昭島市議会、GLP昭島プロジェクトで一般質問① 市側「市民の側に立って企業に対峙する」

 3月3日に昭島市議会の2022年第1回定例会の一般質問が開かれた。前日の各会派の代表質問に続き、議員が個別に実施する一般質問においても、昭島駅北側の開発計画についての質疑が行われた。

 議員からは「世界を挙げて取り組んでいる気候変動、気候危機対策に完全に逆行する開発」「市長の長年の行政経験を最大限いかして、全力で私たちの先頭に立ってこの問題に取り組んでほしい」といった質問が出た。

 これに対して市側は「広大の緑がある市の中心拠点の開けた場所に物流センターができた場合の、交通量の増加や緑の喪失に大変危惧している。市民のみなさんの不安も大変理解する」とした上で、「市の姿勢は変わることなく市民の側に立って企業に対峙していきたいと思っている」と述べ、開発事業者である日本GLPと協議に臨む姿勢を示した。

■計画実行で「まちの分断」「陸の孤島」を懸念

 今回のnoteでは、一般質問に立った、みらいネットワークの青山秀雄議員の質問を以下に示す。まずは最初の2つのカギかっこは質問に入る前の議員の問題意識である。

 「『水と緑』は、昭島市民の誰もが市の誇りであり自慢に思う、共通認識になっている。緑がまとまってある昭島駅北側の昭和飛行機工業株式会社の私有地が売却され、その貴重な緑の中に関東一の物流センターが建設されるという。過日、開発計画の説明会が日本GLPにより開催され、私も参加したが大きな衝撃を受けた」

 「世界を挙げての取り組みである気候変動、気候危機対策に完全に逆行する開発であることも説明会で明らかになった。説明会以降は特に多くの声が寄せられ、今議会でも質問をすることを知った市民から手紙や電話が届いている。寄せられた声やアンケート結果一つ一つを私たちの会派で議論し、大きく変化する計画地周辺の住環境への変化、市民への影響等々、計画地周辺の調査もしてきた。交通渋滞や激変する住環境、まちの分断・破壊。計画が実行されれば、『陸の孤島』になってしまうのではという声もあった。民間の所有地計画であっても、市民・住民の福祉の向上を基本的な前提として、昭島市民の声を代弁して質問に入りたい」

■「代官山緑地にはタヌキやアナグマなどが生息」

 質問と答弁について、ここでは読者に理解していただきやすいよう、議員の質問に対して、市の都市計画部長の答弁を続けるQ&A形式に編集した。(※議会の議事録は5月下旬に市の会議録検索システムにアップされるという)

Q=青山議員:現在の昭島市の緑地面積計画地の緑地面積 緑地率について問う。

A=都市計画部長:緑地面積等については東京都が実施した平成31年(2019年)調査によると、昭島市の緑率は41.1%面積は約7.13平方キロメートルであり、(GLP昭島プロジェクトの)計画地全体の緑率は不明だが、昭和の森ゴルフコースの面積が約0.56平方キロメートルであり、緑率に換算すると約3.2%となる。

Q=青山議員計画地の樹木数樹木の種類、計画地に面する玉川上水の延長について問う。

A=都市計画部長:計画地内の代官山緑地と昭和の森ゴルフコースの主な樹木としてアカマツ、コナラ、クヌギなどが生息し、その本数については把握していない。計画地が玉川上水に面する延長は約1.5キロメートルとなる。

Q=青山議員計画地に住む生物等について問う。

A=都市計画部長:代官山緑地にはタヌキやアナグマなどの哺乳類をはじめ、オオタカなどの猛禽類シジュウカラやヤマガラなどの鳥類蝶やセミなどの昆虫類が生息していると認識している。

Q=青山議員:物流センター、データセンターの高さを玉川上水の遊歩道から見えない高さにして景観を保つよう問う

A=都市計画部長:玉川上水は東京都の景観計画において、景観基本軸とされており、その中心から両側それぞれ100メートル以内を対象区域とし、建築物の配置や高さ、規模、および形態、意匠等についての景観形成基準が設けられている。この景観形成基準に照らし、良好な景観の維持を求めていく

Q=青山議員:計画地周辺の主要道路の混雑はこれまで以上に増える懸念から交通量調査について問う。

A=都市計画部長東京都環境影響評価条例に基づき開発事業者において調査が行われることとなる。

Q=青山議員:交通渋滞が発生しているつつじが丘周辺のさらなる混雑は必至だ。(物流施設の)大型車・普通車が生活道路に入らないよう配慮をしてもらいたい。はなみずき道路(市道昭島37号)はこども園があり、自転車も多く、安全上から周辺住民の専用道路にできないかと問う。代替案として計画地の南側の諏訪松中通り(市道昭島16号)交差点から西側のはなみずき通り交差点、そして昭島駅北側のつつじが丘通りまでの道路を拡張を問う。

