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美しいものをつくる

櫨(はぜ)という木がありまして、この木の実から採れる蝋(ろう)を「櫨蝋(はぜろう)」といいます。

その櫨蝋で作るろうそくを「櫨ろうそく」といいます。

それを手掛けというやり方で作ります。

大與の櫨ろうそくは、100%櫨蝋だけで作ります。

作り方はこれ

値段はまあまあだと思います。150mlのリンゴジュースが350円するとして、まあまあやな、という感覚だと思います。

だからと言ってはなんですが、ここだけの話、そんなに売れません。リンゴジュースじゃなくて、櫨ろうそくの話です。

大與では、櫨ろうそくもありますが、米ぬかで作っているろうそくもあります。

350円のリンゴジュースもあるけど、200円のオレンジジュースも作っているので、ますます売れません。(まあ200円でも、ほぉ…という感じ)
くどいですが、ろうそくの話です。

350円のリンゴジュースは飲んだことあるけど、350円のろうそく使ったことないわー、てゆうか、350円のリンゴジュース想像できるけど、350円のろうそく想像できひんわー、という人結構多いと思います。
でもごめん。200円のろうそくも想像できてへんねん。という方も大丈夫です。ここまでついてこれてますよ。

今日は350円のリンゴジュースをなぜ売っているのか、否なぜ作っているのか、というお話にしようと思います。

まず、なんで350円になっちゃうの?という話なのですが、原料が高いです。作るのにも少し技術が要ります。

原料が高いのは、希少だからです。櫨から蝋を絞っている業者さんが極端に少ない。その数2件。日本で2件だから、世界で2件です。

櫨蝋はいろいろなものに使われていますけれども、多くはろうそくです。
でも、櫨ろうそくを作っているところもめちゃくちゃ少ない。

それから、技術ですが、ちょっとしたコツがいるのと、生産数が少ないです。単純に、技術をもった人の時給を1時間でできる本数で割った分が乗ります。

そんなこんなで、350円になります。

ちょっと整理しておきます。

・なぜ櫨蝋が希少か
売れるものを作らないと食べられないから、ばかばか売れない櫨蝋を絞ってくれるところが少ない。
・なぜ櫨蝋が売れないか
多くはろうそくに使われているが、ろうそく屋自体も少なく、さらに櫨ろうそくを作るろうそく屋はもっと少ない。その上、技術職であり、生産数も少ないので、櫨ろうそくの価格が高くなる。そうすると、櫨ろうそくは売れにくく、原料仕入れが減り、結果的に櫨蝋が売れない

櫨蝋を残すためには、櫨蝋を絞ってくれるところが残ってくれないといけない。つまり、櫨蝋を絞ってくれているところが食べていけなければいけない。食べていけるためには、櫨蝋が売れなければいけない。

ろうそく屋は普通、作る分だけ(必要な分だけ)蝋を仕入れます。
だって、原料仕入れ額は、まあまあの金額だし、冒頭で申し上げたとおり、そんなに売れるものじゃないから、そんなに作らなくていいでしょ。

でも、それだと櫨蝋を絞ってくれているところ、食べていけないじゃないですか。

大與はどうしてるかというと、買い続けています。
いま必要なくても、買いまくってます。利益のほとんどは原料仕入れに回します。櫨蝋を絞ってくれている方が続けていけるためです。

で、やっと本題なのですが、なぜ利益を圧迫し、かつそんなに売れない櫨ろうそくを作り続けているか。

それは美しいからです。

ここまで引っ張っておいて、すごく稚拙な答えなのですが、これ以上にいいようがない。

まず灯りが美しい。生きているような揺らめきは心を奪われます。まじで。

そして、姿が美しい。極力蝋をこぼさないように設計された芯と蝋のバランスと油煙の少なさは櫨ろうそくだけの特長です。

工人にとって、美しいものを作りたくないという者はいないでしょう。

売れる売れないにはない、美しいという価値。
もとい、買ってくださいと言ってます。


だって、350円のリンゴジュースはおいしいよ。

また書きます。

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