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トラベラー


目がさめたとき


わたしが今日も
わたしに醒めたことに
おどろく

からだの隅まで
たとえば末端についている
複数にわかれた節

おなか 足 おしり
息を吸おうとすると
からだの上のほうと中央が
ふわりと膨らみ

それを囲う肋骨という硬い枠が
いっしょにしなやかに動く

なんて便利な仕組みだ
なんて使いやすいかたちだ


わたしはこの部屋のどこに
なにがあるか知っているし
(すごい)


こうして意図的に行った行為が
呼吸であること
上部についたさきほどの節を
指と言えば正解であることも
知っている


すごい

奇跡としかいいようがない


日々刻々と起こりつづける奇跡を

人に話してもうまく説明できず

いつしかしたり顔で
受け入れるふりを
できるようになった


しかし今でも
わたしはおどろいている


朝起きてしばらく
じっと「手のひら」を
見てしまう日もある


へんなせかいだ、ここは
おもしろいところだ



今日わたしは「洗濯」をし
「食事」をし「歌」をうたい
「夜」になったので
すこし「お酒」をのんで
「風呂」に入って「ソファ」に
ねころんでいるところ


さっきどこかから天井に
やってきたてんとう虫は

「てんとう虫」であって
「かまきり」でも「蜂」でもない


しかも、「かまきり」も「蜂」も
どこかにいるんだって!

ひゃあ なんということだ

夕飯に食べた「かぶ」の甘さが
まだいとおしく喉にのこっている
食べものってなんておいしいんだろう

わたしは旅行に来たようだ
すばらしい宿にしばらく
身を寄せている

このきらめきを
しばらく忘れていた気がする

たからばこに
入っているじぶんを
思い出したみたいな気持ちだ



さて、めんどうがられそうな
おはなしはここまでにして

てんとう虫の行方を
見守りながら眠るとします

明日もわたしはわたしでしょうか
おやすみなさい。







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