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同士

今年の3月に就活を控えた私は、様々な企業の説明会やインターンシップに参加しており、直前の2月ともなるとその頻度も増えてきました。昨日もインターンシップに参加するべく、もはや最近の相棒になりつつあるスーツを着て家を出ました。

気怠い気持ちを抱えながらバス停に向かう途中、道路を挟んだ向こう側の歩道に、ひとりの女性が歩いているのを見つけました。セミロングの黒髪を低めの位置でひとつにまとめ、リクルートスーツとベージュのコートを着て、黒いパンプスをコツコツと鳴らしながら歩いていました。
「この人も就活生かな」とぼんやり彼女の姿を見つめながら、私は出勤するサラリーマンや学生でいっぱいのバスに乗り込みました。

インターンシップを終えたあと、寄り道はせずに電車で最寄り駅に着いたらすぐバスに乗車しました。一日中気を張っていたうえに堅苦しいスーツを身に着けていたので、会場を出て仲良くなった就活生と別れ、一人になった瞬間どっと疲労を感じ、一刻も早く家に帰りたかったのです。バスの中での記憶があまり無いので、もしかしたら軽く夢の中にいたのかもしれません。

バスが最寄りのバス停に近づき、そろそろ降りる準備をしようとふと窓の外を見たとき、見覚えのある姿を目にしました。

今朝、バス停に向かう途中で見かけた女性です。あの時とは逆方向を歩いていたので、きっと彼女も帰路についているのでしょう。少し疲れたような雰囲気を纏い、しかし足取りは早く、彼女も早く帰りたいのかもしれません。

企業説明会か、インターンシップか、はたまた選考面接か………
そもそも彼女が就活生かどうかも分かりませんが

「お疲れ様」
と、心の中で彼女の労をねぎらいました。

就活は、「自分ひとりの戦いだ」とよく言われることもあり、孤独で厳しい競争の世界だと思っていました。確かにそのとおりですが、実際に経験してみると、出会った就活生と情報交換したり、連絡を取り合って友達になったり、お互いを応援し合ったりするうちに、就活生同士の絆は深まっていく一方です。
競争しながらも、協力し合い、支え合う、優しく心強い世界でもあると感じました。

選考が本格的に始まったら、きっと街中にリクルートスーツを着た就活生が今まで以上に溢れているのでしょう。
頑張る彼らを見る度に、私はきっと心の中でこう思います。

「お疲れ様。一緒に頑張ろうね。」

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