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#SaveOurLife 記者会見より ー 奥田知志(ひとりにしない支援 認定NPO法人抱樸/牧師)

皆さんこんにちは。NPO法人抱樸の代表、奥田知志と申します。今日はこのような機会を与えて下さって本当にありがとうございます。直接のやり取りが出来ず、映像での参加になりました。本当に申し訳ございません。

今、コロナの状況の中で本当に苦しんでいる方々が沢山おられます。また同時に命を守るため、暮らしを守るために今日も働いて下さっている方々、StayHome出来ない方々が沢山おられます。私はそのことをまず心に刻み、感謝したいと思います。

元々社会が持っていた矛盾、格差、脆弱さ

今、私達は新型コロナウイルスということに苦しめられています。新型ですから、新しい未知のウイルスだということです。しかし一方で、私は困窮者の支援を30数年やってきましたが、今私達が見ている風景というのは、コロナを見ていると同時に実はかつてあった社会、これまでの社会を見てるんだと思っています。大規模な災害等が起こるときに私達はこれまであった社会の脆弱性、社会の矛盾、それが拡大しながら露呈するということを繰り返して見てきました。今回コロナの事態の中で起こっている問題は、元々社会が持っていた矛盾であり、格差であり、また脆弱さであると思います。ですからこれはコロナ自体の感染をどう防ぐかと共に、この社会をどう作るかという、ふたつのアプローチが必要なんだと思います。

仕事を失っても住宅は失わないことを前提とした社会に

じゃあ今までの社会は、どのような脆弱性を持っていたのでしょうか。30数年前、私達は活動を始めました。その時の雇用の状態はどうだったか。正規で雇用されている方が85%を超えていました。しかしあれから30数年が経って、非正規雇用率が4割を超えました。正規雇用率は、6割です。2000万人近くの方々が不安定な就労の中で暮らしておられる。これが現在の社会、コロナを迎えた社会そのものだったわけです。

しかもその4割の非正規雇用の中には、住宅と仕事が一体化した暮らし方、働き方をされてきた方々が非常に沢山おられた。これもこの30年の傾向でありました。すなわち、派遣先のアパートに住んでいるとか、寮付きの就労で暮らしているとか。こういう形態というものは、経済がある程度回っているときにはある意味便利な形かもしれません。一方、今回のように経済がストップしてしまうと、雇い止めにあったり派遣切りにあったりし、失業と同時に寮を追われる。つまり住居を失う。仕事と住宅を同時に喪失することになります。これが元々この社会の持っていた脆弱性そのものです。私は「住宅と仕事を分離する。仕事を失っても住宅は失わない」ことを前提とした新しい社会に作り替えなければならないんじゃないか、今回そのように考えるわけです。

住宅そのものを提供するためのクラウドファンディング

私達は今回大きなクラウドファンディングを立ち上げました。目標金額は1億円にしました。それはなぜかと言うと、仕事と住宅を同時に失った方々に住宅そのものを提供できるようなプランをまずはパイロット的に起こしてみようではないかということを考えたわけです。実は国土交通省の調べでは、全国に840万戸の空き家が存在するということが判明しています。すぐさま使えるような不動産流通に載っているようなものだけでも200万戸くらいはある。家はたくさん余っていて人口は減少しているのに、一方で家に住むことができない人達、入居を拒否される人がいる。これはおかしいんですね。これを上手くマッチングできる方法はないのか。

大家さんが貸したくないと思われている心配は何か。一人暮らしで家族とも離れている。何かあったときに相談できる人がいない。何かあったとき、特に亡くなったときどうするのか。このようなことが大家さんの「貸したくない」という気持ちの中にはあるんですね。ですから、入居する人にも大家さんにも共通の相談相手がいる、そういう支援付きの住宅を全国で提供できないかと考えています。そのためのクラウドファンディングです。READYFORさんのサイトの中に位置付けられておりまして、どうぞご協力頂きたいと私達は考えています。

寄付が2倍:コロナ緊急|家や仕事を失う人をひとりにしない支援
https://readyfor.jp/projects/covid19-houboku

今回のことをきっかけに新しい社会の創造が出来ないか

多くの方々が、「コロナがいつ終息するか」「あの日にいつ戻れるか」「あの日に帰りたい」そんな想いの中で今何とか我慢している日々だと思います。でも私は正直あの日にはもう戻れないと考えています。それはコロナが終息しないとか、このままずっと感染が拡がるとか、そういうことを言っているわけではありません。いずれワクチンも出来るでしょう。いずれ薬も開発されるでしょう。人類はある意味これを乗り越えてコロナというものとの共存を上手く図っていくことが出来るでしょう。そういうことではなくて、私はあの日に戻ることが本当にいいことなのかということを考えるときが来ていると思うわけです。あの脆弱だった社会そのものに帰るのではなく、今回のことをきっかけに新しい社会の創造が出来ないか。人間は貧すれば鈍すると言いますが、そんなことはありません。貧すれば考えます。貧すれば出会います。そうして新しい社会を構築していく。そのためのひとつのステップが今回のクラウドファンディングです。

闇の中に新しい光を見出す時を迎えている

StayHomeは大事です。「人にうつさない、もしくはうつらないために家になんとか我慢してじっとしていましょう」でも、StayHomeが命を守る、それは確かにそうなんだけど、本当にそうでしょうか。家にじっとしていることだけが人の命を守ることになるでしょうか。私達はStayHomeと共に「FromHome」ということを考えています。家の中から出来ること、家の中からでもやれることを今考えるべきなんじゃないか。実は10万円の給付が決まった翌日、白い封筒を持った男性が私のところに訪ねて来られました。封筒の中には既に10万円が入っていました。まだ給付も始まっていないのにです。彼曰く「自分には家もある、お金もある、年金もある。いずれ10万円は来るだろう。でも困っている人は今困ってるだろう。だから先に持ってきました。奥田さんこれを使って下さい」と言って(封筒を)手渡されました。人の心が繋がりはじめている。私はこの国はまだいけると思います。このピンチをチャンスに変える。私達はこの闇の中に新しい光を見出す。そのような時を迎えてるんだと思います。

困窮者の現場も頑張ります。多くの方々と連携しながら、繋がりながら、この危機を乗り越えていきたいと思っております。

どうぞこれからもよろしくお願いいたします。

【新型コロナウイルス感染拡大防止に努めるあらゆる人の仕事と生活を守る継続的な支援を求める署名】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfmg6jhOPO2P6uHGb2RcH4GWzCb7b3_cr1WLulJVUoCHv4E7g/viewform

Photo: Yosuke Torii