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配信プラットフォームへのフリーライドの危険性

僕はミュージシャンであり、ライブハウスさんの配信サポートを行う立場でもあるので、マネタイズ(収益化)は避けては通れない。

表現の場を維持するには、ライブハウスさんに収益を上げていただく必要があるし、出演ミュージシャンの人がきちんとギャラを取れる環境を確保する必要がある。

「IT 的」にはそれほど難しいことではない。配信プラットフォームは既存のものを使用する以外選択肢はないし、マネタイズ方式にしても「IT 的」には、個々のチケット購入お客様向けに個別の URL を発行し、同時アクセス制御で「ログイン」操作不要の環境を用意する、といったこともさほど難しい話ではない。

最大の問題は権利関係だ。

1)配信プラットフォームとの利益相反

ご存じの通り、たとえば、youtube を使って「正式に」マネタイズをしようとしたら、「チャンネル登録者数1000人以上、年間再生数4000時間以上」なければ、スーパーチャットの投げ銭を含め、正式には行えない

それ以外の方法、たとえば別サイトでチケットを販売するなど、でマネタイズすることについては、現状 youtube 側(google 側)も静観の構えだが、今後いつ梯子を外されるかわからない状況だ。

最近よく見かける「youtube や ツイキャスといった既存配信プラットフォームの限定公開サイトを個別のURLに埋め込み、それ経由で見せる」方法は、大変危い。配信プラットフォームとの利益相反があるからだ(手数料などの収益を取る部分を、横からかすめ取るようなものだから)。
いつ梯子を外されるかわからないし、規約違反によるアカウント/チャンネル利用停止の可能性も否定できないし、下手をすると損害賠償請求の可能性さえある(そんな少額で google が裁判を起こすとは思えないけどね)。

2)著作権

もう1つは、著作権だ。

僕ら(マグネッツ)のように全曲オリジナルなら問題はないだろうけど、カヴァー曲で収益を得ようとしている場合は問題になる。今後 JASRAC なんかもネット配信に対する徴収に今よりさらに力を入れてくるだろうしね。
JASRAC やその他著作権管理団体と契約しているライブハウスさんが配信する場合でも、視聴者の対象が異なるので、著作権管理団体がどのように言って来るかは現状ではまだまだ不明だ。

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ツール選択を考えると、結論的に、「チケット販売によるマネタイズ」を重視するなら、「プレミア配信」が利用できるツイキャス以外選択肢はないだろう。ただし、その場合、

■ RTMP URL が指定できるツールで配信する必要があるため、たとえば ATEM Mini Pro を使った「PCレス配信」は不可能。マスター1人体制のライブハウスで OBS などの PC ツールを使用した配信はかなり困難。

■ youtube と比べて普及率が高いとは言えないアプリをインストールしてもらい、ユーザー登録をしてもらう、といった手間を観客に強いることになる。

といった欠点がある。

逆に、youtube を使った場合は、その普及率の高さやプラットフォームの安定度というメリットを享受できるが、

■ チケット販売や限定配信ムービー埋め込みを利用した個別URLでの販売は利用規約違反に問われる可能性がある。

という大きな壁がある。

著作権に関しては、どちらの場合も高いハードルとなる可能性があるよね。

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結論として、僕は配信ライブは、視聴者からのボランタリーによるチップ以外は考えられないと思う。

配信プラットフォームとの利益相反による危険性もあるし、配信には通信トラブルが付き物。ライブ視聴料としての直接徴収は危険だと思う。

僕は「リスナー専門」歴が長いからよくわかるけど、ホールを常にいっぱいにしているミュージシャンでない限り、ライブに行ったり配信を見たりする人は、そのミュージシャンを応援したい、と思ってる。

投げ銭をしようなんて思ってくれる人は、特にそういう気持ちが大きい。
そういう人達を対象とするなら、URL プロテクトなんて不要だ。

お店やミュージシャンを応援する気持ちをチップの形で表現してもらえて、お店やミュージシャンから返礼ができる方式について、ある程度カタチができてきたので、また次にでも書こうと思う。


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