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微生物の恩恵

2020年1月掲載
文:葛原 正之さん(伊賀市・土の香工房)

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 みなさん、「宇宙戦争」という映画を観たことありますか? 15年ぐらい前のSF映画です。(ネタバレあり)

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(三重県伊賀市の山あいにある葛原さんの工房)

 簡単にあらすじを説明すると、高度な文明を持つ地球外生命体(侵略者)が地球侵略を企てて地球人と戦う話を描いています。

 さらに結論から言ってしまいますと…、侵略者は人類を滅ぼす事はできず、地球は侵略されずに終わります。


 なぜ侵略者に勝てたのか、侵略を防げたのか? それは、地球人の武器や策略ではなく、地球の自然環境が、侵略者に破滅をもたらしたからでした。
 地上で吸った空気、触れた雨や土に含まれる微生物や細菌に感染し、免疫の無い侵略者達は滅亡していったのです。

 

 地球上に最初に誕生した生命は微生物(バクテリア・藻類)です。地球の誕生は46憶年前、微生物は36億年前、人間はたったの300万年前と言われているそうです。そんな人間の体内には、100兆個を越える微生物が存在するといいます。

 昔の人間は、大先輩であり共存者である微生物のパワーを借りて、あらゆるものを作ってきました。 醤油・味噌・ビール・ワイン・日本酒・漬物・納豆・ヨーグルト・チーズなどいわゆる醗酵食品は人間にとって、なくてはならない物です。

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(白米、玄米、麦、豆、醤油用、ひしおなど、様々な麹を作っています。)

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(味噌の仕込みのために大豆を釜茹でているところ。)

 醗酵食品は、微生物が作り出す様々な成分によって食品が分解され、美味しくなったり、長く保存できるようになったりします。特に美味しさを感じる要因の一つはアミノ酸です。微生物の酵素により、食品の中でバランスよく作られます。

 しかし、近年ではその「アミノ酸」のみを生成して添加し、うま味を増幅させた様々な加工食品も作られています。いわゆる「アミノ酸調味料」により、醗酵の過程がなくても作れる、旨味の効いた〝醗酵食品モドキ〟がスーパーに並んでいます。


「アミノ酸調味料」は、植物由来、主にサトウキビを酵素分解させて作り出されます。一般には食品添加物として安全性が確認されており、「化学調味料」ではなく植物由来の“うま味調味料〟であると謳われています。

 今や多くの加工品にアミノ酸調味料は使用され、裏ラベルの原材料名に記載のない加工品を探すのが難しいぐらいです。

 正式名称は「グルタミン酸ナトリウム」=「MSG」と呼ばれるものです。 国内外で、毒性や有害性を指摘している人もおり、特に乳幼児や育ち盛りの子どもの脳神経・脳形成・成長ホルモン・生殖機能・甲状腺への悪影響も指摘されています。

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 また、多くの加工品は賞味期限を長くしたり、常温でも腐敗しにくいように塩分濃度を高くします。そのため、塩辛く感じてもおかしくないのですが、このМSGには、添加すると、塩辛さを感じさせにくくする作用があります。業界用語で「塩慣れ効果」と言うそうです。

 さらに、グルタミン酸ナトリウムは体内で「ナトリウム」が切り離されるので、通常の塩(塩化ナトリウム)に加え、グルタミン酸ナトリウムのナトリウムまで摂取することになります。アミノ酸調味料が多く添加されている加工品を食べた後は特に喉が渇くのも、この影響によるものです。

 このような、うま味を増して味覚を麻痺させる働きは、一見軽い功罪に見えてしまいますが、実は体に大きなダメージを与える大きな功罪なのです。

 昨今、このアミノ酸調味料(MSG)=うま味調味料を100%避けて生活するのはかなり難しいです。さらに依存性もあり、一度食べると病みつきになります。

 育ち盛りの子どもには少しでも摂取を控え、極力自然の力によって微生物がバランスよく作り出した、昔ながらの美味しい食品を食べる機会が増えることを願っています。

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