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土地に根差すか、ヒトに根差すか

私のツイートから深堀りしたいと思ったものを改めてnoteで解説するのがこの『リョウキジ』。『リョウキジ』という名称は以前私が運営していたブログの名称を継承したものです。140文字では伝えきれないこと、正しく伝わらないこと、深掘りしたいなあと思ったこと、多々あります。そんな過去の私のツイートを材料に深掘りしていき、みなさまのお役に立てる内容にブラッシュアップしてお伝えできればと考えております。


土地に根差すか、ヒトに根差すか

事務所作りの話なのですが、どちらにするのかは非常に重要です。
もちろん「どちらかにしなければならない」という話ではなく、どちらも重要なので、どちらに比重を置くのがいいのか、と考えたほうがいいかもしれません。どちらに根差した事務所作りをしていくのか、想定して開業するのか、何となく開業するのかでは、後々方針転換などを考えたときに苦労してしまうかもしれません。

それでは「土地に根差す」と「ヒトに根差す」。
一体どういうことなのか考えてみましょう。

「土地に根差す」とは

こちらは非常にわかりやすいのではないでしょうか。
その土地に根差した事務所作り。いわゆるこれまでの士業事務所の一般的な姿です。法務局の近くにある司法書士事務所がその典型例。
法務局に行って自分ではわからないことがあれば、近くにある司法書士事務所に行けば何とかなるだろう。そういったニーズに応えることができるのが法務局の近くに事務所を置く強みです。
同じく、駅から近いところに事務所を置いて「〇〇駅前司法書士事務所」という名称にすれば、駅前にある事務所という認識がされるので、土地に根差した事務所作りといえると思います。地域一番の事務所を目指すのであれば、土地に根差した事務所作りは必須といえます。

「土地に根差す」メリット

その土地のひとに存在を認知してもらえれば、雪だるま式に仕事が増える可能性を秘めています。ウェブ集客もエリアを指定して広告費をかけられるので非常に効率的。チラシなど紙媒体の広告も効果的な方法になります。合う合わないもありますが、商工会議所、JC、ライオンズクラブやロータリークラブなど、地元密着のコミュニティに所属すれば一気に仕事の幅が拡がる可能性も高いです。私が千葉県浦安市で開業していたときは、地元密着のコミュニティに所属することで、地元の経営者や議員の方などとつながりを持つことができました。同業者がいない場合は入れ食い状態になることもあり、比較的順調に経営が安定していくかもしれません。

「土地に根差す」デメリット

ズバリ、移転をするとそれまで積み上げてきたものがゼロになる可能性があります。「土地に根差した」のですから当然といえば当然のこと。「〇〇(地名)の佐藤さんだから依頼していた」のですから「〇〇(地名)」から離れれば関係が切れてしまうことは容易に想像がつきます。開業地が地元でしたら、離れるということは考えにくいのですが、将来何が起こるかはわかりません。家族がいればなおのこと。天災事変が起こる可能性ももちろんありますから、離れる可能性もある程度は想定しておかないと、いざというときに非常に困ります。

また、ある程度全方位的に業務を受ける必要が出てきます。会社設立はやるけど、相続はやらない。古物の許可はやるけど、建設業はやらない。など依頼をしようとするお客さんには言えない場面が出てくることもあるでしょう。理由は「とりあえず〇〇(地名)の佐藤さんに相談してみよう」ということになりがちだからです。そこで「これはやるけど、それはやらない」ということが増えるとお客さんも「あいつは仕事を選んでる、けしからん。何を頼めるかわからんし、めんどうだからあいつに声をかけるのはやめよう」ということになりかねません。同じ土地で連携を組める同業や他士業がいれば良いのですが、そうでない場合は自分の事務所で取り組む必要が出てきます。

「ヒトに根差す」とは

その先生が仮にどこにいたとしても「〇〇先生だから依頼したい」という状態はまさに「ヒトに根差した」状態といえます。
「ヒトに根差した」事務所作りは一朝一夕ではできないことになります。
理由は、信用と専門性が紐づいているからです。
信用はコツコツと積み上げていく性質のもの。
お金で買うこともできず、ひたすら積み上げていくしかありません。
ウェブサイトにお金をかけて一見キレイに見えるものでも、見るひとが見れば中身がともなっているかどうかは見分けがつきます。
専門性も同様です。
この道何十年の経験は専門書で補うことは不可能でしょう。
私も開業して今年で12年になりますが、まだまだわからないことだらけ。「ヒトに根差した」事務所作りを目指してはいますが、まだ道半ばです。

「ヒトに根差す」メリット

「土地に根差す」デメリットと対極になりますが、事務所を移転しても(限度はある)売り上げには影響しにくい点があります。「ヒトに根差す」ためにはある程度「その先生でないといけない」という属人的な要素が必要になります。属人的になるということは、その先生が極端に遠方に行かないかぎりはその先生に仕事が来続けることになります。これは大きなメリットです。

また、属人的になるためには一般的なレベルを超えた専門知識や経験が必要になってきます。専門特化はブランディングや集客の面でメリットが大きいので非常に有益です。口コミや紹介が増えるのも大きな特徴です。

そして、専門特化することにより、出版やセミナー、講演などのオファーが舞い込むことになります。こうなってくると自動的に仕事が回るようになってくるので売上が安定してきます。採用もしやすくなるかもしれません。(私が採用したことないので、実際はわかりません)

「ヒトに根差す」デメリット

属人的ということは良くない表現をすれば「依存」ということになりかねません。「〇〇先生じゃないとお願いしません。どうしてもお願いします。」ということになりますから、ワーカホリック気味になるのも特徴です。
また、紹介でお仕事をいただいても断りにくいという特徴も。
当然、代わりがいませんから休むこともやめることもできません。
病気にも最大限注意する必要があります。
つまり、ある程度の覚悟が必要です。

また、信用に紐づいていると先ほど書きましたが、その信用を落とすことがあれば仕事が来なくなります。特定の人物に対する誹謗中傷や支払いの遅延、業務の事故などは常に注意しなければなりません。

専門性についても同様です。他にもっと専門性が高い事務所が出てきたときに乗り換えられる可能性は当然あります。専門性を謳い文句にするのであれば、常にその専門性をブラッシュアップし続ける必要があります。胡坐をかいていれば、いつかは足をすくわれることになります。

さいごに

「土地に根差す」のか「ヒトに根差す」のか。
どちらが正解ということはありません。
どちらが自分に向いているのかはよく考えてほしいと思います。

ただ、ひとつだけお伝えしたいことがあります。
土地でもない、ヒトでもないものに根差す方法があります。

それは「価格に根差す」方法です。

士業も価格で選ばれる対象であることは否定できません。
だからといって、仕事がほしいからと明らかに廉価な価格で受注することは自分の首を苦しめることになります。

「あの先生、めちゃくちゃ安いからいつも頼んでるんだよね」

まさに「価格に根差した」事務所ですが、はたして良いのでしょうか。
もっと安い大手事務所が現れたらどうなるか、火を見るよりも明らかです。

自分の事務所が価格で選ばれている実感がもしあるのであれば、今からでも土地かヒトに根差す事務所作りに方針を変えることをオススメします。


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