決めるとはなにか
はじめに
皆さん、意思決定してますか?してますよね。いくら怠惰に生きていても、今日のご飯やら服やら決めないと生きていけませんからね。
複数人での意思決定もしてますよね。
「今日の昼ごはん何にしよう」
「君が決めてよ」
「じゃあカレーにしよう。あそこで100円引きキャンペーンやってるし」
でも案外、意思決定という言葉の意味を取り違えることがあります。仕事でも「君が決めていいよ」と言われることがありますが、あなたが日常生活で意思決定としている用語とは少し違う意味を持っていることがありえます。日常生活での使い方については各人で決めてもらっていいのですが、仕事上ではそれでは困るので僕なりの解釈を書こうと思います。
記事を書く背景
こんな記事がありました。
上記の記事自体には賛否含めて様々な反応がありますし、それ自体に触れることはこの文章の目的ではありません。が、反応として「そもそも本人の職責として何を決めるべきかを明確にしておくべきでは」というものがありました。しかし、決めるというのはそれ自体がかなり難しい用語なので、一度書いておく必要があるだろうと思いました。
前にも書いたけど、「決めるとはなにか」を説明しておかないと余計に混乱を招きそう感。
— Yuta SAWA (@sawawww) July 8, 2022
決めろと言われたのに問題を指摘ばかりすると思われる可能性が大で、特にとりあえずやってみてで伝わらない相手の場合は確実にそうなる。 https://t.co/MrNPxlbcO1
決めるとはなにか
いきなり答えを書きます。決めるとは、①複数(いくつか数えられるケースも無数にあるケース、いくつあるのか不明瞭なケースも含む)の選択肢の中から一つを選び、②それを関係者(ステークホルダー)に漏れなく伝えて、③さらに全員から合意を取ること、です。これが行われていれば意思決定が行われたと言えますし、なにかしら欠けていれば意思決定が出来てない(不完全)です。
以下ではいくつかのケースを解説していきます。
決めてないケース
意思決定の必要性を理解してないケース
上記の①を行ってない場合は、大抵の場合は自他ともに決めてないと認識できると思いますが、しかし侮ってはいけません。選択肢が本当に無数にある場合や、選択肢が選択肢として提示されてない場合、そもそも決めなければならないと認識できてないことがありえます。ありがちなのは、「調べておいて」とか「やっておいて」という一見意思決定に見えない指示を受けるケースですかね。指示した側は意思決定を求めているのに指示された側はそう思っていないので、結構面倒です。指示する側にも問題はあるのですが。
選択肢が無いケース
これもそんなに存在しないのですが、例えば明日マラソン大会があるのであれば、その日程を参加者が変更することはできません。気持ちの持ちようや、棄権の判断は意思決定出来ます。
ステークホルダーを把握しきれていないケース
とはいえ多くのケースは上記の②か③のいずれかが欠けている場合でしょうか。ステークホルダーを把握してないのはその典型例です。例えば我々ソフトウェアエンジニアの場合であれば、コードレビュワーはステークホルダーになりますが、それ以外にもプロダクトマネージャーはそれで本当に良いと言ってますか?法律的に大丈夫か弁護士に確認しましたか?本当に関連するチームは存在しませんか?似たような機能を作っている別の製品のチームはいませんか?
