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ビジュアル重視でも(2013年6月2日)

 ここのところ本ブログで積極的に(?)とり上げている「婆娑羅(バサラ)」ですが、『戦国BASARA』というゲームがあるので、その呼称だけは知っていたという方も多いと思います。
 私はというと、用があって妹と足を運んだア○メイトにて、「長宗我部元親」のフィギュアを見て度肝を抜かれたのが『戦国BASARA』に出合った最初でした。アニメやゲームに詳しい妹に「このフィギュアって何?」と聞くと、「最近はやりの『戦国BASARA』ってゲームのキャラで、人気があるらしいよ」ということでした。よく見ると、隣に「真田幸村」と「伊達政宗」と書かれた、「元親」同様にかなり〝傾(かぶ)いた〟フィギュアも置いてありました。

 ご存じの方も多いと思いますが、戦国末期から江戸初期にかけての放埓な人々の名称は「歌舞伎(かぶき=傾き)者」です。しかしながら、南北朝期の異装の無法者の名称である「婆娑羅(バサラ)」の方が語感良いだけでなく、語源がインドのサンスクリット語「ヴァジュラ」で、意味はダイヤモンドだというあたりを採用した、ゲーム製作者の大胆なセンスには感服です。


 興味津々の私は、後日妹に内緒でゲームを購入し、プレイしてみました(操作がかなり難しくて、真田幸村で同じ戦闘を何十回とプレイして操作に慣れました)。このゲームには批判的な人も多くいるのは知っています。時代も衣装も言葉づかいも何もかもめちゃくちゃですからね。しかし、江戸時代の芝居(歌舞伎)や読み物もそんなものです。歴史上の人物は大体当世風の美男美女で描かれていて、筋だっていわゆる〝いいとこどり〟で進みます。
 実際、私たちの世代(四十代)だって戦国好き、幕末好き、三国志好きは、だいたい小説や漫画から、TVドラマから、ゲームから入ったということが多かったと思います。入り口はそこからでも全く構わないと私は思います。
 『戦国BASARA』は「歴女」という語も生んだ通り、女性が歴史に興味を持つことにもある意味で貢献したと思います。新選組の沖山総司研究も、一人の熱狂的な女性の研究(元祖「歴女」のような存在だと聞いたことがあります。総司=美少年のイメージはその方の研究によるところが大きいとか…)が、総司研究をする上では避けて通れないくらいすごいということを聞いたこともあります。

 大河ドラマ『真田丸』の時期に合わせて発売され、欲しくて仕方なかったのですが、このためだけにPS4を買うことができず断念…。


 『超訳百人一首 うた恋い。』(杉田圭/メディアファクトリー)という漫画も人気ですが、例の、漫画など一切読まない『伊勢物語』研究者の後輩君(本ブログ https://note.com/sawa3333sawa/n/nd71091454060 参照)ですら、業平の〝イマドキ〟な感じの風体を見ても「うわ、これはわかる、いい! (業平は)こんな感じ、きっと」と言っていました(笑)。金髪に青い目で、弟キャラの藤原定家にはさすがの私も驚きましたが、定家の性格等をビジュアル化したらこうなのかもと思ったらとても面白くなり、『うた恋い。』では断トツで好きなキャラクターになりました。ちなみに、深夜アニメ好きの理科の先生(♀)も『うた恋い。』はお気に入りアニメの一つだというので、私と後輩君と三人で盛り上がりました。


 『平清盛』のドラマのキャスティングでは、私は松田翔太の後白河帝には最初どうしても納得できませんでした。松田翔太は好きな俳優さんの一人ですが、「狸」なおっさんの役は無理でしょ、と思ったのです。――しかし、彼は抜群に歌がうまかった! 憂いを帯びた今様の歌いっぷりが妖しいまでに色っぽかった!! 大好きな今様を歌いすぎて喉から血が出たという後白河帝の〝いっちゃってる感〟が、雰囲気のあるイケメンの松田翔太でも合うのかもと思えるようになり、『平清盛』ベストキャストの一人と思うようになりました(松ケンの無骨な歌いっぷりが、生涯のライバル後白河との対照をなすのも面白かったです)。


 昨年、『ビジュアル日本の名将100傑』(歴史魂編集部/アスキー・メディアワークス)という本が、近所の本屋の歴史コーナーにひっそりと並んでいました。その頃実に無駄遣いが多かったので、〝買わない〟と何度も言い聞かせましたが…ダメでした。
 この本の素晴らしいところは、この類の本に多い戦国と幕末だけでなく、戦いを制した日本史上の「将」を古代から近代まで掲載していることです。「第1章 古代~平安」は、「大海人皇子」「坂上田村麻呂」「アテルイ」「平将門」からしっかりスタートしています。「藤原隆家」などかなりイケてます。
 「第2章 源平~鎌倉」では、平清盛・知盛と源義経が印象的です。平清盛はけっこう〝いい人〟みたいなビジュアルで、息子の知盛もそれに似たさわやかな風貌です。一方の源義経は、冷血な感じなのです。一族を何より大事にした清盛・知盛(平家の武将たちが最期、最も仲の良かった兄弟らとともに海に飛び込むシーンは、何度『平家物語』を読んでも涙を誘われます…)とはあまりにも異なる、勝利のために当時の掟破りを戦場で繰り返し、最後は兄・頼朝にも追われた義経のイメージには確かにぴったりです。「木曽義仲」も憎めない好青年な感じで描かれており、『平家物語』をしっかり読んだ時に浮かび上がるイメージにふさわしいです。個人的には「北条泰時」が、かなり好みのタイプです(爆)。
 「第3章 南北朝~室町」では、『太平記』では有名な武将でも、現代では知名度の低い「護良親王」「土岐頼遠」らにもスポットが当たっていて嬉しく思います。「第4章・第5章」は戦国時代を前後期にわけています。
 「第6章 幕末~明治」では「乃木希典」「東郷平八郎」ら日清・日露戦争までを収録しています。個人的にはこの第6章は近現代としてもっと厚くてもいいのかなと思いつつ、大正・昭和期はいまだ触れられないことも多いのだとあきらめてもいます。


 歴史や古典への入り口は、目くじら立てず、どこからでも構わない私は思います。
 『ビジュアル日本の名将100傑』ですが、授業で紹介した次の週にはさっそく購入して学校で読んでいる生徒もいましたよ。


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