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【競馬】NHKマイルカップを考察する

NHKマイルカップは日本のG1レースの中でも特に荒れやすいレースの一つである。平気で1番人気が飛ぶわ10番人気以下の伏兵が突然好走して波乱を演出してくるわで中途半端に手を出すと痛手を負う可能性が高いレースだ。
なので今回はNHKマイルカップ(以下NHKマイル)で少しでも的中率を上げるために、このレースを考察して行きたいと思う。

1.NHKマイルの特徴

まず簡単にこのレースの特徴を紹介したいと思う。舞台は東京競馬場の芝1600mコース。同じ舞台で行われるレースといえば安田記念などがあるが安田記念と違いNHKマイルは3歳限定戦のレースである。3歳限定戦のG1は他に6つあり主に牡馬は皐月賞、日本ダービー、菊花賞の三冠レースを、牝馬は桜花賞、オークス、秋華賞の牝馬三冠レースを目指すこととなる。そしてそのどちらにも属さないのがこのNHKマイルだ。ちなみに東京芝1600コースは枠順の有利不利がそこまでないコースであり、枠順そのものよりもそれによって変化する展開や馬場状況を考える方が重要だろう。

2.NHKマイルに出走する馬のタイプと買うべき馬

前述したようにNHKマイルは3歳限定戦のレースでありながら牡馬牝馬3冠レースとは一線を画してるので世代上位の馬はまず出走してこない。これがNHKマイルが荒れやすい要因の一つにもなっている。しかし中には実力がありながらダービーやオークスを目指さずにここに狙いを定めてくる馬も存在する。そこでまずはNHKマイルに出走してくる馬をいくつかのタイプに分けたいと思う。

①マイルが距離適性で、ここを目標に出走してくる馬

3歳のマイルG1は牝馬限定の桜花賞とNHKマイルの2つであるため、マイラーの馬は大抵この2つのレースを目標に仕上げていくこととなる。牝馬の場合は桜花賞を大目標にすることが多いが牡馬の場合はマイルのG1が3冠レースの中に組み込まれていないため、NHKマイルを大目標に掲げて春は前哨戦のレースに出走するか、賞金的に余裕があれば年明けは全く走らずに2歳G1などから直行で参戦していくことになる。このパターンの馬はハナからクラシックを諦めて得意舞台に狙いを定めているためにローテーションにゆとりをもたせている場合が多く、また確実に勝つために100%の仕上げで臨むことが多いために期待値は高い。しかしその反面、重賞での好走実績のある馬は人気になりやすいために馬券的には妙味が薄いことが多い。

②皐月賞、桜花賞からのローテで出走してくる馬

クラシック1冠目である皐月賞と桜花賞、大抵の馬は次走をダービーもしくはオークスに定める訳だがこの2つのレースはどちらも2400mの中距離戦であるため、明らかに距離が持たないと考えられる馬などは次走をNHKマイルに定めることが多い。しかしこのパターンの馬は出走経緯がそれぞれ分かれるためにさらに数パターンに分類する必要がある。

 A、桜花賞、皐月賞で好走したが距離適性を考えてNHKマイルに出走してくる馬
 B、桜花賞で好走できず、距離適性を考えてNHKマイルに出走してくる馬
 C、皐月賞で好走できず、距離適性を考えてNHKマイルに出走してくる馬
 D、桜花賞、皐月賞で好走できずオークス、ダービーの出走権を取れなかったために仕方なくNHKマイルに出走してくる馬

Aパターンの馬
このタイプの馬はすでに実績を残しているため人気になりやすく、馬券的な妙味は少ない。またハナからオークス、ダービーを狙っていないためそれぞれ桜花賞、皐月賞に向けて仕上げている場合が多く、そこから中1,2週で臨むNHKマイルではかなり厳しい戦いを強いられることとなる。とはいえ過去10年のデータを見ると成績的にはかなりいい方で、前走掲示板に載った馬はその多くがNHKマイルでも好走している。このパターンの馬は妙味こそ低いが軸に選ぶには最適。しかし中には人気を背負って飛んでいる馬もいるので必ずしも鉄板というわけではない。

