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痰(たん)について真剣に考える


痰が絡む…対処法や痰の上手な出し方について ~新型コロナウイルスと痰について~





(1)痰について

気道は、加湿、クリーナー、加温の働きをもつ空気の通り道です。

これらは、いわば気道のメンテナンス機能で、これらによって気道の感染を予防したり、
痰が溜まるのを防ぎながら無菌状態を保ってくれています。

痰は気管内から異物を排出しようとする働きのひとつで、
肺の中の分泌物や、肺に入った空気中の浮遊物が粘液と混ざったものです。

呼吸器系に刺激や炎症が起きている時に出やすくなります。


痰が絡まる・溜まる原因は…
〇ウイルスなどに感染し、炎症を起こして痰が分泌されるため
〇痰のねばりが強くなると排出されにくくなり、気道に絡まったりして痰が貯留する
〇繊毛運動が鈍くなり、痰をスムーズに排出できない
〇肺の筋肉が弱まったりして呼吸運動が弱くなることで、空気の流れが低下するため
などの原因が考えられます。



↑気管支や、肺の中のガス交換を役目をもつ肺胞に空気を送る、
「呼吸細気管支」に炎症などが起こり、痰が溜まります。

その他、健康な時にも実は分泌されています。

成人の正常な痰の分泌量はおおよそ100ml程度で、痰の貯留はこれよりも多く分泌され、
かつ排出が滞ってしまう時におこります。

極端に多い場合は、何らかの疾患を抱えている可能性が高くなります。







(2)痰がたまるとなぜ悪い?

〇息を吸った時に「ヒュー、ヒュー」と音がしたときは、痰が絡まった状態です。

これは空気の通り道に痰がたまることで空気の通り道が狭くなり、
気道の抵抗が増すためで、息切れが強くなります。

〇肺の中に空気が入らなくなる状態である無気肺をおこし、酸素化能力が低下する

〇ばい菌が溜まってしまうことで、肺炎などの感染症にかかりやすくなります

〇生活の質が低下する原因となる。
(咳の症状が激しくなると疲れやすくなったり不眠に陥ることも)






(3)痰は、どんな病気のサインなの?新型コロナウイルスの感染の可能性は?

年齢や病歴により、考えられる病気は様々ですが、
以下のような病気で継続的に炎症が発生し、痰が溜まって出にくくなっている可能性があります。

〇気管支喘息
〇COPD(慢性閉塞性肺疾患)
〇新型コロナウイルスなど、肺炎にかかりやすいウイルスなどの感染症
〇気管支拡張症

〇肺結核
〇肺気腫
〇肺がん
〇誤嚥性肺炎
〇急性咽頭炎





また、気管や肺の感染症と聞いて皆さんが今一番心配なのは、
「痰が出る・・・これって新型コロナウイルスに感染したの?」という心配かと思います。

新型コロナウイルスの初期症状は咳、痰、発熱、鼻水、のどの痛み、関節痛や倦怠感といった風邪症状から、味覚障害や嗅覚障害といわれていて、
新型コロナウイルスなどの感染症の場合肺炎に陥り、痰は黄色や緑色の、粘りの強い痰が出ると言われています。

新型コロナウイルスの初期症状は
平均して5~7日程度続くと言われていますが、
重症化しない限りは自然と症状は軽快します。

しかし軽快せず重症化すると肺炎を発症し、咳、発熱、痰の排出が増え血痰がでたり、呼吸困難に陥ります。

痰の色や性状だけでは、新型コロナウイルス感染かどうかの判断は難しいので、

高齢者や糖尿病、心臓病などの基礎疾患をお持ちの方は、

なるべく早めに医療機関や地域の保健所、相談センターに相談しましょう。





(4)排痰の目的
●息切れの低減
●感染予防
●無気肺の改善
●酸素化能力の改善

日常の中でこまめに絡まった痰を出すことで、息切れ感が減って呼吸が楽になったり、気道感染を防ぐことが出来ます。

重要なのは、その人に合う上手に痰を出すコツをつかんでおくことです。

 



(5)排痰の方法、対処法  

1.体位排痰

体位排痰とは、痰を出しやすい姿勢になることで痰をのど元に集めて出す方法です。

自宅で、かつ重力を用いることで身体への負担を少なく出すことが出来ます。

痰がたまっている部分を上にする姿勢をとることで、のど元に流れ落ちてくるのを待ちます。

落ちるまで時間を要しますが、一人でもできる簡単な方法です。

どこに痰が溜まっているのか意識しながら、
次のような姿勢をとることで痰が出やすくなりますので、試してみましょう。



<肺の前側に発生した痰を出す場合>



仰向けに寝て腰のあたりにクッションなどを置き、お尻を高くして安静にします。

<肺の後ろ側に発生した痰を出す場合>

うつぶせに寝て腰のあたりにクッションなどを置き、お尻を高くして安静にします。

2.咳


3.ハッフィング
ゆっくりと息を吸い込んだ後、早く、強く息を吐くことで、痰を気道の上部に移動させる方法です。
少し多めに空気を吸い込み、声を出さずに、
「ハッ ハッ ハッ」と強く、早く、息を吐き出します。
4~5回繰り返します。
その後、咳などをして痰を出します。

4.ACBT
呼吸の大きさ(換気量)を変化させ痰の移動を促す方法です。
●呼吸を整える(3〜4回)
●深吸気運動(3〜4回)
  息を深く吸い込む
●呼吸を整える(3〜4回)
●ハッフィングを行う


5.排痰器具の使用

6.呼吸介助(スクイージング)など
呼吸介助法は、肺の中の空気の流れを利用して痰を移動させる方法です。

痰の溜まっている胸部に手をあてて、絞り出すように圧迫し、空気を吐き出す力+圧迫の力で貯留した痰を吐き出します。

最初は軽く圧迫し、少しずつ圧迫したら、最後は強く絞るように圧迫します。

一人ではできないので、家族に手伝ってもらう必要があります。

 



(6)痰の色で分かる症状  
痰を排出することができたら、色を確認しましょう。

特に体調が悪い時の痰の色は、覚えておくと気道と肺の健康のバロメーターとなります。


<痰の色で分かる症状>

白色透明:気管支炎、気管支喘息
黄色:気道の感染症
緑色又は黄緑色:緑膿菌の感染や蓄膿症
黒っぽい茶色:肺結核、肺がん
赤っぽい褐色:肺炎
鮮やかな赤:喀血




肺や気道に異常がおきていると、いつもとは違った色(黄色や黒など)の痰が出てくる可能性があります。

早めの受診につなげるために日頃から痰の色を把握しておきましょう。 




(7)最後に
痰を溜めないように日ごろからしっかりと出すように心がけましょう。

痰の性状の観察を習慣にし、感染症の早期発見に努めてはいかがでしょうか。

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