プロットのメモ

15pぐらいにしたい。

ある時、空崎ヒナは、自分が小鳥遊ホシノになっていることに気がついた。
小鳥遊ホシノになっている、というのは正確ではない。空崎ヒナは、自らの自我、アイデンティティを保持したまま、立場だけがアビドス高等学校3年、対策委員会委員長だった平行世界に迷い込んでしまったのだ。

そこには、空崎ヒナが望んだ平穏があった。
犯罪者同然の問題児集団も、いたずらに混沌を招こうとする為政者もそこにはいない。そもそも生徒は自分を含め5人しかいない。
何らかの事情で生徒会長は行方不明になってしまったようだが、そこは触れるべきではないとヒナ理解した。
4人の後輩たちも素直で協力的、みないい子だ。
アビドスの土地自体は自然災害や企業の干渉に晒されており、決して楽観視できる状況ではなかったが、皆で力を合わせればきっと乗り越えられるだろう。
それに、ここには先生が頻繁に様子を見に来てくれる。
かつてのように、立場やスケジュールを気にして滅多に会えないなどということはない。自由に、素直に、先生に接することができる。

空崎ヒナはかつてないほどに充実していた。
皆で協力して働き、帰りにラーメンを食べ、歌を歌い、海に行き、お時間ももらった。
そこには、幸せがあった。

「ん、ヒナ先輩は本当に強い」
「どうしたの、シロコさん」
「強くてかっこよくて、頼りになる」
「褒めても何も出ないよ」
「先輩、これを見てほしい」
なにかの見取り図を広げるシロコ
「これは……?」
「銀行強盗。先輩が来てくれたら、きっと上手くいく」

あの眼だ。
素朴で素直な後輩が、『奴ら』と同じ眼をした。

「ダメよシロコさん、強盗はダメ」
「でも先輩、このままじゃ借金が」
借金。
思い出した。アビドス高等学校は、自地区の統治が難航する過程で、莫大な借金を背負ったとどこかで聞いたことがある。先生が頻繁にアビドスを訪れるのも、思い返せばそのケアのためだろう。
空崎ヒナの決断は早かった。
後輩を、守らねばならない。

そこからのヒナの日常は苛烈を極めた。
働いて
働いて
働いて
働いて
働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて働いて

そしてある日、その砂漠で、

『あれ』を、視

ゲヘナ風紀委員会委員長、空崎ヒナはふと我に返った。なにか自分ではないものになっていた気がしたが、数秒経って、それは単なる既視感、気の所為であると結論づけた。
自分は自分、変えようがない。そうして空崎ヒナは今日も激務に向かった。

ピシッ…

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