響け!ユーフォニアム3 12話感想

最後のオーディション回でした。
ネタバレが当然あります。









いやー、すごい回でしたね。
アニオリですね。
少し原作の話をします。
原作だと普通に久美子が最後のソリストなんですよね。公開オーディションもなく。
そして黒江真由もほんとうに久美子の意見、実力主義の北宇治に納得してるんかなってところもちゃっとあるけど、でも原作は原作ですごくいいと思うんですよ。
この結果を変えるって相当勇気いることだと思うんですけど、でも納得感のある変え方をしていたし、これまでの話も踏まえていましたからね。

このままだと感想がまとまらないので順を追って感想を書いていきます。

開幕。
OPカット。
いきなりオーディション。
え、今回の話これがメインじゃないの、あと20分くらい何すんのと思いながら見てました。

メンバー発表。
奏ちゃんは落選でした。やはり低音は音量重視なのでしょうか。
ソロパートは予想通りのメンバー。

ユーフォニアム、黄前久美子。

やったか!?!?
返事をしかける久美子。

そして、黒江真由。
この2人は全部員での再オーディションとなりました。

ここ美知恵先生も久美子をぬか喜びさせないでほしいですよね。
なお、ユーフォニアムは後日再オーディションとする、みたいな感じで先に言えばいいのに。

ここで真由は辞退しませんでした。ここで久美子はあることを確信しているようです。

職員室。
何かありましたか、と迎える滝先生。

いや何かありましたかじゃないだろ。何かしたやろ。

甲乙付け難かったらと理由をつける滝先生ですが、それなら幕を張ってどちらが吹いているかわからないしてほしいと久美子は提案します。
ここで滝先生が涙声になります。どしたん。

ここどしたんと思ったんですが、その後の展開を見るとなるほどとなりますね。

まず久美子は2年前のように「公平な」オーディションで結果をつけたいと、滝先生も思ったからそう申し出たのだと思っているようですが、滝先生はそうではなさそうでした。
むしろ実力では甲乙付け難く、自分が選んでしまうと3年間の思い入れもある久美子を選んでしまうと滝先生は思ったのでしょう。
その上で、部員に決めさせるという案で決めたのだとは思いますが、それはあくまで2年前と同様に顔を出して演奏させてのものを想定したのだと思います。
顔を出して同等の演奏をもししたならば、久美子部長を部員が選んでくれるから、それでみんなが決めたと納得する、納得せざるを得ない空気を作りたかったのだと私は思いました。
2年前のソロオーディションは、高坂麗奈が中世古香織より圧倒的に上手いので選ばれることはわかっており、だからこそどうやって部員に納得してもらうか、納得してもらう空気を作り出すかということで考えられた方式だったように思います。
あるいは、最初のミーティングで毎年目標を決定させるのも、あの雰囲気の中では全国大会出場(金賞)しか手をあげにくい雰囲気を作れるからで、それを部員に決めさせることで一種のアリバイ作りをしたいというところがあるのだと思います。
黄前久美子がかつて斎藤葵へ告げた言葉を借りるなら「大人ってずるいよ」。滝先生はある種のずるをしようとしたわけです。
でも久美子自身はそれを望んでいない、そんな直向きな言葉を聞いて、まなざしを見て滝先生は感動したのだと思います。

ただ、滝先生もある種すごい実直なところがあると思います。自分はどうしても久美子に肩入れして選んでしまうからわざわざソロオーディションをしようと提案なんてしなければいいわけですから。それで部員も納得すると思いますし。実力はほぼ互角ですからね。
それでもソロオーディションを提案したのは、滝先生がすべての生徒、黒江真由も含めての吹奏楽部のすべての生徒のことを真剣に考えているからだと思います。久美子の勝率が高そうでも、黒江真由が飛び抜けた演奏をしたり、久美子の調子が悪かったら真由が選ばれる可能性もあるわけですからね。
ここは1人の教師としての真面目さが伝わるシーンだった思います。そりゃ麗奈も惚れるわ。

