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26歳になった君へ

君が私の名前を呼ばなくなって、10年が経った。


あの日君を突き離したこと、今も後悔してる。


この10年、私の人生は大きく変わったよ。
2人分の人生を背負ったんだと思う。


「君の分まで頑張らなきゃ」


そんな気も知らないで君は
最近笑い方を覚えた赤子みたいに顔をくしゃっとする。

君に会うと社会や責任に囚われすぎていたことに毎回気付かされる。
でもそれはすごくしんどいことなんだ。


君と会った後は必ず『いつもの川』に足を浸けにいく。
君から流れてきた現実や純粋さや、やるせなさをその川に流しに行ってたんだ。
そうでもしないと、この汚い絶望の社会で
生きていくことはできなかったからね。


きれいな君には分からないだろうけど、世の中は白と黒だけじゃないんだ。
知られていないだけの、限りなく黒に近いグレーが存在する。
それを知ったうえで、それでも、希望をもって
生きなきゃいけないんだ。


たまにやめたくなることもあるよ。


でも信じたいんだと思う。



最近、やっと「人にやさしくすること」の本当の意味を知ったんだ。
たくさんの別れと引き換えにね。
毎日忙しくて寝る暇もないけど、人生で今が1番楽しくて充実してる。
今なら君と会っても『いつもの川』に行かなくて済みそうだ。


どうして急にこんな手紙を送ったかというと、
すっかり忘れてたんよ。
君の誕生日。もう1週間も過ぎてる。
例の如く、君はギャーギャー喚いて私を困らせるんやろうな。
お詫びに手袋でも準備しとくよ。
前に君のお母さんからクリスマスプレゼントに
手袋をもらったから、今度は私から君に贈ろうと思う。

10年前の君ならキャラクターものを選ぶんだろうけど、もう立派な大人だから


大人っぽいものをお揃いで選ぶつもり。



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