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南アルプス 野呂川小仙丈沢

この沢は仙丈ケ岳の小仙丈沢カールに詰めあがる美渓だ。

下流部は幅広のU字谷で、過去の氷河期や冬の過酷さ半端ないことを想像させる。なんと谷底から灌木帯まで15mもの高さがある。そのおかげで日が射し明るく、だいぶ遠方から2つの大滝を望めるので、普段の沢登りと比べ滝への期待が高まる時間が長い。

1つ目の大滝は、前衛滝のへつりが初心者には高度感があり、足もとはしっかりしているが、手が少ないところもあるので怖そうだ。
標高2180 mの2つ目の大滝付近は3つの沢が流れ込むところにあり、水流は5つ認め、登攀にはさまざまなルートがある。一番左の伏流の枝沢を登るのが安全そうだが、我々は左から2番目の水量が少ない滝を登攀する。滝落ち口すぐ手前だけがいやらしく、灌木を支点とし30mロープ+補助ロープを使用し水流沿いを登るが、自己責任でテラスと上部の2つの残置ハーケンも使える。

その後は、ぬめりのある水の冷たい小滝やゴーロのぼる。沢の脇はダケカンバの灌木帯で、雪に圧迫され横倒しになってもなお頑張っている。標高2700 mの源頭部の草原の楽園は、岩の間からこんこんと清冽な水が湧き出ており、心ふるえるほど美しくすてきなところだ。

そしてまもなく視界がひらけスケールの大きい小仙丈沢カールに到達。だれもが圧倒される。振り返れば南アルプスの重鎮たち、鳳凰三山から北岳、塩見岳までそびえたち、感極まる絶景に出会える。
カールはチングルマやコイワカガミ等高山植物が咲き誇る砂礫帯で、植生を壊さぬよう、気を使いながらザレの山道を登り、ここが第二の核心だ。プチハイマツこぎではライチョウのヒナの声を聴いた。

下山の登山道は両脇が藪沢カールと小仙丈沢カールでえぐれ、細い稜線歩きがすがすがしい。多くの登山客とともに、甲斐駒ヶ岳を望みながら3時間弱ほどコメツガやエゾトウヒの森の中を下山すると北沢峠だ。

前泊の標高1945mの河原ビバーク地は、倒木たまりのゾーンで薪には事欠かない。野イチゴの植生調査もでき、小指ほどのサイズなので妖精が食べにきそうだ。翌日に備え早くから眠れ、星空も広い。
2000mの砂礫の丘もビバークによい。人気沢なので、複数パーティに遭遇。入渓地点にビバークしているパーティもいた。
日帰り沢で、沢歩きがメインだが標高差1000m弱あり、体力もつくだろう。

現在、南アルプス林道は一部閉鎖され、
長野県の戸台パーク(仙流荘:風呂あり)からバス乗車で北沢峠に向かう。
南アルプス林道バス 往復料金2740円 乗車時間55分
2時間おきの時刻表だが繁忙期はバスも増発している。

戸台パーク駐車場400台 5日間で1000円 
土曜7時台では100台近くスペースが残っていた。

戸台パークへは茅野駅、諏訪駅からバスがでている。
下山後の風呂は,高遠のさくらの湯アルカリ温泉で疲れをとった。

▢遡行記録


北沢峠より南アルプス林道を進む。ココから通行止め標識のある
野呂川林道へ向かうとゲートあり。
途中雨が本降りになり、雨宿りを兼ねて早めに沢装備へ変更。
崩落地4か所越し砂利の集積所を通過すると入渓点到着。
およそ一時間。
入渓から堰堤を越しおよそ20分でビバーク地到着。
すでに地ならし済で平たいところで眠れてありがたい。
沢がカーブしたところなので流木が多い。
壁面の草つきにシロバナノヘビイチゴの群生地が広がる。
クルマバソウ、ミヤマカラマツ、ツマトリソウ、
コオニユリ、キバナノコマノツメ(スミレ)
シャクナゲも咲いていた。
7月は花の季節だ。
ビール瓶を冷やそうとしたら、穴が開き、ビールが噴き出したのをきっかけに、昼間からウイスキー酒盛りが始まる。沢のながれの中で寝そべりポテトチップスを食べたり、おしゃべりしたり。
夜はイケメンシェフによる本格麻婆豆腐。各種調味料を駆使し実においしい!
新潟の日本酒「雪椿」、きゅうりの和え物アサリの香草バター焼きあり。
翌朝は大滝渋滞を避けるため6時30分に出発。
この沢は基本このようなゴーロ歩きだ。
第一の滝
前衛滝も大迫力
第2の滝到着。このゾーンには3つの沢筋が入っている。
滝上は草原の台地となっており、隣の沢筋への移動は容易。
写真の左手の滝を登攀。30mはあろうか。
重い泊装備のままヌメる滝を勇敢にも直登するS木氏
テラスからロープ出す
登攀後は6つの3~8m級滝があるが
いずれもロープなしで、つかまるところがある滝。
雪渓はないのに氷水のように冷たいゴーロを進む。
おもしろくてアドレナリンでまくりだ。
高度を上げるたびに振りかえると、
北岳が頭だけ雲で隠しているので、姿をみせてと祈る。

遡行中しっかりした風のつかんだ岩(人頭サイズ)が容易に
はがれ落ちたことが2回あったと記しておこう。
稜線のコルを目指して、
どのルートで行くかワチャワチャと相談中。
源頭部は楽園だ!
水源は岩場の間から豊富な水が流れ出し冷たくおいしい水だった!!
ホントのこと言うと一時的に伏流になっている。
丘の上に進むと泥水たまりのような沢が5mほどある。
水をとるなら是非ここで!
天候に恵まれ小仙丈沢カールがドーンと一望。頑張って登ってきたのが報われる景色。
振り返れば青空をバックに南アルプスの稜線がカメラにおさまらないほど続いていた。
登ってきたカールと沢がよく見える。
下山登山道から圧倒的な存在の甲斐駒ヶ岳。
いつか登れるよう体力つけたいな。
下山後はやっぱりビール。
疲れた体もビールのためなら
自動販売機までダッシュ!もためらわない。
北沢峠こもれび山荘ではビール500円 
ソフトクリーム600円が待っている。
(店内フラフトビールあり)
バス待ちの列に、ソフトクリームを
聖火のようにかかげて購入してきたら、
それをみた他のお客もつぎつぎと購入していた(笑)。
下山バス待ちは一時間、マイクロバス6台は待った。
我々の乗車したバスのあとも5台分の待ちの列が
続いているとアナウンスしていた。

全国天候不順のなか、
お天気ゾーンを探り当て計画を立ててくださった
塾長ありがとうございました

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2024年7月20日(土)雨のち晴れ ~21日(日)曇りのち晴 
山域:南アルプス 
山行形態:沢登り 
メンバー:K合(L)S木 W邊 N中 K田 E口(記)
コースタイム:
【7月20日】 8:00戸台パークー8:55北沢峠ー9:55北沢橋・野呂川林道ゲートー10:50入渓ー11:25Co1990ビバーク地
【7月21日】6:30出発ー6:55Co2100 第1滝ー7:30(~8:30)Co2200第2滝ー10:40源頭部水源ー11:00小仙丈カールー11:50登山道ー12:50小仙丈ケ岳ー13:30藪沢大滝ノ頭ー14:40北沢峠ー16:20戸台パーク
地形図:仙丈ケ岳
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