宇治駅。
麗奈はソロで久美子が負けたら嫌だと言います。
ここは滝先生が決めたから、とはならない素直な気持ちでしょうね。
久美子のほっぺたをむにゅっとして「頑張って」と激励する姿は、2年前のオーディションを思い出しますね。

自宅。
父が久美子に何か話しているようですが何の話をしているのかはわかりませんでした。
自室に戻った久美子。
進路調査表には麻美子が付箋を貼っており、そこにはこのようなメッセージが。

何書いても味方してあげる!
がんばれ妹>ω<
まみこ

マジでいい姉貴やな。

翌日。
進路調査票を提出した久美子に、美知恵先生は予想通りすぎてつまらん、と言います。
予想通りなんや。
滝先生もな、と美知恵はいいます。
バレバレの久美子。
大人ってすごいですね、と呟く久美子。
たぶんこれも意図せず声に出てる気がします。
それに対し、美知恵は返します。

心配するな。大人になったらすぐに思うようになる。子供ってすごいとな。

かっけえ。
子供の成長は予想外なんでしょうね。3年間見届けていくわけですからそりゃコンクールのたび毎回泣きますわ。
ですし、先ほどの久美子のソロオーディションは誰が吹いているか分からないようにしようという提案に滝先生が驚いて涙を流した理由にもなっていると思います。
自分が思っているよりも生徒たちはずっと考えているし、それに強いと。

結局進路は明かされませんでしたけどね。
どうなるんやろなあ。

オーディション会場。
真由は麗奈に軽く声をかけましたが、久美子はかけませんでした。
これは贔屓なしで、という無言の合図にも思えます。
実際、合わせるトランペットがほんの少しでも下手に吹いたり合わせにくいように吹くとかもこのくらいの実力ならできそうですよね。
そんなことしないでね。もちろんそんなことしないわよ。そんな無言のメッセージに思えました。

奏は久美子にエールを送ります。
ちゃんと聞いてほしい。それでいいと思った方に入れてほしい。久美子は伝えます。
オーディションって残酷ですね、本当に。
自分の表で誰かを深く傷つけてしまうかもしれない。もっとも敬愛している先輩にとどめを刺す1票を自分が入れてしまうかもしれない。
そんな状況で手を挙げる、それはすごく勇気のあることです。

待機する久美子と真由。
まさかのトランプ、という久美子のセリフちょっとニヤけてる感じが出ててとてもリアル。
部のピリピリとは少し違う、2人だけが共有する空間がここにはあります。
それはオーディションで共に競うライバルでありながら、この緊張感を経験するたった1人の理解者だからこそ生まれる不思議な空間です。

これが最後、といって真由が投げかける言葉は、いつもと違う言葉でした。

ソリ、高坂さんと吹きたいよね。

辞退しようか、ではありませんでした。

久美子は真由に謝りたいことがあると言います。
真由の気持ちを見ないふりして、実力主義と押し付けてしまったと。

たったひとり。北宇治吹奏楽部でたったひとりでも落伍者を出したくないと語った黄前久美子だからこその真摯な謝罪だと思います。

オーディションで嫌なことあったんじゃない?と久美子は問いかけます。
その頃の自分、もっと根っこの部分で似ていると思っていたと久美子は打ち明けます。
真由も同じこと考えてたようです。
そこで描かれるシーンは、本音を隠す人のこと好きになる人なんているのかな、のシーンですね。
真由が久美子を嫌いになった、というより何がなんでもその上っ面を引き剥がしてやるという執着心を持った瞬間だと思います。そしてそれはずっと持っていた自己嫌悪の感覚ともシンクロしています。

黄前相談所の最終幕。それはセルフカウンセリングです。

やっぱり似たもの同士なのかな、そうやって2人は笑います。心からの本心であるように思います。
でもね、やっぱり違うよ。真由は続けます。

高坂麗奈。

彼女の存在を知って久美子は変わりました。
その熱が久美子を突き動かしています。特別な存在です。
ですし、これはストーリー全般を見て思うことですが、もし高坂麗奈がいなかったら、黄前久美子は黒江真由のあがた祭りの誘いを受けただろうし、もっと仲良くなれたんじゃないかと。
でも一方で、そんな中学のままの久美子には、黒江真由は似たもの同士という親近感は抱いても、執着のような形で、ある種の敵意のようなものを向けることはなかったのでしょう。

