)_ズコー
子供向け王道ファンタジーが綺麗にしっかりとメッセージ性を持った未来SF時代劇に様変わりするオチは、ある種前時代的な革命思想、子供向けにありがちな分かりやすい二項対立を最もパンチのあるやり方で批判する超前衛的な構成と言っても過言では無い、それほどの衝撃を受けるものでした。本当に子供ミュージカルを全力で体現した上で批判することを想定していたなら天晴れだなと思いました。...いや!想定してもしなくても、事実私はそう見えたので、これは最高に天晴れです。ロックでした。素晴らしい結末だったと思います。素晴らしい体験をありがとうございました。

単純な感想ですが、夜叉王のお付きの女の子2人、玉梓の化身?だったのかな、超可愛かったです...出る度キュンキュンしてました。あそこをこの年齢の子に配役するセンス最高だなと思いました、バランス的に。それと集団ダンス。やっぱり圧巻でした。超良かった!!!!

最後に少々、烏滸がましいですがちょいと批判もさせてください...!!チケット代割と高めですので、技術的な引っかかった事も何点か書かせて頂きたいなと...
ているだったかな、傷を癒す人!仲間が斬られた際に何故能力を使わないのかの描写がいまいち分かりにくく、どうしても展開のご都合を感じざるを得なかった点。
それと佳境の八犬士と敵陣の相次ぐ殺陣のシーン、ポイントは照明だと思いますがどうしてもチープさが際立ってしまう点。立ち回りや音の入り方が2.5を想起させるもので、だとしたら照明効果が物足りないなと感じたものです。
最後にこれは脚本家さんの作家性に触る事ですので書くべきか悩みますが、人物の科白の語尾についてです。所々で「〜〜をした!」「〜〜った!」とタ形表現が使われますが、基本的に現代口語が使われる中であまり効果的でなくこういう書き文体表現がさも現代口語のように扱われていたため、どうしても違和感を感じてしまった点です。もしかしたら役者さんの力量次第でどうにでもなるのかもしれませんが一応書かせてください🙇‍♀️

以上です!改めて、新鮮で楽しいステージを拝見させて頂きありがとうございました!楽しかったです。良かったな〜〜〜〜
こういうレポ書いてみるのもいいですね、また!!

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