A=都市計画部長:市道昭島16号、市道昭島37号への車両の流入を防ぎ、代替路としての市道北146号の拡幅に関すること、および物流関係車両の通行ルートについては、開発事業者の調査、予測内容を注視、検証を行い、また交通管理者等の意見をうかがい東京都環境影響評価条例に基づく手続きなどにおいて、適宜対応していきたい。

Q=青山議員:GLPの説明会は開催されたが、周辺住民への十分な周知にはなっていないと聞いている。今後いかに周知徹底し、情報を共有するかを問う。

A=都市計画部長:開発事業についての周知については、(GLPが)本年2月に開催した説明会の周知は、一定の範囲内の建物へのポスティングのほか新聞6紙への折り込みや、計画地周辺の自治会の掲示板の掲示などにより周知を図ったとうかがっている。今後の説明会の開催等にあたっては、広報あきしまの活用の検討等を含め周知徹底が図られるよう開発事業者に求めていく。

■「まちの中心に物流施設」「冷酷な対応ではないか」

 1回目の答弁が終わり、青山議員は2回目の質問に入った。青山議員は昭島市の過去を振り返りつつ、「市民にとって昭島駅北側とはどのような存在なのか」を述べていく。

 「1981年につつじが丘ハイツの住宅公団が完成し、つつじが丘南小学校(2016年統廃合、現在はアキシマエンシス)、瑞雲中学校も開校し、1982年にはつつじが丘北小学校(現・つつじが丘小学校)、昭島市民会館、公民館が開館、1983年には昭島駅が橋上化され、南北自由通路の完成、1984年には北側に大型商業施設が開店し、北口周辺はこのことによって大きく大きく変わったと思っている。
 そして、平成10年(1998年)にはホテル、(フォレスト・イン)昭和館などもオープンした。北側のまちの発展は昭島市の協力なくしては、北側の林や森を想像するとできなかったと思っている。そう思うと今回の昭和飛行機側の所有地売却の件、私企業の誘致であっても昭島市周辺住民への冷酷な対応ではないか昭島市のまちの中心、緑の中心に巨大物流データセンター施設の建設。地方の畑や田んぼ、住宅のない場所とは全く違う今回の私たち昭島市の昭島駅北側緑の中心である私たち議会はもちろん、市長も行政の担いとして27年という行政経験という説明もあったが、これらの経験を最大限いかして全力で私たちの先頭に立ってこの問題に取り組んでほしい。あらためて市長の見解をおうかがいする」

 この質問に対し、臼井伸介市長が答弁に立たず、代わりに都市計画部長が答弁した。ただ、内容としては「市に先頭に立ってもらいたいと、市民の気持ちを受け止めということで市の見解を改めてということで、本市としても大規模開発、広大の緑がある市の中心拠点の開けた場所に物流センターができれば、交通量の増加や緑の喪失を大変危惧している。市民のみなさんの不安も大変理解するところである。そうしたことから企業に対して、早めに市民説明をして、計画が固まる前に市民説明をして市民の意見をくんで、なるべく計画に反映させるよう求めてきた市の姿勢は変わることなく市民の側に立って企業に対峙していきたいと思っている」と、市としての本事業に対する強い姿勢を示した。

■「今後もっともっと問題点が指摘される」

以下は青山議員と質問と都市計画部長の答弁を一問一答形式に編集して、読者に読みやすいようにまとめた。

Q=青山議員:なぜこれまこの土地はゴルフ場開発の時も準工業地域とし、そのままに今日まで置かれてきたのか。市街地調整区域に指定しなかったのか。市として特別な理由でもあったのか。

A=都市計画部長:この土地については、飛行機工場として利用されていた。恒常的に土地利用されていたため、準工業地域という用途地域がついている。工場として利用されなくなったからといって、準工業地域をすぐにダウンゾーニングするかというと、土地の所有者の意向、権利もあり、現状のまま地区計画をかけることもなく、現在に至っているところである。

Q=青山議員:緑の面積の確保について、都市開発の観点からあれだけ広大な面積なので、それ(条例)を超えて緑を確保すべきと思うが。

A=都市計画部長少しでも緑を確保すべきという考えは、昭島市としても同様に考えている。まだ現時点では、計画概要の説明を受けたにすぎないが、計画検討が進む中で、都市計画の中での地区計画の策定等を事業者と協議しておく必要が出てくるとかと思っている。そうした中において、例えば立川基地跡地昭島地区では緑率を都条例よりプラスして設定している。そういったことを含めて、より多くの緑を確保されるよう事業者に働き掛け協議をしていきたいと考えている。

Q=青山議員:(日本GLPが説明会で示した概要の図をパネルで示し)ここに公園として整備することを示す緑が点々とあり、小さい。小さい公園が(計画地の)端っこにあるということで本当に良いのか。道路に面してもっと大きな公園に集約すべきだと思う。