黒江真由は、自分のせいで友達が音楽を辞めてしまったと打ち明けます。
だから、楽しく吹ければいい。ある意味本心ではあると思います。

でも久美子は言います。
コンクールメンバーでなくてもみんなと楽しく吹ければいい。
でも、わざと下手には吹けない。

性格悪いなあ。黄前久美子はほんとに性格悪い。
もちろん、むしろ褒めてます。

真由が真由でいられる、1番の瞬間は演奏している時なのでしょう。そこには嘘をついていたくない。
己が信じるもののために、全力でぶつかり合う。
黄前久美子と黒江真由が初めて分かり合えた瞬間でしょう。

ソロオーディション。

1番。
トランペットを吹いて始まる高坂麗奈のカット、まんま2年前を思い出します。
目を閉じる部員の中、目を開く久石奏。
どこまでもまっすぐにトランペットを演奏する麗奈。
この麗奈を見て、麗奈は誰が吹いているか分かってるんだろうなと思いました。

2番。
今この文章は2周目を見ながら書いているのですが、この時の高坂麗奈の表情を見ると泣けてきます。

正直、どっちがいいとか、どっちが久美子かとかわからん。
初見でそう思いました。まあでも後から聞く方がよく聞こえるから2番かなあと思って見てました。

投票。
2年前の北宇治では、覚悟が決まっている吉川優子と黄前久美子、部長の小笠原晴香、それになんだかよくわからんけど感動したから上げた加藤葉月の4名しか上げませんでした。
また結果が決まらなかったら、と思いながら見てましたが、1人、また1人と手が上がります。
加藤葉月と釜谷すずめも上げました。
緑と秀一は上げません。

2番。
緑と秀一が手を挙げます。
これを見て、あ、2番が久美子なのかなと思いました。
美玲が横目で見て、久石奏も手を挙げます。どこか2年前の吉川優子の姿と重なります。

上がる手の数を数える弥生。弥生で大丈夫か。
結果はなんと同数でした。いい勝負すぎる。

高坂麗奈がまだ残っていました。
決まりましたか、と笑顔で尋ねる粘着イケメン悪魔。
でも高坂麗奈のことも信頼しているから、高坂麗奈の判断に間違いはないだろうと思っているんでしょうけどね。
ここにきて自身の判断を絶対的なものとして尊重されることの恐ろしさを高坂麗奈が初めて感じるという演出、やばすぎるだろ。
下を向く高坂麗奈。動揺、緊張。自分の決断で全てが決まる、決まってしまう。
高坂麗奈はこの時初めてその感覚を体感したのかもしれません。この切羽詰まった表情泣ける。

麗奈の頭によぎったのは2年前のオーディション直前。
麗奈は裏切らない?と久美子に問いかけました。久美子はもしも裏切ったら殺してもいいと答えました。
自分が久美子を裏切ることになるのか。それでも…。
高坂麗奈は涙を堪えて決意をします。

1番です。高坂麗奈が告げました。
わかりました、と答える滝先生な表情はメガネのフレームで見えません。
何を思うのでしょうか。

1番の人は前へ。
なかなか歩き出しません。心臓止まるかと思った。

ようやく前へ進んだのは黒でした。
麗奈の苦しそうな顔。胸が痛くなります。

というか、うわ、マジかと思いました。
原作では久美子がソロでしたからね。このアニオリ展開になった以上真由の可能性もあると思いつつも、それでも久美子でのハッピーエンドかなあ、と思っていましたから完全に度肝を抜かれました。

立ち上がって涙を流す久石奏。

部員を見渡して、久美子は滝先生との職員室での会話を思い出します。
先生にとって理想の人ってどういう人ですか。
いやどんな質問しとんねん。
滝先生は答えます。
正しい人でしょうか。本当の意味での正しさは、皆に平等ですから。
久美子は決心します。

