思い出しかない(短歌25首)
列島のかたちのクッキーまっさきに折れる場所にてささくれを剥ぐ
縞模様すらも幼いすいか蹴り唄う車上荒らしの三人
もう君もかじめを燃やす年齢なんだ山羊の臭いのコートで扇いで
石段の地蔵に雲丹の殻捧ぐ 暗くて入口もない静脈
公立と私立の溝など知りもせずジュースの上にパンツを乗せる
吸い込んだ北風をニューバランスが吐き出す鞴となって、助走
はじめての九蓮宝燈よびさます黄金の晴朗わびしかるらむ
三千年飽きててごめんモーゼから届いた手紙のナブラぶくぶく
スマップを卒業式で弾いたのは車が自慢の俺じゃないよね
火球の灯清められゆく黄道を電動車椅子の速さで
丹毒に炭酸水は効かないとブラジャー褒めるついでに聞かす
いってみて 台北 違う首都じゃなく私のことを守ると言って
箒では掃けないほどの思い出がどら焼きみたいに作った餃子
でたらめな家紋を描く カービィがパンジーの花吸い込んでいる
入墨のまっさらな乳首抓るひと蝸牛さえ煙草は避ける
竹やぶで寝ている犬を呼ぶように女に伝えるフィフティー、フィフティー
波の上ソレ雪溶けてソレ俺はガキそんな好きじゃないしソレソレ
帆立貝の八十の眼が泣いている糊を浴びつつ走る封筒
コンビニにいちごのジュースがない理由と化粧を隠す仕草が似ている
0の奥 競走馬でも悼むような牧師の顔で睨む通帳
隕石に瞳があったらいつだって靴を見てるんだろう俺もだ
天啓を針金になって浴びている すぐ段ボールのひだに隠れろ
家系図を六親等は遡るエコノミックな銃を撃ちたい
うすはりの水平線を跨ぎ来るどこを蹴っても笑ったエルモ
ただ町に生きて机も買ったのに車で事故った思い出しかない
サポートをいただけるとキュウリ見つけた猫くらいジャンプします。