見出し画像

【駅の機能追加】 西武線のレンタル傘

駅が高機能化しています。従来は電車に乗り降りする機能が基本でした。移動の結節点として人が集まる駅、どのような機能が追加されているのでしょうか。

駅に着いて雨でも慌てない

西武線の駅の改札そばで目につく傘置きがあります。パズルの様な筋に傘が並んでいます。

株式会社Nature Innovation Groupが提供する傘のレンタルサービス「アイカサ」です。24時間70円という価格設定で利用できます(21年3月現在)。

画像1


使い続けたいわけでもないビニール傘を買って、家に傘が溜まっていくストレスを70円で解消できます。

専用のアプリをダウンロードして、傘立てのQRコードを読み取る仕組みです。

サービスは受け入れられるのか?

アイカサは、スポットで利用するモノはシェアすべきという思想です。モバイルバッテリーのレンタルサービスと同じです。一時的に欲しいが、買うまででもないものを対象としています。

買うまででもない理由はいくつかあります。

1.すでに購入済みであり、たった今手に持っていないだけである。
2.利用頻度が低く、所有したくない。
3.購入する金銭的負担がメリットと釣り合わない。

などです。

駅という自宅から程よく離れた場所で、一時的なモノの利用を提供するサービスはアイデアとしてはおもしろく感じます。利用と所有はセパレート可能であり、利用だけを提供することに着目しています。

今あげたシェアリングサービスが根付くためにはいくつかのハードルがあります。

1. サービス認知
2. 誰が使ったかからないものを使う心理的抵抗
3. 使用の都度費用負担が発生する負担感
4. 使いたいと思うタイミングでモノを提供できるか
5. 返却する億劫さ

通勤・通学で駅を利用する人であれば、モノが存在しているだけで目につく機会が多くなります。認知度が高まります。設置スタンド自体が広告の役割を果たしています。1.のサービス認知はクリア出来そうです。

特定の人の身近に寄り添い、「欲しい」となったタイミングでサービスを提供するやり方ではありません。駅で待ち構え、欲しいと思っている人にサービスを提供します。駅は人の流量が多く、なにかしらのモノのニーズを持った人が一定数います。4.もクリアできそうです。

2, 3, 5が残るハードルとなります。

個人が利用したモノが事業者の仲介を経ずに別の個人に渡ることに抵抗を覚える人がいます。衛生面で問題がない限り、具体的なマイナスはありません。しかし、心理的な抵抗感が生まれます。2.は対策が難しいハードルです。

購入したモノを使用した回数で割り戻せば、1回あたりの費用を計算することができます。比較すると、買うこととシェアリングサービスとして利用することにそこまでの費用負担の差がないと気づきます。しかし、コスト負担なく次も使用できる安心感(所有)と比較し、どこまでいっても都度お金がかかる形態は心理的な負担感があります。この負担感がいやで(もったいなく感じて)利用が避けられます。

所有していれば、期限を意識し返す必要がありません。しかし、アイカサは返却が前提となります。返却を忘れないよう意識しなければならず、こちらも精神的な負担になります。ハードルの5番目です。

シェアリングサービスが根付くためのハードルをみてきました。精神的、心理的なハードルが利用拡大の妨げになっています。サービスが受け入れられるためには、ユーザの「気持ち」に寄り添ったサービス設計が求められます。試しに一度利用してもらう、が解決策の一つになるかもしれません。

追加機能と駅の密連携

駅として「アイカサ」設置スタンドのための場所を提供する形態は疎な連携です。駅の機能追加とも言えますが、場所貸しという見方もできます。駅としての一体感、駅を利用するくらい自然に機能選択ができるインターフェースが必要です。

そのためには、外部事業者と駅の密連携が求められます。具体的には、スマホアプリに機能を集約することです。西武鉄道アプリから、シェアサービスの申込が可能なイメージです。また、ポイント連携も利用拡大につながります。

電車に乗っている人に「雨が降ってきました。傘をお持ちでないお客様は駅のアイカサをぜひご利用ください。今ならポイントアップ中です」というメッセージをアプリ上に送ります。駅から家まで濡れて帰ることを心配していた鉄道利用者に安心を届けられます。

駅への新機能の追加と密連携、今後に期待です。




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?