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魅惑のミールス(クリエイティブライティング講座より)

これもクリエイティブライティング講座の事前課題で書いていったもの。


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南インドでは、街のローカル食堂ででも、高級なホテルででも食べられる、ミ-ルスと呼ばれるものがあります。
簡単に言うと定食です。

直径30センチほどの銀色のステンレスの大皿の中央に炊き立てのふわふわした白いご飯が乗っていて、それを取り囲むように小さな器に入った様々なおかずが少なくとも5つ、多い時には10数個も並べられて運ばれてきます。

南インドの短くてふわふわした熱い米の上には、カラッと揚がった香ばしい薄焼きせんべい、パパドが乗っています。
パパドはそのままパリパリ齧って食べても香ばしくて美味しいのですが、もし細かく砕いてご飯に混ぜるなら、柔らかいご飯の中でパパドの味わいのある塩気と歯触りをより鮮烈に楽しめます。

次に大皿の中央で圧倒的な面積を占めるご飯に対し、周りを囲むおかずの器から好きなものを選んで中身をあけて混ぜていき、右手で大胆に混ぜ、自分好みの味を作っていきます。

汁気の多いものや粉っぽくドライなもの、崩れた豆でドロドロになったマイルドなものやサラッとしていて酸っぱいものなど、見た目も味も色々な数種類のカレーをどんどんご飯に混ぜ込んで、できた味を確認しながらどんどん手で食べていきます。

さらに刺激を求める時には真っ赤なピクルスをつまみ、
ヒリヒリして機能しなくなった舌をなだめるためには冷たいプレーンヨーグルトを乗せて冷やします。

スパイスまみれでどれも辛いカレーですが、味に立体的な奥深さと旨味があり、食べてる間にも常に印象を変えるので最後まで飽きることがありません。

素材に合わせて投入されたスパイスは香り高く、味の密度を極限まで高めてくれます。認識できる範囲を超えて複雑で芳醇で、「めくるめく」という言葉が脳裏に浮かびます。

カレーを食べると幸せホルモン「セロトニン」が分泌されると言われています。
ミールスによって暖かいお腹をした私たちはもう充分幸せなはずなのに、食べ終わる前にすでにまた食べたくなってます。これは中毒症状。カレー依存です。

食べ終わった皿の上の残り汁は、自分の好きな味の最終形態。最後の一滴まで大切に飲み干したい。

残った汁を手につけて、その手をベロリと舐めます。
果たしてそれはカレーの味なのか自分の手の味なのか、米の味なのか、もはや判別できません。旨い塩気の効いたエキスの正体はおそらくその全部です。

わたしがミールスなのか、ミ-ルスが私なのか。
南インドのミールスは、その名が示すような単なる食事ではありません。
ミールスを食べるとは、時に世界が明るく輝きだして笑いが込み上げてくる、多幸感を伴った、もはやドラッグ体験です。


しかも無限におかわり自由です。


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自分で読み上げて発表するんですが、読みながらくどいと感じたとこは飛ばして読みました。
わたしの関西出身者として病んでるとこは、どうしてもオチっぽいのをつけたくなるとこ、、、

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