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#SaveOurVoice - 下北沢 BASEMENT BAR & THREE(ライブハウス)

Speaker : 吉澤直人 / クックヨシザワ(BASEMENT BAR / THREE)
Interview & Text : Nozomi Nobody

※このインタビューは2020年4月8日(水)に収録したものです。

新型コロナウイルスの影響と現状

ーーまずは自己紹介をお願いします。

下北沢の南の端っこの、酒のカクヤスの地下にあるライブハウスです。下北沢BASEMENT BARと、同じ系列でその隣にあるTHREEの店長をしてます。いわゆるライブイベントの他に、クラブイベントもよくやってるような箱です。

#SaveOurSpaceの発起人の一人でもあるスガナミユウ君から引き継ぐ形で今年からTHREEも兼任で店長になって、4月くらいには自分たちのペースができるだろうという見通しが立って、いよいよギアーをあげて頑張っていこうって思っていた矢先でした。BASEMENT BARは来月25周年の節目だったんで、けっこう気合い入れて組んだ案件がいろいろ入ってたんですけど、発表も出来ないままのものもあったりとか。緊急事態宣言が発表されて、店としてはしばらくはお客さんを入れたイベントは出来ないので、先の見えない闇がじわじわ広がっていっているような感じですよね。

ーーお店はいつから閉めてるんですか?

お客さんを入れての営業を止めたのは4月1日です。最初にニュースで取り上げられ始めた頃は対岸の火事っていう感じだったんですけど、知り合いの中国出張がなくなったりとか、海外のアーティストの公演がキャンセルになったりとか、「これ俺らにも直接影響あるぞ」って違和感を感じ始めたのが2月くらい。3月に入ってライブのキャンセルもだんだん増えていって。はじめは穴が空いたところも無理矢理(イベントを)やってたんですよ。だけどそれも段々追いつかなくなって、最終的にはバー営業で「体と心が万全な人は無理せず来て下さい」っていう形になり、3月の終わりにそれも立ち行かなくなりました。

系列店は全部で7店舗あるんですけど、みんなで集まって話して「一旦お客さん入れるのやめましょう」と決めて、ライブを配信するために知り合いにノウハウを教えてもらったりして準備をはじめました。

先も見えない中で今がまさに踏ん張りどきで、「ここの場所を守らなきゃいけない」っていうのと、こういう状況の中でも「楽しいアイデアとユーモアを持って発信していきたい」っていことをずっと思ってます。これからどう闘っていくかっていうのが現状ですね。

ーー3月は数字としてはどうでしたか?

売り上げは3分の1から半分くらいですね。4月はお店閉めちゃってるんで、一旦ゼロですよね。

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下北沢BASEMENT BAR

現在のお店の運営

|チケット制のライブ配信|

ーー当面はどういう予定ですか?

ライブの生配信だけじゃなく、録画の配信もできるように準備してるところです。ちゃんとクオリティーを保ったコンテンツを届けて、チケットを販売して、手伝ってくれる人や出てくれるアーティストのみんなにもちゃんと還元できるように。内容によって値段も変わるし、無料で観られるけど投げ銭ができるようにしたりとか、そこは普段のライブと一緒で観てくれる人の楽しみ方も含めてうまく使い分けられたらっていうところですね。

|ドリンクチケットの販売|

ーーオンラインでドリンクチケットも売ってますよね。

そうですね。7店舗あるうち、6店舗共通で使えるチケットを売ってます。みんな買ってくれてはいるんですけど、でも結局それって前借りみたいなものなんで何千枚っていうそのチケットを消化する日は売り上げはないなっていう。(買ってもらって)嬉しいのと同時にちょっと震えてます(笑)

ーー確かに。それに長い目で見たらずっと続けられるってものでもないですからね。

そうなんですよ。多分初動だけだと思います。箱によってはクラウドファンディングしたりドネーションのTシャツ売ったりしていて、うちも案としては上がっていて考えてはいるんですけど、いずれにしてもちゃんと自分たちの色が出せるものをちゃんと準備してやれたらって思いながら動いてます。

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「# サイカイに乾杯」と題して系列6店舗で利用できるドリンクチケットをオンラインで販売。4月1日から14日までで10,160枚を売り上げた。

|関係スタッフの状況|

あとはやっぱり働いてくれてる人達のことですよね。僕は固定で給料もらってるんですけど、一本単位とか時給で働いているPA、照明、バーのスタッフは本当に仕事がない。お店が開けられないとバーも開けられないし、配信ライブが入っても規模によってはPA・照明のスタッフは入れられない。3月に(キャンセルになった)ライブを無理やり穴埋めしてたのも「なるべくみんなの仕事がなくならないように」っていうところが大きかったんですけど、これがイベント会社とかになると一発で100人とか飛ぶのかと思うとゾッとします。

ーーアルバイトとかフリーランスのスタッフに対して、会社としての補填などはあるんですか?

