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#SaveOurLife 記者会見より ー 篠田ミル(音楽家/SaveOurSpace) 会見趣旨

本日はみなさまお集まりいただきありがとうございます。yahyelというバンドのメンバーとして、DJや作曲家として活動している篠田ミルと申します。
本日は#SaveOurSpaceの発起人のひとりとしてこの場に臨んでおります。まず私の方から、本日の記者会見の趣旨についてお話させていただきたいと思います。

#SaveOurSpaceについて

私たち、#SaveOurSpaceは、ミュージシャンやクラブ・ライブハウスの従業員や経営者などの有志によって構成されています。新型コロナウイルスの感染拡大をうけて、早い段階から感染発生源として名指しされてきたライブハウス・クラブ・劇場などの文化施設が深刻な経済的な打撃を受けている現状をふまえ、感染拡大防止の観点から、国や地方自治体からの経済的な支援を求める署名活動を3月末より開始しました。

この最初の署名は、大きな反響を呼び、4日間で30万筆以上の署名を集めるに至りました。この署名を政治家のみなさまにお渡しする中で、実際に政策として文化施設への支援も盛り込んでくださる地方自治体もいくつか出てきました。

#SaveOurSpace から #SaveOurLife

一方で、先行きの見えない外出自粛のなかで、クラブやライブハウスに限らず映画館、飲食店、宿泊施設、その他娯楽施設や商業施設まであらゆる”スペース”が危機に立たされています。

<この国のあらゆるスペースが存続の危機に>

毎日、お店や施設の存続支援を訴える新しいクラウドファンディングが立ち上がり、また閉業の知らせが飛び交っています。この国のあらゆるスペースが存続の危機に立たされています。そのスペースにまつわる文化や歴史、コミュニティ、思いが消失の危機に晒されています。またそこに携わるあらゆる労働者の生活が危機に晒されています。

もちろん危機に立たされているのはスペースにとどまりません。この国に、この社会に生きるあらゆる人々の生活が、命が危機に晒されています。フリーランスや非正規雇用の労働者、外国人労働者、ホームレス、セックスワーカー、福祉関係者、医療関係者。緊急事態宣言で町が静寂につつまれる中、限界を告げる悲痛な声は社会全体にこだましています。

<#SaveOurLife の活動>

私たちが行っている署名活動のひとつに、『SaveOurLife. 新型コロナウイルス感染拡大防止に努めるあらゆる人の仕事と生活を守る継続的な支援を求める署名』があります。この活動を進めるにあたり、新型コロナウイルス感染拡大の中で、署名活動や声明の発表など、各分野で多くの方たちが声をあげているのを目にしました。終息の見通しが立たない中で、労働者や事業者だけでなく、あらゆる立場の人たちが苦しんでいます。

私たちはSaveOurLifeという旗のもと、この国に、この社会に生きるあらゆる人々の生活を、命を守る声がひとつの大きな声となることを望みます。それぞれの声は小さく、局所的なもののように思われるかもしれませんが、この声の集積が一つの大きな力となることを信じています。

<この国が抱えてきた問題を新型コロナウイルスは最大化している>
 
また、これらの声は私たちの生きる日本社会が新型コロナウィルス以前においても、見過ごしてきた声でもあります。これまで「自己責任」の論理のもとで、いくつもの悲痛な声を私たちの社会は押し殺してきました。新型コロナウイルスは万人に襲いかかるものである一方で、ウイルスの感染拡大防止のための経済活動の自粛は、社会的弱者から順番に襲いかかるものです。格差や貧困、差別といったこの国が抱えてきた問題を新型コロナウイルスは最大化しているのです。新型コロナウィルスは、この社会が黙殺してきた問題を極限化し、私たちの喉元に突きつけています。
 
新型コロナウイルスによる経済苦で自殺してしまったタイの19歳の母親がSNSに記した最後の言葉を、ここで紹介させていただきたいと思います。彼女は、才能に溢れる絵描きである一方で、経済苦のなか警備員の仕事に就くなどして窮状をしのいでいました。

友よ、私は一体どこにいるのだろうか。最後になったのに友よ、あなたに会うことができない。悲しくどうしようもなくなった。こんなおかしな世の中、時代に私は疲れた。
食べ物は毒入り、道端は墓場、狂人がハンドルを握るおかしな世の中に直面している。
私は絵を描きはじめて以来、こんなに気が滅入って鉛筆を握ったことはない。子供に飲ませるミルクを買うお金すらないのだ。全てが値上がりして高くなってしまった。1日12時間働いても何も残らない。涙に暮れながらこの絵を今描いている。
国は何もしてくれない酷い時代である。どこにも行く当てもなく死を選ぶ人をこんなに見たことがあるだろうか。
友よ、私は最後にどこにも自分の居場所がなくなった。ただ家に帰りたい。

これは対岸の火事でしょうか。わたしたちの生きるこの日本社会において関係のないことでしょうか。私はそうは思いません。失業率が1%上昇すると数千人規模で自殺者が増えるという過去のデータがあります。日本において、リーマンショックが起きた2008年の翌年1年間だけで生活苦による自殺者が少なくとも2800人出ました。これは対岸の火事ではないのです。十分に可視化されていないだけでわたしたちが生きる日本社会においても差し迫った問題なのです。

経済的苦境に加え、社会的弱者が感染リスクにさらされ、そこから感染爆発が起きることも十分予測できます。社会福祉の観点からだけでなく、感染防止対策としても社会的弱者の救済措置は、今すぐやらなければならないことなのです。

<声なき声を黙殺してきた社会を変革するチャンス>

批判をするな、声をあげるな、今は感染拡大を防止するために一致団結しろ。Stayhome、おうち時間。私たちは、この一見優しい声に、空気に、屈してはなりません。生活が、命がままならないなか、自宅待機はできません。自宅待機するためのお金が、仕事が、家そのものが失われようとしているのです。今は批判をするな、声をあげるな、この想像力を欠いた声に私たちは抗う必要があります。
 
新型コロナウイルスによって、この社会がこれまで黙殺してきた問題が極限化されているからこそ、私たちはこれまで以上に声をあげる必要があります。新型コロナウイルスをきっかけに、声なき声を黙殺してきたこの社会を変革するチャンスがわたしたちの目の前には広がっているはずです。今この社会に必要なのは、それぞれが声をあげ、そしてそれを黙殺することなく、社会全体で拾い上げて向き合っていく覚悟です。このような覚悟の先にこそ、私たちの社会が前進する可能性がひろがっているはずです。

今回の記者会見では、SaveOurLifeの活動のひとつの集大成として、出来るだけ沢山の、様々な声を集め、それぞれの立場から窮状を訴えていただける場にしたいと考えております。本日はできるだけ様々な立場を代表する方々にこれから登壇していただき、窮状を訴えていただきます。

お集まりいただいた報道関係者のみなさま、および記者会見を視聴していただいているみなさまにおかれましては、どうかこの声に耳を傾けていただき、より多くの人に届けていただけるようご協力いただければと思います。何卒よろしくお願いいたします。

あらゆる業種や立場の垣根を越えるこの記者会見が、社会を動かすための歴史的な一日になることを願います。

【新型コロナウイルス感染拡大防止に努めるあらゆる人の仕事と生活を守る継続的な支援を求める署名】
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSfmg6jhOPO2P6uHGb2RcH4GWzCb7b3_cr1WLulJVUoCHv4E7g/viewform

Photo: Yosuke Torii