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プレアデス

こんばんは、さわひろ子です。

今日は、これまでのおはなしから、
いちばん新しいやつを。


「プレアデス」

【星めぐりの歌】

あの星々はプレアデスです。連なる星がすこしずつ、銀河を旅しているのです。ぼくは窓から冬の空を見上げています。

プレアデスが他の星よりもうんと青いのは、命が短いからだそうです。だからああして、
美しく自由に見えるのでしょうか。

【すばる】

ぼくは今晩、ほんの短い家出をするつもりです。柔らかな鳥かごみたいな家を出て、朝まではあのプレアデスと同じに、自由にはばたく旅をするのです。

星空は、しいんと冷えていました。

【夜明けの晩に】

星あかりの下、ぼくは、あぜ道を歩きます。生きもののないはずの冬の田んぼに、酔っぱらいの、はな唄が聴こえてきました。

赤い顔をした案山子が、酒を頭から浴びて、機嫌よくうたっているのでした。

【まつりのあと】

案山子がぼくを見つけて、何やってんだといいますので、明日の朝まで家出なんだ、と答えます。

案山子は、そんなら、船出の歌を聴いていきな。朝には帰るつもりで、今生の別れになる場合もあるんだから送ってやるよと、高らかに船出の歌を歌いました。

【海里】

船出の歌を聴き終わり、家出の続きをすることにしました。しばらく道なりに行くと、青白い蛍が鼻先をかすめました。

この真冬に見間違いかと思いましたが、蛍は次々と列をなして、ぼくを横切ってゆきます。町はずれへ消えた蛍を、ぼくは思わず追いかけていました。

【かくれんぼ】

蛍はぜんぶで七ついるようでした。ぼくは、けんめいに追いかけました。

そのうちますます夜は深くなり、青白い光は淡く、闇に際立ちました。くるくる回りながら飛ぶ様子に、彼らがこの夜を踊っているのだと気がつきました。

【真夜中】

朝はすぐそこへ迫っています。ぼくは家出から戻らなければならないのに、蛍を追ってずいぶん遠くへ来てしまいました。

七つの青い蛍はつかず離れず、まるであのプレアデスそのものに見え、ぼくを高揚させました。あれはたしか、七つの星でできているのです。そういえば家の窓から眺めていたプレアデスは、いま空からすがたを消しています。

濃い紫と薄い水色の混じった空がぼくに、はやく家に帰るよう告げています。

【七色】

そのとき、絹糸のような雨が、夜明けの空にさあっと差しました。雨はみるみる透き通ったカーテンとなり、風にひるがえったのです。

蛍は、はじめてぼくを呼びました。ハつめの星になりたければ、それに乗りなさいと。ぼくは飛びあがり、カーテンにつかまりました。

それからのぼくの行方を知る人はいません。七粒の仲間たちと、酔っぱらいの案山子以外には。

空にはまだ、優しい雨が降り続いています。

【玉響】

at
20200221
オノマトペル×さわひろ子
ツーマンライブ

Tokyo Guest House
Oji Music Lounge

pf.はらかなこ
dr.高橋洋祐

裏ばなし

すばらしくて、
興奮するばかりだった、
オノマトペルバンドのみなさまと、
伴奏してくださったおふたり、

そしてとってもあたたかいお客さまと、
至福のツーマンライブでした。


わたし宮沢賢治が
だいすきなのですが、
オノマトペルのおふたりもお好きとのことで
星めぐりの歌からはじめました。

アンコールはお互いの
宮沢賢治の作品のことばや人物が
出てくる曲を一緒にできて
たのしかったなあ。

またかならずや。



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