うちは正直“ごめんなさい”してますね。掛け持ちのバイト持ってる子とか実家に住んでる学生とかが割と多かったりするので、どうにかって感じですかね。学生でもない一人暮らしの子に関してはもともと紹介していた掛け持ちのバイトの方で動いてもらったり。会社自体では給料の補填は出来てないです。ライブハウスは結構どこもそうだと思うんですけど、自転車操業なところはあるし、うちは母体が他の事業やってるわけでもないんで、そこは本当に苦しいところというか…難しいですね。

ーー5月6日に緊急事態宣言が解かれたあとも、すぐにお店を開けられるかどうかはまだわからないですしね。

それなんですよ。お店を開けたところで「まだ怖いな」って思われちゃったらお客さんが来るかわからないんで。そもそもまだ感染のリスクが残った状態で人が集まるのは避けなきゃいけないので、ある程度の収束が見えないと難しいですよね。

お店を開けてなくても当然家賃はかかるし、融資を受けたりという動きもあるんですけど、本当に昼間は別の仕事を探して働くとか、そういう可能性もなくもないところまで来てますね。でもそういう風に切り替えられる、いい意味での軽さがないと守りたいものを守っていけない気がしてます。切実っすね。

国からの助成について

ーー国からの助成などで何か活用してるものはありますか?

現状、テレワーク助成金、持続化給付金、東京都の協力金等、我々が活用できるようなものを調べながら、といった感じですね。少しづつその状況も変わっていくので日々チェックしつつです。

ーーどういう支援が必要だと思います?

非正規社員の人って多いと思うんで、額云々の話じゃなくてそういう人まで行き届くものですよね。目の前の先立つ現金足りない人達は多いと思うんで、一律の給付をしてほしいです。現状僕らは給料出るんですけど、4月1日の時点で働けなくなっちゃった子たちがいるんで。もちろん箱に補償が出るんであればそこからみんなに分配して「今これだけ渡せるから、何日間頑張ってね」って言えるけど、それもないままだと本当に厳しいですよね。

いま必要なこと

ーー箱の体力的にはどうですか?正直この状況であとどれくらい耐えられそうですか…

あくまで現時点の概算ですが、今の状態とか生活水準を下げながらなんとかやりくりできるのが3ヶ月。あとはメンタルの問題もあると思います。このままいったら本当に治安悪くなると思うんで。みんなの心も病んでいくし、長引けば箱を支援してた側の人も「いやいやこっちも助けて欲しいよ」ってなってくると思うんで、こっちもヘルプを出せなくなってくる。さっきTwitterで「これ結局友達でドネーション回してるだけだよね」っていう意見を見たんですけど、それになりかねないなって思うし。

ーー私もクラウドファンディングで支援したり、オンラインショップでTシャツ買ったりしてますけど、でも自分自身も入ってくるお金は実際減ってるし、限界がありますよね。

正直3ヶ月後、ライブハウスは壊滅的になると思います。もうすでに閉めてるお店の話もちらほら聞いていて、4月でこの状態だと5月、6月の時点でバタバタって倒れちゃうんじゃないかなって思ってます。でもなるべくやっぱり残ってないと、みんなそのためにドネーションしてくれるしドリンクチケット買ってくれてるんで。本当に再開しないまま終わっちゃって、戻る場所がないとか、楽しみにしてた場所がなくなっちゃうのは本当に悲しいし夢もクソもなくなっちゃうんで、場所だけでも残さないとって思います。

だから本当に小ちゃい声でも上げていかないと。最近よく言うんですけど、結果はどうあれバッターボックス立たないとヒットも打てない。だから最初に(助成に向けて)アクション起こしてくれたみんながいたっていうのもすげー嬉しかったし、あれだけの署名が集まるのも本当にすごいなって思うし。我々ライブハウス界隈だけじゃなくて、いま動いている#SaveTheCinemaの映画界隈の人だってそうだし、カルチャー関係全般の人たちが情報とか意識を共有していく必要がありますよね。「お前らだけが」っていう声があるのももちろんわかるし、それも踏まえた上で僕らみたいな業種は声を上げていかないと何も動かないなっていうのは改めて感じてます。

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下北沢BASEMENT BAR / THREE店長・吉澤直人 / クックヨシザワさん
THREEのバーカウンターにて

今後に向けて

国とか政治家に対して失望したり「がっかりだよ」って思ったりするのはあるんですけど、結局国民全体として選んでるのは僕らなんで、最後まで絶望はしないように信じつつ…。ライブハウスっていう場所としては、本当に最後の最後まで夢のある場所として食らいつきます。あくまで楽しいコンテンツを届けられるようにっていうのを意地張ってやります。お客さんも演者もみんなが戻って来れる場所は守ります。

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▼下北沢BASEMENT BAR
https://toos.co.jp/basementbar/

▼下北沢THREE
http://www.toos.co.jp/3/

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