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【音楽】藤井風『花』によせて

藤井風の『花』のMVが公開された。
彼の楽曲はMVと合わせて1つの作品という印象のものも多いが、今作も楽曲の持つ意味をより深く広げるものになってたと思う。

今回のMVはモチーフが葬式だというものが見るだけで伝わるが、今作は「死」の匂いというものがそこかしこにある。
最初のフレーズの「枯れていく」という言葉も彼自身が英訳して載せている歌詞だと「It's dying」となっている。
藤井風の楽曲では他にも『帰ろう』が「死」をモチーフとしたものだが、そのどちらもネガティブな意味では使われておらず、その先にある「輪廻」を歌ったものだ。
もちろん、この「輪廻」というテーマはそのままの生まれ変わりの話としても捉える事も出来るが、藤井風の楽曲の中では「今の自分が持っている不安や不満、悲しみや悩みを捨てて新しい自分に生まれ変わる」というとてもポジティブな再スタートの比喩として使われている。
彼の作品は生きる事の悦びを表現したものが多いが、その最大の表現として生きる事の対にある、生命にとって1番大きな「死」を用いてるのだと思う。思えば彼のグローバルヒットのきっかけとなった「死ぬのがいいわ」も「こんなに深く想いを寄せる人と一緒になれないのなら死んだも同然」という深い愛を表す意味で使われており、そこにネガティブさはない。

冒頭の「枯れていく 今この瞬間も」の歌詞の後は「咲いている 全ては溶けていく」と続く。
限られた命のを「死に向かっている」と考えるのか「咲き続けている」と考えるかで心の豊かさは
大きく変わってくる。
サビの歌詞にもある様に僕たちはついつい「永遠の輝きを探す」事に目を向けてしまうが、「しわしわに萎れた花」も枯れてはおらず、それもまた美しいものなのだ。

MVは葬式をモチーフにしたものだが非常にカラフルで祝祭の様にも感じられ、最後は悦びを表現するかの様に踊るシーンで終わる。

『Workin' Hard』も日々を頑張る全ての人に向けた応援歌となるものだったが、今作も聴く人の心を少し軽くする様なメッセージが含まれていた。
多くの人が耳にする機会が増えるであろうタイアップソングでこれを表現出来るのは非常に意義深い事だと感じたし、歌詞だけでなく楽曲そのものが持つ良さも含めて、改めて藤井風という才能の大きさを感じた作品になった。

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