これが北宇治のベストメンバーです。絶対に全国大会金賞をとりましょう。
力強い宣言でした。
それを聞いて涙を流す黒江真由。

黄前久美子という人物は、自分が思っていたよりももっとずっと尊敬できる人物だったと感じたんじゃないでしょうか。
誰よりも麗奈とソロを吹きたい、改めてそれが本心であることを確認していたのに、みんなの前で宣言するわけです。
宣言自体は関西大会前と同じで、その時真由は曇った顔をしていました。
本当にソロを吹くラストチャンスが奪われたその瞬間に、胸を張ってそう宣言してくれた。どこまでも実力主義を尊重しているし、どこまでも博愛主義を尊重している、たったひとりの異端な自分すら見捨てない黄前久美子の実直さ、頑固さ、わがまま、正しさ。
黒江真由にとって黄前久美子は同類でもあったし、他者でもありましたが、最終的には憧れになったんじゃないでしょうか。これがアニメ版の解釈だと思います。
いやー、すごいですね(語彙力)。
たしかに原作だと黒江真由は異質な宇宙人なんだよな、みたいな感じで終わるんですよね。友達が音楽辞めちゃったという真由を深掘りした話もアニオリですし。
でもそうじゃないでしょ、という気概を持ってわざわざこの結末を持ってきた花田十輝さん、そして京アニを尊敬しますね。

久石奏が久美子を呼び止めます。
先輩に吹いてほしかった。最後に久美子先輩と吹きたかった。
思う存分のわがままを久美子にぶつけます。久美子は優しくそれを抱き止めます。
ここも2年前、田中あすかを突き動かした黄前久美子を思い出しますね。そりゃ心動くわ。
久石奏はもっと強くなれそうですね。来年の北宇治も楽しみです。

大吉山。高坂麗奈はいつもここにいます。
高坂麗奈は号泣します。

私がわからないわけないでしょ、久美子の音を。

これはずるいよ。泣いちゃうよこんなん。
初見だと泣いててあんまり久美子のセリフ聞いてなかったんですが、この後の久美子のセリフいいですね。

私も吹き終えてどこかで分かってた。音大じゃないって思い始めた時からの迷い。それがわずかでも音に出た。麗奈はきっと聴き分けるって。そして、1番を選ぶ。
だって、麗奈は特別だから。
きっと負けない。麗奈は最後まで貫いたんだよ。
私はそれが何より嬉しい。それを誇らしいと思う自分に胸を張りたい。
でも、そんな麗奈だからこそ、実力で勝ちたかった。
それで、最後は麗奈と吹きたかった。

そして久美子は叫ぶのです。
死ぬほど悔しい!!!

麗奈と肩を並べられるようになりたい。
そんな悔しさを決意を感じながら、麗奈と手を繋ぎます。



ここで終わりです。
いやー、なんですかこれ。アニオリやん。
こんな大胆なアニオリで、しかもこんなに説得力があるというか、うわあって感動することないですよ。

今回はみんなのわがままが爆発する回でした。
滝先生は自分の独断で決めたくないから部員に委ねるし、葉月とつばめは実力主義を信じるし、緑と秀一は久美子に吹いてもらいたいからそちらに手を挙げるし。
この2人は実力もありますし久美子の音をずっと聴いてきたわけですから麗奈と同じようにわかってたと思うんですよね、2番が久美子だと。
わかってて、それに手を挙げることが自分の正しさだった知っていて手を挙げていたと思います。

一方迷いながら手を挙げたのが久石奏でした。
実力主義を信じていながら、でも最後のコンクールに大好きな先輩にソロを吹いてほしい。
吉川優子と同じく、この気持ちは両立するわけです。
それでも自分のわがままを貫き通しました。自分の気持ちを押し出しました。それを久美子にぶつけました。
あの久石奏の姿を見て泣きましたね。そしてまた少し久石奏をすきになりました。

そして滝先生、黒江真由、高坂麗奈についても書きたいと思います。

最初に滝先生。なんてことしてくれたんじゃ。
滝先生がオーディションの結果を基本美知恵先生に伝えてもらってたのは、やっぱり自分の判断の結果、悲しませる部員が出てしまうことに直面できないからだと思います。これは滝先生の弱さといえば弱さです。
しかし、これは生徒のことを真摯に考えていればこそです。