A=都市計画部長:公園については、(大規模)開発において事業地面積の6%という形になっている。今回の場合は代官山の緑地を除いて6%以上確保という形になる。いま示されている絵が何パーセントあるのかまでは把握していないが、公園の配置についても有効な配置についても、事業者の考えを聞きながら市民の声を聞きながら、事業者と協議をしていきたいと考えている。

Q=青山議員緑のネットワーク(計画では公園や広場等を配置し、玉川上水沿いと代官山緑地のネットワークを創出するとしている)、散歩・散策ができるようにすると図面にあるが、果たして本当に市民のみなさんがコンクリート、巨大な建物の間にわずかに残った緑があるからとそこに散策に出かけるかどうか、非常に疑問がある。そういう面でも私は、この計画があまりにも取って付けたような私たちの目くらましをしているようなことになっていると私自身は思っている。

A=都市計画部長:緑のネットワークについて、玉川上水沿いの散策については、計画概要では幅員等も示されていない周りの計画の建物も何メートル離れて何階建てというのも分からない。そのため今後の東京都環境基本計画に基づく環境配慮はどうなっているかとかを含め、またネットワークとしての幅員をどれだけ考えているのかをトータルでうかがいながら、事業者と協議していきたい。玉川上水沿いの散策路自体は大変良い考えだと思いますので、それがみなさんに親しまれるような形に事業者と協議していきたいと思っている。

Q=青山議員:この会社側が作る計画地への(新設)道路も、私たちの昭島市民の道路ではないという風に、誰が見てもそう思うのではないか。ここを見てきたが、(物流施設の)西側の出入り口はアウトドアヴィレッジの出入り口になっている。そしてすぐ西側手前には信号機がある。ここにはおそらく交通管理者として信号は付けられないと思うが、どうするのか。事業者の計画道路を昭島市が譲り受けるべきではないと思う。ここには大型トラックが1日1,200台、大型以下のトラックが1日4,700台、毎日ここを通るとなると、道路の損傷や下水道施設の損傷が激しいのではないか。この道路を昭島市が譲り受ければその分、負担も増えるとこのように思う私道にしておくべきだと思う。私道でも昭島市がお金を出さないわけにはいかないかもしれないが、私道として置いておくべきではないかと思う。

A=都市計画部長:開発道路の専権についてだが、西側の取り付けがどうなのかというのは、開発道路は警視庁協議や開発の協議がまだで、あくまで事業者の考えが示されただけだ。今後の警視庁協議によって専権については変わる可能性はあり得ると考えている。

Q=青山議員:(別の説明図を示し)これが事業者から説明があった大型車と大型以下のルートである。つつじが丘団地がここにあり、この中を通るルートを無くして、その周辺の道路を拡幅しなければ。諏訪松中通りを含めて、はなみずき通りの北側、五日市街道、国道16号、拝島駅の北側は常に渋滞している。否応なしにここでは渋滞が、今以上に発生するのは必至だ。ここはしっかり道路の拡幅を行わなければ、昭島市ではこれからもっと日常的な渋滞が発生するのではないか。拡幅についても再度問う。拡幅の申請をして実現するまでに、どれぐらいかかるのかを併せて聞かせてほしい。この計画が実行されれば、即刻、いやその前にも拡幅は申請すべきだと思う。

A=都市計画部長:つつじが丘道路、周辺道路が混雑しているのは市としても認識している。道路の拡幅については、道路はネットワークであり一カ所を広げればそれで解決するわけではないと思うので、交通処理のプロの考えも聞きながら、交通量調査結果を踏まえながら、なるべく開発にかかる影響がない方法をいろいろな関係機関と相談し、事業者と協議していきたいと思っている。

Q=青山議員:また懸念されるのは、緊急自動車などの本当に緊急を要する時に、市民の安全対策をどのように考えているのか。

A=都市計画部長:緊急車両への影響だが、現在でも渋滞している中でこれ以上の交通渋滞が発生した場合に、緊急車両に影響出るような開発計画では本当に困るのでそういったことがないように、今後の環境影響評価を見ながら市として意見を申し述べていく。

Q=青山議員:諏訪松中通りの立川方面にも踏切がある。この周辺はこの計画が実行されれば、とんでもない住環境の変化になるのは間違いないというふうに思う。まだ市民への説明がされて間もない段階ではあるが、今後もっともっと問題点が指摘されると思う。昭島市も広報などを通して周知徹底、情報共有図りたいということなので、そこは安心しているが、(情報共有は)細かく繰り返していっていほしい。

A=都市計画部長:市民の意見に応えてほしいということについて、開発事業者には説明会の報告のみならず、たとえば問い合わせがあったらその報告を毎日ではないが、ある程度まとまって報告するようにということも求めている。なるべく市としてしっかり市民の意見を吸い上げた中で、市民の思いに応えた対応をしていきたいと思っている。


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