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[詩]風が吹いて
何でもゆっくりのさとこちゃん
自慢の長い髪で散歩するのも
人と話すのも座ったままで
ゆっくりゆっくり
坂にさしかかったとき
ふと
〈こんにちは、さとこちゃん〉
と、明るく呼ばれた
顎の軌跡を記録させるように
ゆっくり振り返ると
すうっと風が吹きこんできた
髪がふわりとふくらんで
また肩まで降りてくると
息をととのえてから大きく開く口
〈 こ・ん・に・ち・は 〉
と、遠い人に言った
二人は朗らかに笑ったまま
ピンクの歯茎をむき出して
互いの目を見ることもなく
向かい合っている
なめらかな二人は
交わらない半身から
すり抜け合うと、また
慣れた航路を進みはじめた
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