誰よりも早く職員室に来て、理想の演奏を追い求め、誰よりも遅く帰る。しかも教師という立場ですから、特定の生徒に思い入れを持ってもいけないわけですし、でも人間ですから共感することもあるでしょうしそこの線引きはすごい難しいところだと思います。
そんな中で1年の時から見てきて真面目に頑張っている黄前久美子の姿を見て、最後のソリストに選んであげたい、そんな感覚はそりゃ沸くでしょう。人間だもの。

黄前久美子と黒江真由。

滝先生は自身で決定をしませんでした。
それは責任逃れであるという言い方もできますし、久美子が1年生の頃からしてきたように空気の作り方を知っているからだとも言えます。弱さでもあるしずるさでもあります。
でも、生徒を信頼するということをこの3年を通して学んだのだとも思います。
この世代の生徒の言うことは、曲選びでもそうですし、オーディションを3回にすることを含めて聞いてきましたからね。
なによりアンコン編では北宇治の代表チームを部員(+一般)の投票で決めさせていました。
これは生徒たちは時に自分でも想像できなかった、よりよい判断を下すことがあるとこの3年間を通して感じたからではないでしょうか。
中瀬古香織のまっすぐな姿勢、小笠原晴香の部長としての成長。吉川優子のリーダーシップに中川夏紀の正しさ。
この日々があって久美子の代があるのだと思います。
そして久美子の、誰が吹いているかわからないようにしてほしいという提案、これは3年生だから選ばれるということがないようにしてほしいという中世古香織の“自決”や、中川夏紀が久石奏を引きずり出した強硬手段を思い起こさせます。
生徒の成長をこの時感じたんでしょうね。涙ぐむのも無理はありません。美知恵もいっつも泣いてますし。

そして今回、滝先生から久美子だけでなく高坂麗奈への信頼も見て取れました。
オーディションの決断のシーン。
滝先生は2番が黄前久美子だと知っていたでしょうし、高坂麗奈は久美子の演奏がわかるということを知った上で、高坂麗奈に決めさせています。
自分で決めるということが、これほど苦痛を伴うことなのだ。
高坂麗奈はひょっとすると初めて気付いたかもしれません。
絞首台にも似た舞台で中瀬古香織が発言したその力強さを。滝先生が何気ない顔で下してきたオーディションやその他諸々の決定を。その残酷さを。

それでも滝先生は高坂麗奈を信じているからこそ、成長していることを期待しているからこそ高坂麗奈に委ねました。

人を信じること。そして音を信じること。

これまでの展開で、久美子は成長しても麗奈は成長してないんじゃないか、みたいな見方も正直してました。でもこれで麗奈は変わったと思いますし、ますます変わらないでいることの決心も同時にしたのだと思います。

次に黒江真由。

久美子のことを似たもの同士だと思ってきました。人と仲良くするのは得意に見えて、でもどこか冷めている。本当に人に執着することはないし、そんな冷めた自分を少し自己嫌悪している。
しかし真由は、久美子は違うと感じました。
それは高坂麗奈との出会いがあったからです。
高坂麗奈のどこまでもまっすぐで、時に人を傷つけてしまうような脆さもありながら、それでもそんな熱に侵されてしまっています。

そんな久美子をそれでいいと思うと真由は感じています。
真由は久美子と仲良くなりたかったでしょうし、だからあがた祭りに誘ったのでしょうけれども、久美子はそれを断りました。
誘ったタイミングで麗奈と約束していたわけではありませんでしたが、それでも結局麗奈と過ごすことになりました。
黄前久美子は高坂麗奈と親友以上のなにか、特別としかいいようのない何かです。
高坂麗奈がいなければあがた祭りにも久美子と一緒に行けたかもしれないし、もっと仲良くできたかもしれない。
でも、高坂麗奈と出会う前の、あるいは出会わなかった久美子には、真由はここまで心揺さぶられることはなかったのでしょう。なんともめんどくさいですね、真由も。

