遺跡発掘ギャル円形脱毛日和

大寒の名には及ばないがやはり肌寒い朝の目覚めであった、

タートルネックを亀のごとくたくしあげ九時に町田のデニーズにて遺跡発掘のバイトの面接。

朝のファミレスなんて化粧のはがれた顔でしかいったことがなかったのだが、さぁっと晴れたような広々とした空間と、何気ないコーヒーとトースト、ゆで卵が妙に気に入ってしまった。

ときたまコーヒーをつぎにくるウェイトレスと、簡単なボックス席、新聞、しんと寒さを感じてまばたきすると、くもりぞらのはずの窓から一粒の雪、みるみるうちにここはナイアガラの滝そばのしなびたダイナーである。わたしはまだカナダに未練があるようだ。

オペラ好きのひげのおじさん、一目みてそして二言はなして気に入った、わたしはしばらくおじさんのもとでスコップ片手に働くことにした。

上機嫌のわたしは、ヨドバシカメラで店員さんをつかまえて買う気もないパソコンのコーナーを散策、近頃のパソコンは進化しているなぁとうなづきながら外に出ると、途上国の支援団体につかまる。

滑舌の悪い大学生のおにいちゃんがベンチコートをきてがんばっているのをみると、なんだか彼にこそ月1000円をあげてもいいような気になり、赤い羽根募金以来の寄付をしてみる。

よくよくきくと毎月の引き落とし制、さらに申し込みから2か月後に開始で初月は二千円抜かれるとのこと。

わたしのいま寄付してみようと思った気持ちのこもったお金ではないお金がいなくなるらしい。

未来の引き落とされ待ちのお金たちにもその気持ちがあるだろうか。そう願いたい。

その後109のギャルショップにおもむき、ショートカットのかわいい店員さんに買いもしないのに服を選んでもらいファッションショーを開催していた。

まさかのブラジャー忘れで持ってきてもらったタイトセーターが風呂上がりのおばあちゃんシルエットであるが気にしない。

ウロウロついて、古着屋を何軒かひやかし、帰路。

家に帰ってきのうの残りのドライカレーを食べる。

夕方にはとうとう嫌気がさして自分でざく切りにしてしまった髪を切ってもらうために、もう高校生から通っている美容師さんの元へ向かう。

緑園都市は、わたしの高校があった駅だ。

二俣川でいずみの線に乗り換えると、ふっとそのときの光景が、よみがえりそうで、しかしそれはひどく外見を気にしていた過去の自分や、スカートの短い苦手な女子グループの大群であったりして、ああわたしはいま高校生じゃなくてよかったなぁ、とおもう。

なんだかんだ美容室をかえようといつも悪戦苦闘して、わたしは結局いつもここにもどってきて、そのさまざまな遍歴をたどってぼろぼろになった髪をもとのわたしのものに戻してもらう。

この関係はなんとも、都合のいい元カレのようでもあり、昭和の貞淑な女房のようでもある。

また坊主にしてもいいとおもっていたぐらい短くしようとおもっていたのだがなんと美容師氏ひとこと、円形あるよ!とのこと、エッ!と鏡をみると、見事に500円玉くらいのはげができている。

じぶんでも驚くくらいへぇ~とひとごとのように思える、が、ロングヘア時代の頭皮のかんじたことのないストレスにおそらく毛も抜け落ちたのだろう。

気にしないでおこうと思う。

結局、ハゲの目立たないくらいぎりぎりのショートカットにしてもらう。

帰り道で星形のピアスと、紫の口紅と、青のアイライナー、ピンクのマニキュアを買う。

ショートカットにしたら、いままで抑えてきたかわいいものほしい心が舞い戻ってきた。

なんだか、うれしくなりふたたびの帰路、

冷蔵庫の残り物つっこみカレーをつくり、家族4人、のち先週ひとりぐらしをはじめたはずの次男坊が加わり5人で飯。

ヘアゴムが不要になったのでじゃま妹の髪を上にくくってさぁパイナップルヘアーだよ、というときょう靴下もパイナップルなんだけど!となぜか笑いころげている妹、なにがおかしいのか、とにかく笑い上戸のパイナップル娘である。

その後なにかの単語をクリーンパンツドアと聞き間違えたパイナップル娘のことばからはじまり、

ドアにつるしておいたらパンツが洗ってあるのっていいよね、から自動できれいになるパンツの制作方法やらを話しつつ箸を転がしつつ憩う。

わたしは家族といっしょのときにいちばんくだらない話ができて、あく抜きというのか、頭のバブル抜きというのか、そういうのができてほんとうにありがたい。

屁をこいてはけらけら笑っている母である。

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