Bパターンの馬
桜花賞はマイルG1ということもありマイラーの牝馬は当然ここを目標にしてくるわけだが、牝馬3冠のうちの1つのレースでもあるために世代の中での実力馬もこのレースに出走してくることとなる。過去の桜花賞馬は全てが生粋のマイラーというわけではなく、逆に生粋のマイラーだとしても能力が足りないと結果を出せず惨敗してしまうことも多い。なのでそういう馬が次走NHKマイルに出走してきても当然結果は出せないことがほとんどである。とはいえ桜花賞で惨敗=NHKマイルでも必ず惨敗、というわけではなく桜花賞では結果を出せなかったが一点NHKマイルでは好走した馬も過去には存在する。(例:2021年のソングライン)このパターンの馬は前走時不利を受けていたり展開が向かなかったりして好走できなかったものの実力はある馬だった、というパターンが多いので前走桜花賞惨敗組はレース内容をキチンと見直して「なぜ負けたのか」を探ることが重要である。また、桜花賞は西の阪神競馬場、NHKマイルは東の東京競馬場でそれぞれ行われるため「桜花賞は輸送の影響で崩れたがNHKマイルは万全の状態で臨めた」といったパターンも考えられる。そのためパターンBの中に関東馬がいたらこうした可能性を考慮してみるのもいいだろう。

Cパターンの馬
牝馬の世代限定戦レースはそのほとんどがマイル前後のレースであり3歳春の時点で2000mを超えるレースはオークスとフローラSだけである。対して牡馬のほうはマイルから2000m前後のレースまで(牝馬限定レースと比べると)幅広い距離のレースがありクラシック開幕までそれぞれのレースで別々の馬がしのぎを削ることとなる。そのため層の薄いレースでは本来中距離適性のない馬が好走してしまい皐月賞に出走してくるパターンも時々見られる。(例:2016年ロードクエスト→スプリングSから皐月賞参戦して8着。のちにマイル重賞で活躍)このパターンの馬は皐月賞を実際走ってみて中長距離の適性がないことに気づきNHKマイルに方向を変えてくる場合が多いが実際のところ皐月賞で惨敗した馬がNHKマイルで巻き返すパターンは少なく、過去10年で皐月賞6着以下でNHKマイルで馬券に絡んだのは前述のロードクエストだけである。前走で不利を受けていた馬などはともかく実力のある馬は多少適正外の距離でもそれなりに好走できるので「距離適正外の皐月賞惨敗→NHKマイルで巻き返し」のパターンはあまり狙わないほうが良いだろう。

Dパターンの馬

このパターンの馬は能力が低く、ワンチャン狙いで出走してきている場合がほとんどなのでまず軽視でよい。稀に超人気薄で好走してくる馬もいるがそうした馬をピンポイントで狙うことはかなり難しく、またその可能性を考慮すると買い目がかなり増えてしまうのでこのパターンに該当する馬はよほどの買い要素がない限りは切りで良いと思う。

③クラシックを目指していたが、途中でマイル路線にシフトしてきた馬

2021年のNHKマイル勝ち馬シュネルマイスターなどがこのパターンに該当する。同馬は弥生賞2着からNHKマイルに出走し見事勝ち星を得たが、弥生賞後に皐月賞に向かわずにここに目標を変えてきたのは弥生賞の結果で距離の壁を感じたからである。この馬のように途中まではクラシックを目指してトライアルレースなどを走っていたが距離適性を考えNHKマイルに狙いを変える馬も時折存在する。このパターンの馬は買える・買えないの差が明確で、距離適性外の重賞レースでもそれなりに好走した馬は「買い」で、それ以外は「消し」でよい。

④ダート路線から出走してくる馬

ダートで1勝クラスやOP戦などを勝ち賞金を積んでここに出走してくる馬も毎年1,2頭存在する。しかしこのパターンの馬はそもそもダートが適性で芝は不得意な馬がほとんどなためまず切っても良いだろう。雨などの影響で馬場が荒れるとこうした馬に色気を出してしまう馬券購入者も少なからずいるが、点数が無駄に増えるだけなのでいくら馬場が荒れようと手を出してはいけない。

⑤デビューが3歳春で、ギリギリ間に合って出走してくる馬

多くの馬は2歳時にデビューし競走馬としての人生を始めるが、何らかの事情があってデビューが遅れてしまった馬は3歳春以降にデビューすることとなる。そこから新馬戦や未勝利戦を勝ち、抽選を潜り抜けた馬が1、2頭出走してくるパターンだが、このパターンの馬はそもそも競走馬としての能力やレースにおける力の出し方などが幼いままであることが多いためまず買わなくて良い。レースや調教でよほど抜けたパフォーマンスを見せている場合でも調教師やジョッキーのコメントを見て幼さを見せたりしていないかを探り、少しでもそうした気配を見せていれば見送ることが賢明だろう。