端的に言うなら、そんなふうに変わった久美子に真由は嫉妬していたのだと思います。
そして久美子は間違っている、人を傷つけてまで実力主義を押し倒すことは間違っている、もっと誰も傷つけずに仲良くやりたいし、久美子ちゃんもそうすればいいのに。
真由は自分が間違っていないのだと自分に言い聞かせ続けていたと思います。そしてだから久美子にソロを譲ろうとした。それは秘密裏に行うのではなく、久美子に納得してもらう形で、久美子自身の口から平和主義への移行を宣言してほしかった。

こうしてみるとだいぶ頑固ですよね。
そしてそれを固辞し続ける久美子も。やはり似たもの同士だと思います。

しかし真由は、オーディションで負けてもなお実力主義を信じて、みんなの前でこれがベストメンバーだと、全国金を取りたいと宣言した久美子の姿を見て泣き出します。
真由は久美子を傷つけたと思っていたが、久美子は真由を庇ってくれた。これがベストメンバーだと部長が言うことの説得力は大きいと思います。
ですし、部長としての建前だけで今まで言っていたとしたら、この瞬間久美子は何も言えなかったと思います。悔しくって死にそう。その感情しかなく言葉にできなくなっていたと思いますが、この場所ではっきりと改めてこの結果がベストメンバーだと打ち出したことは、黄前久美子が本心でそう言っていたのだということを示していると思います。

そんな久美子の姿を見て真由は泣きました。
心の底から久美子のような人間になりたいと思ったのでしょう。久美子は嫉妬から憧れの対象になったのだと思います。
久美子は試合に負けて勝負に勝った。
こんな結末美しすぎます。

最後に高坂麗奈。
正直高坂は怖いし、自分とも考え方合わないことも多いから苦手なタイプのキャラだったんですけど、今回は1番かわいそうでしたね。
自分の1票で決まると悟った時の俯いた高坂麗奈の表情。怯えていました。

2年前、もし裏切ったら殺してもいいと久美子は言いました。あの時の高坂麗奈は、選ばれる立場で、本当に追い込まれていて、だからこそこの久美子の言葉にほっとしたし、実際に久美子が拍手してくれた時は安堵の表情を浮かべていました。
その気持ちを痛いほど理解できる高坂麗奈が、久美子に引導を渡したのです。なんてことを高坂麗奈にやらせとるんや花田。

その後の大吉山で、高坂麗奈は黄前久美子に懺悔します。自分が久美子の演奏が2番だと気づいて票を入れたこと。
これ2番というのがそのままの意味で2番だったんですね。
久美子はそんな麗奈を判断を間違いだとはつゆほど思っていませんでした。むしろ誇りに思うと。
そんな実力主義を心から信じている高坂麗奈に、選ばれなかったからこそ死ぬほど悔しい。
オーディションにも滝先生にも不満を持つことなくひたすらがむしゃらにやっていた2年前の黄前久美子が感じた感情です。
そしてその時、麗奈に肩を並べたと久美子は思っていました。
でもそれは間違っていた。麗奈には並ぶことができなかった。実力で負けてソリでの演奏を逃してしまった。
悔しさをあらわにする久美子を麗奈は何も言わず受け止めます。

大吉山のシーンは原作にもあったのですが、久美子がソリに決まってよかったね、みたいな雰囲気だったと思うんですよね(うろ覚え)。
大吉山は残して、結果は真逆にする。それでも2人の結束はより深まる方向に持って行ったのが見事だと思います。
ですし、2年前高坂麗奈がくれた特別の言葉。あれは滝先生に向けたものではなく、紛れもなく久美子に向けたものでした。
その言葉が久美子の中で響いたからこそ、2年越しに麗奈に届いている。そんなふうに思います。

くみれいよ永遠に。

すごいものを見てしまったという感覚で感想がまとまらないので、最後に今日聞けなかったOPのサビで締めたいと思います。

響け!今日というフレーズ
生きることに夢中になれた日々が
今を生きている私へと繋がっている
365日の軌跡で受け継がれる想い
次のあなたへと向けた
終わらない夢を
鳴り止まぬ歌を

そしてまた、次の曲が始まるのです。

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