市ヶ谷駅

19:26 わたしは今市ヶ谷駅前のカフェで腰をかけている

今日の自分の醜態を晒し反省したい。なにより文章を書いたり読んだりすると自分自身が落ち着いて救われるのだ

15:00 なんて日だ、電車に揺られながら半日を振り返り自分の怠惰を思い返しては何度も呆れる。もはや自分を慰めることも出来ないし「大丈夫のおまじない」も効かないので、心の中でテクマクマヤコン、テクマクマヤコン、計画的に行動し余裕ある大人になあれ、と冷めた温度で唱えてみた。

今日はある企業のエントリーシートの提出日だった。指定されていたのは "13日必着、麹町郵便局留め"
必着は当日速達で間に合う、中途半端な検索でそう思っていた。

10:50 当日の朝まで図工の授業気分でESを仕上げ、曇った空と寝不足でどんよりした朝を迎えた私はそのまま近所の郵便局へ向かう。

「今日必着で郵送したいのですが、、」と窓口に作り込んだESを持ちこむと
「当日なので今日出されると到着は早くて明日の午前中です。申し訳ございませんが今日必着は難しいかと、、」

窓口の方の説明を半分聞いた時点で私はスマホでバイク便を調べていた。届け先の郵便局が閉まるのは17時。今日は3限とそのあとすぐに企業の説明会を控えていたので直接自分で持っていくことは不可能だと考えたためだ。
郵便局を出てすぐ検索で一番上に出てきたバイク便会社に電話をかけた。自宅のポストに入れておくので麹町郵便局まで届けて欲しいと伝え、料金を伺うとなんと1万3000円。イタすぎる。しかしエントリーシートにかけた時間と苦労を思うとお願いする他ないと思いお願いすることにした。郵便に関する知識もロクにない世間知らずな馬鹿者である。払った金額を考え(広義の意味で)リテラシーのない弱者だと思った。

お金はかかったがとにかくこれで届く。そう安心しきって授業に向かおうとバスに乗り駅に着いた頃、お財布を忘れたことに気づく。まずい。救いなのはモバイルSuicaだったこと。無賃乗車にならずに済んだは不幸中の幸いだったがお財布がないと1日を送れない。家にいる弟に鬼電をかけるも無視され、遅刻を確信しながら降りたバス停でバスを待ち家に戻った。しかし家に着いた途端やる気喪失。

「遅刻してまで行かなくていいや。」

そのまま授業をサボった私は眠たくなりベットに寝転び居眠りを始めた。
数分後リンリンリンと携帯が鳴り響いて目を覚ますと依頼したバイク便会社から連絡が。ヒヤリ。電話をとると電話先のドライバーはこう言った。

「窓口にいったのですが受け取って貰えませんでした。お客様の元へ戻されるとなるとまた料金を頂戴することになるのですがどうしますか?」

虚しくて思考が回らない。しばらく黙ってしまったがこれ以上お金をかけられないと思った私はこう伝えた。

「そちらでその書類処分して頂けますか?」

私の声があまりに暗かったのだろうか、電話先のドライバーは申し訳なさそうに口をモゴモゴ

「あ‥‥ かしこまりました…」

挨拶をして電話をきったあとわたしは呆然としそのままベッドの上で目を瞑ることしか出来なかった。
しばらくして自分を強く責めた。終わらない反省で頭が働いてきた私は授業を切ったことを思い出し、本人ならば直接持ち込み可能だということを検索で知り慌ててドライバーに電話をかけ郵便物を処分しないでほしいことと、郵便物を受け取るために麹町郵便局の最寄、市ヶ谷駅で待ち合わせできるか問い合わせた。すると、どちらも可能だがプラス1万いくらか(忘れた)支払いが必要と伝えられた。
もはや意地になっていた私はお願いすることにした。どこにもぶつけられない苛立ちを抱えたまま、急いでまたバスに乗り市ヶ谷駅まで向かう。
(どうせ自分で持っていくなら今日バイク便にかけた2万強のお金は無駄になったということ。21歳大学生、時給1080円アルバイターの身からすると大痛手です。大痛手です。大痛手です!)

乗り換えの四ツ谷駅で電車を待っていると小雨だった雨が少し強くなっているのが見えた。家を出る時間に小雨だったらその日ガンダで雨を乗り切るギリギリ人生はもう辞めたい。必着の前日には郵便局に届け終わっているような、いつでもカバンには折りたたみ傘を忍ばせているような、そういう余裕ある人生にしたいなと真顔で電車を待ちながら考えていた。

15:40 エンドレスに自分への憎しみを募らせながら市ヶ谷駅につく。到着が16:30頃と電話をもらいそのあと予定していた企業の説明会に出れないことを悟る。電車を降りホームから出口に向かった。つもりが!地下鉄の乗り換えにつながる階段を降りてきたらしい。(ああ、なんかそういう日なんだな) もう運のせいにしたくなった。

さっき降りてきた階段を登りホームに戻ってくると空に虹がかかっているのが見えた。ひさびさに見た虹を見てブルーな気分がなんとなくスカッとした。単純だけど天気による影響は大きいことを知る。

虹で元気になった私はバイク便が来るまでの時間で郵便局までの順路を確かめようと地図アプリをひらいた。地図通り、駅を降りてすぐの横断歩道を渡ろうとしたが、目の前に本屋を見つけてしまった。本屋は簡単に人の時間を溶かす。あっという間に到着予定の時間になり、無事ドライバーから郵便物を受け取る。

「私どもは郵便局ではなく悪魔でバイク便なもので郵便物に関しては分からないことも多いので!」

みたいなことを責めてもいないのに言われモヤッたが急いで郵便局に向かった。
すると窓口のおじさんが初めての郵便局にキョドキョドしているわたしに、「こちらですよ」と温かい笑顔を向けた。

「今日こちらの郵便局留めで必着の郵便物なのですが受けっとていただけますでしょうか」

なんとなく自信がなかった私は申し訳なさそうに伝えると、おじさんは私が上の言葉を言い切る前に両手を実際に広げてこう言った。

「○○さん?(企業名)さあ、早く出して!」

安堵&安堵

「あ、でも後ろに自分の住所と名前も書いた方がいいと思うよ。絶対じゃないけど。余計なお世話かもしれないけどね(にこ)」

恥ずかしさと相手の優しさに胸がギュッと縮んだがすぐにアドバイス通り書くことにして、温かい郵便局のおじさんに託し私は無事エントリーシートを届けることができた。

「ありがとうございました」

ここ数日で言った「ありがとう」の中で一番心を込めた。

色々あったがおじさんのおかげでほっこりした気分で駅の方面に戻り、また吸い込まれるように本屋に入った。なんとなく目に入ってきた新書のはじめの数ページを読んでいると同じ大学出身の方が著者であることを著書に出てきた学科名で感づいた。少し運命を感じて本を購入し、本屋から直通で繋がっているカフェに入った。

カフェで珈琲を頼み席に着いた。購入した本を読もうとしたが今自分がしていることの贅沢(珈琲飲みながらカフェで読書)に違和感を覚えた。なぜなら私は今日2万円強を無駄にした上授業にも説明会にも行かなかったからだ。また自己嫌悪が始まった。

19:26 わたしは今、市ヶ谷駅前のカフェで腰をかけている


はんせいおわり〆

駅前に本屋が多い東京、本屋とカフェが直通の構造、JR市ヶ谷駅前

感謝


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