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もしもあの時死んでいたなら

もしもあの時死んでいたなら

高い塔の上で夕陽に照らされていたあの時


もしもあの時死んでいたなら

とうとうと流れてゆく大河の流れを見つめていたあの時


もしもあの時死んでいたなら

赤い電車がけたたましく警笛を鳴らしながら近づいてきたあの時


ふと向こう側に引き込まれそうになる

引き込まれてしまったなら

それはそれでいいと思ってしまえた

あの時


一歩を踏み出すか踏みとどまるか

ほんの一瞬の

紙一重の

心のゆらぎがふと傾いて

今はここにいる


今はここにいる

それは偶然なのだろうか

それとも必然なのだろうか


もしもあの時死んでいたなら

生きることのなかった世界を

今は生きている


ゆらぐ心の平衡を

あやうく保ちながら


今は

生きている

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