実際問題すべてを把握するのは困難だったり不可能だったりするので、そういう場合は事後的に「意思決定できてなかった」となると思います。もちろんそこで事後的にであっても合意をとれば、意思決定をしたとみなして良いと思います。
合意を取れてないケース
冒頭の昼ご飯を決めるケースであっても、合意が取れないのであればそれは意思決定に失敗しています。
A「今日の昼ごはん何にしよう」
B「君が決めてよ」
A「じゃあカレーにしよう。あそこで100円引きキャンペーンやってるし」
B「俺は昨日カレー食ったから他のがいい」
Aは合意を取るのに失敗してしまいました。これでは意思決定ができていません。残念でした。ただし注意したいのが、日常生活においては「決めて」と言ったらほぼ無条件同意とみなすことがあるということです。
ここで言うとBが嫌がるのがおかしいのであって、よっぽどのこと(予算が一人1万円の店を選ぶとかアレルギー対応がされてないとか)でなければBは従うべきだ、とする考え方があるということです。僕もそうで、もし仮になんでもいいと言ったくせに提案するのを何でもかんでも文句言うやつがいたら、ぶん殴りたくなると思います。
が、仕事の文脈であればBの主張は正しいのです。「君が決めて」というのは、「俺を含めてステークホルダー全員が気に入る案を出して説得してね」ということです。気に入る案を出せない、あるいは説得しきれないのであれば、意思決定が出来てないということになります。
無責任だ、あるいはそんなの面倒だと思いましたか?それは正常な反応です。が、これについてはそういうものだと考えてください。その上で決めたくないのであれば、嫌だとか出来ないといいましょう。そして意思決定の一部を誰かに渡すようにしましょう。
更にポイントになるのは、ステークホルダーになれば相手の意思決定を意図的に全てブロックすることができるということです。まともな組織ならそんな人はいないと信じたいですが、いないと断言できないのがつらいところですね。
実は決めているケース
ここでは勘違いされやすい、意思決定が出来ているのに成果を過小に評価しがちなケースを述べてみます。
承認者ではないが意思決定者となっているケース
承認者はステークホルダーのうちの一人でしかありません。従って、承認者を説得して合意を取ればあなたが意思決定者です。承認者が上司の場合も同じです。決めたのはあなたです。ただし、責任があなたに100%降り掛かってくるとは限りません。他の人はあなたの説明に納得したのですから、他の人にも責任はあります。
自分が最初に提案した方式ではないが意思決定者になっているケース
全員の合意を取るところまでやるのが意思決定なので、最初に良いものを選んだかどうかは関係ありません。A案とB案があって、あなたはA案を推してたが、ステークホルダーからC案を提示されたとします。このあと、あなたがC案のほうが確かに良さそうだと考えるようになり、C案で他のステークホルダー全員の合意を取り直しさえすれば、やはりあなたが意思決定者です。
提案するのは大事ですし、それはそれで成果です。が、その提案を意思決定に昇華する方がもっと大事です。結果として意思決定に結びつかない提案はどれも五十歩百歩です。その意味で、他の人が出した案であっても、きちんと合意を得るところまでやったのであれば、意思決定者のあなたはすごく良い仕事をしたことになります。
ステークホルダーに不満が残っているケース
ステークホルダー全員がその意思決定を歓迎はしてないケースもあります。よくあるのが上司が決めて部下が唯々諾々と従ってはいるケースでしょうか。正直これは結構複雑な状態です。本当に意思決定が出来ていると言えるのか。
僕個人の考えとなってしまいますが、これはこの意思決定に関しては出来ているとみなして良いと思います。ただし、これはあくまでその決定に皆が従っているうちは、という話になります。誰かが従わなくなった時点で意思決定が出来てないことになりますし、無茶な意思決定を繰り返せばどんどんとそういう可能性が増えるでしょう。
なので、実践的な話としてはきちんと不満を解消しておくことで次回以降の意思決定に禍根を残さないというのは重要かと思います。
選択肢が無いことを明らかにしたケース
これは少し特殊です。実際問題としては選択肢が無かったので意思決定してないように見えますが、これは意思決定として良いと思います。
例えば、近隣の飲食店が一件もなく出前も取れないのであれば、今からランチを取る選択肢はありません。残作業を終わらせてからランチを取る以外に選択子はないのです。しかし、近隣の飲食店を調べてその情報からその判断をし、周知したのであればこれは意思決定したと考えられます。
なぜ意思決定が必要か
ここまで読めば意思決定の必要性がわかるかと思います。意思決定をすると、ステークホルダーが全てその決定された意志に基づいて行動します。カレーを食べるならカレー屋に向かうし、製品を○月○日にリリースするならその日付に向けて各部署が動きます。仮にいずれかのステークホルダーがそれが出来なくなった場合は、今度はそのステークホルダーに責任が移り、意思決定者に再度の意思決定をお願いすることになります。複数人で物事を進めるには意思決定しないと不可能です。
意思決定の方法自体は組織によって様々です。どうしても決めきれない時には選挙のように多数決で決めることもあるかもしれませんし、全員一致で進めることもあるでしょう。偉い人がカリスマ的存在であれば、その人のみに意思決定が存在することもあるかもしれません。
しかしどの場合であっても最初に説明した3点はカバーされているはずです。確認してみてください。
おわりに
この文章では意思決定について説明し、それが出来ている場合やできていない場合についても解説してみました。なにかの参考になれば幸いですし、これを元にあなたは何を決めることを期待されているかについて一考するのも良いかもしれません。
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