というわけで出走馬をいくつかのパターンに分けてみたがこのパターンの中で一番に買うべき馬は②のAパターンの馬である。ここに該当する馬は過去の傾向を見ても馬券に絡んでくる確率がかなり高いため、いわゆる「買える人気馬」として軸に選びやすくなる。しかしそのすべてが勝ち切っているわけではなく人気に押されながらも2,3着に負けている場合も多いため単勝や馬単3連単の頭固定などではなく連系馬券の軸にして手堅く当てに行くか、あえて2,3着固定にして頭には別の馬を置くなどして高配当を狙うほうが良いだろう。そして相手に選ぶべきは①の馬と③の馬、そして②のBパターンの馬の中で買える要素を見いだせる馬である。それ以外のパターンに該当する馬はバッサリ切ってしまうほうが良いだろう。

3.NHKマイルで買うべきジョッキー

日本のG1レースはリーディング上位のジョッキーが勝つパターンが多く、そのため毎回のように同じジョッキーがG1で人気になり、逆にG1に縁のないジョッキーはそれなりにいい馬に乗っていても人気になりずらい傾向にある。しかしこのNHKマイルというレースは過去幾人ものジョッキーが「G1初勝利」を経験したレースであり、このレースの関してはむしろ人気になりにくいリーディング下位のジョッキーやG1未勝利のジョッキーを積極的に狙っていける数少ないG1レースなのだ(とはいえただ該当するジョッキーの乗る馬を選べばいいというわけではなくあくまで「勝ち負けできる能力を秘めている馬に乗っている」という条件付きであるが)。しかし力のあるジョッキーが力のある馬に乗っている場合は当然そちらの方が期待値は高いのでリーディング上位のジョッキーをすべて敬遠するわけでなくジョッキーで過剰人気している馬を軽視する、という考え方で買い目を考えるのが最も良いだろう。

ちなみにNHKマイルで初G1勝利をものにしたジョッキーの例を記すと
・藤岡康太
・藤岡佑介
・勝浦正樹
・内田博幸
などがいる。上記のジョッキーのうちその後もG1勝利を手にできたのは内田博幸ジョッキーだけでありそのほかのジョッキーがG1であまり活躍できていないところを見るとNHKマイルというレースではジョッキーのキャリアや実績はあまり重視する必要がないことが分かるだろう。

4.NHKマイルで買うべき種牡馬

過去10年ではダイワメジャー産駒が3勝、ディープインパクト産駒とクロフネ産駒がそれぞれ2勝ずつしている。ディープインパクト産駒の馬は同コースでもやはり安定した成績を残しており特に敬遠する理由もないだろう。同じようにマイル戦に強いダイワメジャー産駒も安定した戦績を残している。2020年には現役時代に安田記念を制したリアルインパクトの産駒であるラウダシオンがNHKマイルを勝利したことからも基本的にはマイルで活躍した馬の産駒+ディープインパクト産駒の馬をプラスの評価で見るのが良いだろう。とはいえどちらかといえば長距離に向きそうなタイプの血統馬や外国産馬なども馬券に絡んできているため血統はあくまで参考程度に評価を行い重視しすぎないほうが良いと思う。

5.最終結論(結局のところどんな馬を買えばよいのか)

ここまで長々と考察をしてきたが結局のところ買うべき馬の結論は以下の通りだ(優先順位は上から順に)

①桜花賞、皐月賞で掲示板に載った馬(軸に選ぶならここから)
②クラシックのトライアルレースなどで好走した馬
③マイル路線の重賞、オープン特別やリステッドでの好走実績がある馬

これだけだと範囲がかなり広いが「このレースで勝った馬は絶対に買い」というようなレースは存在せず、むしろ前走で負けている馬がNHKマイルでは勝ったりすることもあるのでデータだけで絞れる範囲はここまでだろう。なのでここに書いた前提条件をもとにして出走馬のレースや調子を見て買い目を判断していくことにしたいと思う。余力があれば2022年のNHKマイルの予想を次回は書き留めようと思う。

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