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ピアノの音改造プロジェクト

どれだけ「いい音」に憧れてきたことか

頭の中に鳴っている「いい音」と現実とのギャップ。同じピアノなのにどうして自分の音はこんなにショボいのか。

高校生の頃、合唱部の一つ上の先輩で、芸大附属高落ちてうちの高校に来た人がいた。
ピアノはめちゃくちゃ上手で、先輩の弾く伴奏はいつも素晴らしく、フォーレのレクイエムのサンクトゥスの文字通り天国のような美しさは今でも忘れられない。何より音が素晴らしく、150センチもないような小柄で小さな手からうみだされるクリアで深い音色は息を呑むほどだった。
高校生の私は先輩の音に取り憑かれていて、その先輩との出逢いがいい音を探す旅の出発点だったのだと思う。

自分は左利きのせいかいつもメロディと伴奏のバランスが悪く、先生に怒られていた。わかっているのだけど、どうしても右手がいう事を聞かない。芯のない鈍い音しか出せないのだ。右手だけいろんなメソードを試してみたり練習するのだけど、弱い指はそう簡単には強くならない。

なのでずっと自分の音が嫌いだった。
そんなことではいけないので受け入れなくてはと思っていてもなかなかそうできなかった。

ずっとそんな感じでいたのだけれど、でも10年位前からか少し変わってきた。自分の音を好きと思える瞬間が出てきたのだ。これは衝撃的だった。
こんな自分でもいつも音の事考えていた。ピアノ捨ててチェンバロに没頭していた時も鍵盤からいい音を追い求める気持ちははずっと変わらずあったと思う。可哀想に思って神さまがちょっとオマケしてくれたの?

もちろんいい音は音楽の一つの要素で全てではないし、まず目指すところは他にあるのだとわかっている。
でも、でも、いい音の魅力に抗えないのだ。


去年から思う所あって音改造プロジェクト始めている。
自分はもっと重さより指の速度を使って音を出した方がいいように思えている。
そして鍵盤を押さえつける時間をなるべく短くしてその瞬間に手首に余計な力が入らないよう気をつけつつ、指の付け根の関節の位置がブレないよう注意深く観察する。

まず第一弾として半年間ハノンの60番を毎日練習した。手の甲を鍛えて安定感をつけるのが必要と思えたから。
そして先月から黒鍵のエチュードを、なるべく腕を軽くして指のスピードで弾くという練習をしている。一音一音指でしっかり弾きつつ、指が鍵盤の底についたらなるべく早く手を脱力させる。これを半年やるつもり。
期限を区切るのは、効果を確認するためと、人生の残り時間を考えて。

こんなことやってて効果あるかなぁと思ったりもするけれど、昨日ちょっと録音したのもを聴いて、なんだかいい方向に向かっているような気がしています。極力腕を軽くして弾いてるので、コントロール出来なくてよたったり音が抜けたりしてるけど暫くこの練習続けようと思っています。
少なくて後半年、長くても3年。
いい結果出るといいな。

あー自分はなんてオタクなんだろうと思う…
でもでもでも!いい音で弾きたいな。

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